SCP-1372 – 真西 内容整理と考察~西端から来たるモノ~

SCP紹介&内容整理
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海に関するホラー系SCP、SCP-1372 – 真西を紹介します。財団が軍事施設を装って収容しているという規模の大きなこのSCP作品には世界史で有名な出来事が関わってきます。

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SCP-1372とは

SCP-1372は西経██°██’██”、南緯██°██’██”から██°██’██”までの場所に位置する測地線。オブジェクトクラスはKeter。

測地線とは、空間内または曲面上の2点を最短距離で結んだ曲線のことで、西経██°██’██”の地点にある南緯██°██’██”から██°██’██”までを結んだ線分がSCP-1372と指定されている。

収容については特別収容プロトコルとして以下のことが定められている。

武装収容サイト-70を長期の軍事演習を目的としたUSPACOM(アメリカ太平洋軍 – Wikipedia)軍事施設を装って███████島に設立し、4隻のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 – Wikipedia(DDG)をASC-70に配備し、常に2隻以上をゾーン-1372-アルファ(下記参照)にて巡視させる。

SCP-1372の性質上、異常を収容施設に移動させることが不可能であるため、異常と一般人との接触を最小限にすることに焦点が当てられている。

異常から東に100km、南北に100kmの範囲を確保し、これをゾーン-1372-アルファとし、同じ範囲の距離5km、1km圏内をそれぞれゾーン-1372-ブラボーゾーン-1372-チャーリーとしている。衛星監視によりゾーン-1372-アルファ全体は常に監視される。

ゾーン-1372-アルファの境界線に船舶の接近が確認された場合、ACS-70職員が無線により連絡を取ることになっており、オペレーターは士官を名乗り、相手船舶に軍事演習を行っているため、直ちにゾーン-1372-アルファから進路を変更するか脱出するよう勧告することとなっている。

相手が進路の変更を拒否、または無線連絡不能の場合、最も近いDDGの船員は船舶の進路を妨害し、塞ぐこととなっている。ゾーン-1372-アルファに侵入した船員は確保し、クラスC記憶処置を施し、最も近い島へ空輸される。

SCP-1372の異常性質は、SCP-1372を西から東へと航行している船舶に弊害は無いが、性質実験によりD-クラスは6時間に及び強制的に西を向き、反転して戻りたいという強い衝動に駆られたと報告している。実験後の測定で船舶がゾーン-1372-アルファ境界線を出る前に反転しSCP-1372を横切ると、前述の継続的精神効果は観察されませんでした。

SCP-1372を西から東へと通過すると、船舶の人員は反転して戻ろうとする強い衝動に駆られるが、アルファ境界線の内側で反転しSCP-1372を横切る時は特に影響は見られない模様です。

船舶が東から西へと航行しSCP-1372に接近すると、船で最も東にいる船員は地平線の果てを観察する。より接近すると、地平線の果てが船員の言う地球の”端”に見えるようになる。この効果はゾーン-1372-アルファ内ではどこからでも見られる。この段階では”端”の認識とより接近して見ようとする軽度の好奇心以外に精神的効果は見られない。

更に接近すると”端”に対する認識が増加し、ゾーン-1372-ブラボー圏内では被験者は危険に気付いたり伝えられても進行を続けたいという軽度の衝動に駆られ、進路変更に対して抵抗する。この効果はゾーン-1372-チャーリー圏内でさらに顕著になり、離脱して被験者に対しあらゆる治療を試みても、被験者は船を建造または入手してSCP-1372へと向かおうとする。未解明だが、少数の被験者はこの効果に対して免疫がある。

SCP-1372を横切る船舶はすべて視界から消える。船舶が完全に横切るとGPSは突然切れる。船首がSCP-1372を横切ると即座に、船舶が下るように下へと傾くと監視官は報告する;しかし、遠隔監視では同様の効果は現れない。SCP-1372を横切ったあとに職員を回収できたことはなく、遠隔探針は正常に機能しない。SCP-1372域を船舶で横切った時の性質はまだ完全に解明されていない。現在判明していることはすべてSCP-1372-1に関する分析、目撃報告による推論となっている。

時折、SCP-1372から帆船が浮上し、これらはすべてSCP-1372-1と指定される。帆船の帆はボロボロか無くなっていて、エンジンは実用できないほどに腐食している。少なくても5つの事例では船舶の舵は故障しており、SCP-1372-1の1隻では喫水線の下に大きな穴が発見された。どのようにして帆船が航行しているのかは現在のところ不明。今日までに50隻を超えるSCP-1372-1が財団によって観測され、内██隻は行方不明と報じられた、または以前SCP-1372を横切ったことのある船舶と一致している。SCP-1372-1に乗り込むとその全てで[削除済]が収容されているのが発見される。事案1372-1後、SCP-1372-1船内にいる存在との通信の試みは許されていない。

SCP-1372-1うち何隻かは以前SCP-1372を横切ったことのある船舶のようですが、SCP-1372とは直接関係がないものも含まれているようです。

SCP-1372-1に関しては、特別収容プロトコルで、全てのSCP-1372-1はACS-70職員により即座に廃棄されることになっている。どのような状況でもSCP-1372-1がゾーン-1372-ブラボーから出ることは許されていない。船舶の場合はゾーン-1372-チャーリーの境界線を超えさせてはいけない。船員がSCP-1372の影響を受けている船舶は遠距離より爆撃し沈没させる。更に、事案-1372-5以降、財団職員制御下を含む航空機をゾーン-1372-チャーリーに接近させることは禁じられている。

爆撃も辞さないあたり、かなり危険なオブジェクトのようですね。

付記として、事案1372-3後、船舶のみならず測地線を横切る航空機に対してもSCP-1372の影響が及ぶことが現在判明している。従って収容手順は修正され、SCP-1372上での飛行機による実験は許されなくなる可能性がある。高い速度と機動性を考慮すると、飛行可能なSCP-1372-1が生成されることは非常に好ましくない。

航空機に関しては、特別収容プロトコルで以下のことが定められている。財団職員はSCP-1372の200km圏内の航空機、空港との連絡を維持し、航空管制官にUSPACOM軍事基地近辺であること、頻繁に軍事演習を行っているために民間航空機に危険を与える可能性があることを勧告する。200km境界線に侵入した航空機に対しては即座に通信し、安全のために進路を変更するよう警告し、警告を無視し、ゾーン-1372-アルファに侵入した航空機に対してはSH-60ヘリコプターで妨害し、船舶の場合と同様に島へと着陸させる。

航空機に対しても効果が及ぶようです。

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文書-1372-1

本文に続き、文書-1372-1を読むことができる。

以下は[編集済]号の乗組員であるF████████ R████████の航海日誌の抜粋、スペイン語から翻訳されている。

12-04-████
今日はやたら変な感覚を感じる。海はこれまでにないくらいに穏やかだ、だけど…進むべき航路に進んでいないような感じだ。備えはまだある、何も傷んでない、しかし、東ではなく、西へと航路を進めなければいけないという考えが振り払えない。思い当たる理由はない、貿易路も見つけていない、だからまだ誰かに相談しないでおこう。

西から東に船を進めているようですが、西に戻りたいという衝動を感じているようです。

13-04-████
違和感を覚えているのは俺だけじゃないようだ。船長も俺と同じ感覚だと打ち明けたので、聞きまわってみるとかなりの数の船員が同じ感覚に陥っている。S██████が言うにはこれは前兆で、俺達は地球の端へと近づいているんだそうだ、だが船長は船を走らせ続けろと言う。

付記: 日誌から推測するに████年4月12日に[編集済]号とその乗組員はSCP-1372を横切ったものと思われます。

西から東なので問題なく通過できたのでしょう。

19-04-████
俺達は小さな島へと接岸した。島には人が住んでいて、ありがたいことにとても友好的だ。その上、とてもすごい製図者達だ。ここより東500リーグまでを記した地図があるのだが、不思議な事にその地図には西側には何も記されていない。この島の宗教的なタブーに違いない;おそらくは、彼らはこの島を神に最も近い土地だと考えているのだろう。俺達はここに来るまでに多くの奇妙なことを目撃したしね。なんにせよ、島民たちは親しみやすく、俺達の目的地へと続く地図を持っている、それになんといっても多くの必需品がここにはある。
…それなのになんでまだ西へと戻らなければならないと感じているんだ?

西に戻りたいという衝動は変わらず感じているようです。

22-04-████
今日、船長は反転を命じた。曰く、食料が駄目になっているかもしれないそうだ。確かめるために下へ行ったが、すでに殆どが投げ捨てられていた。別に心配することはない、皆以前は反転したいと思っていたのだから。

23-04-████
今日の地平線はなにかおかしい。ほとんど止まっているように見える。まだ西へと航行中。

25-04-████
以前の島へと接岸している。酋長は俺達を待っていたかのようだ。船は今夜出航する。幸いなことに西風は俺達に味方している。

27-04-████
…もし誰かこれを見つけたなら、ここより西には航行するな。結局、俺達が馬鹿にしていたことは全て正しかった。世界は平らだ、俺はその端を見た。船長は船員のほとんどと共に航海を続けた。俺と他に3人の船員は制止をするのを諦め、船のロングボートを盗み、残った船員の”臆病者”という叫び声を聞きながらできるだけ速くボートを漕いだ。船は舵を切ることはなく、船長の旗艦は世界の端へと落ちていった…神よ、彼らの魂に安らぎを。

日誌の書き手はSCP-1372に到達する前に3人の船員と共に逃げ出しています。逃亡した彼らには、SCP-1372の説明にあった、SCP-1372へと向かおうとする衝動に対する免疫あったようです。

30-04-████
漕ぎ続けて、なんとか俺達は島へと戻ることができた。残った船で次はどうすべきか決めるまで酋長は俺達の世話をしてくれた。

02-05-████
驚くことに今日、旗艦が戻ってきた。船長と船員は船にいる;ここからあいつらが見える、俺達は会うために航海中だ。あいつら世界の端を越えて航海したのに戻ってきやがった…俺達[編集済]の国民にとってなんて素晴らしい日だろう!

03-05-████
船長は…一応船にいた。他の船員も同じだ…今、あいつらはいない、炎があいつらを連れ去った。今日起こったことはほとんど覚えていない。覚えていることは船で男が話していて、俺はその遠い言葉を理解したくなかった事だ。奴らがもう一回話し始める前に奴らを殺してやりたかった。神は、俺が奴らにそうしてしまうの止めてくださった。今、旗艦は沖合に停泊し、1枚の無傷の帆が風ではためいている…許してくれ、船長、俺はもうあなたが地球の端の向こうで何を見たのか理解したくない。

船と乗組員は戻りましたが、なにか様子がおかしい……。

01-09-████
あの日以来、俺は海に戻る気はなくなった。俺達はロングボートで船を脱出したが、あいつらは気が狂ったのか軽率に端を越えていった…地獄か何かが超えてあったのか…生き残ったのはただ一人だ。島民の助けで、俺達は北にアジアへと向かい、島を超えて西へと戻った…俺達は200人以上もの船員が死んだのか説明するために絵空事を考えなければならない。夜明けにはカナリア諸島に出航する;うまく東から行けば、俺達は大西洋を越えてきたと信じさせることができるだろう。

世界の端はないと皆に話す事が世界の平穏のためには必要だと思う。一部の馬鹿共は探しに行くだろうが、再び[編集済]に終わるだろう。海を自由に航海することを考えればこの場所は秘密にしておくべきだろう。誰かに尋ねられたら、俺達が世界を回ってきたと答えるだろう。最初の男。とんでもない名誉だ。嘘は恥ずべきことだ、嘘は罪だと知っている、だが聖書の人間は誰も俺が暗闇の船で目撃したものを見ていない。神よ、お許し下さい、世界に必要なのはお伽話であり、一人の男の真実ではないのです。

SCP-1372に遭遇した男の日誌でした。日誌の書き手はSCP-1372を世界の端だと思い、それを隠すために、初の世界一周を達成したという嘘を報告しようと決意しています。世界一周を行ったということは、世界が球面であり端がないことの証明となるので、地球球体説を証明したことになります。

世界を回ってきた最初の男と言えば、大航海時代の1522年に世界一周を成し遂げたフェルディナンド・マゼラン – Wikipedia思い浮かびますが、日誌の内容から考えると、この日誌の書き手はマゼランの艦隊に乗船していた乗組員だったと思われます。この航海は地球球体説の証明となりました。

他にもマゼランの世界一周と符合する点があり、日誌の記録では死者200人以上となっていましたが、Wikipediaによると出発時約270人いた乗組員のうち、世界一周して戻って来られたのは18人だけであり、近い数字になっています。また、マゼランはスペインの艦隊を率いており、日誌がスペイン語で書かれていたこととも辻褄が合います

マゼランは航海の途中、フィリピンのマクタン島で、改宗と服従に従わない島民と戦い、戦死したとされています。この戦いは武装としてはマゼラン側が優位でしたが、マゼラン側49人に対して島民1500人という圧倒的な無理ゲーでした。日誌を書いたのがマゼランの艦隊に乗船していた乗組員だとすると、このマゼランの最後SCP-1372を隠すために、辻褄合わせで作られた話だったということになります。無謀な戦いであるので、作り話だと言われるとそう思えてきます。

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インタビュー記録1372-1

文書-1372-1に続いて、インタビュー記録1372-1も読むことができる。文書は最高機密に指定されている。アクセスはクリアランスレベル4/1372以上の研究員に制限される。

インタビュー記録1372-1
L███酋長は███████に居住する原住民内で選出された長老です。この島はゾーン-1372-アルファ内にある唯一の島です。全島民がSCP-1372の効果について気づいています。島民のほとんどはごく限られた英語を話す事のできるマレー・ポリネシア語族であり、少数の島民は他の島民にも理解できないほどの方言で話し、”共用語”を教わることに対してひどく抵抗します。L███酋長は英語での会話を試みると、財団職員に対して暴力的になりました;しかし、数週間の作業の後、R██████博士、財団の言語および人類学者、はL███酋長とのインタビューをできるほどに言語を解読しました。

R██████博士: 我々と会話の機会を与えて下さり有り難うございます、長老。

L███酋長: キミたちはこの土地を”封じ込め”たいと思っているんだな。”端”を。(L███はSCP-1372の方へ指し示す。)もしそうなのであれば、ワシはキミたちに知識を授ける必要があるだろう、この……キミたちはあれを何と呼んでいたかね?

R██████: 「異常区域」と。貴方は私達に対して抵抗しないのですか?

L███: ワシらは1隻の船にも苦労するような一般人で、キミらは国家ひとつの代表だ。本当ならアレをそのままにしておいてほしいところだが、抵抗して何になる? キミらが好き勝手やるなら、ワシの知識を得られない、それだけだ。

R██████: 分かりました。お願いします、あの異常についてご存知のことを教えてください。(メモ:両者が使用している用語は「未知の・魔法の 海・海原・地」といった言葉に近い。読みやすさのためにここでは単に「異常」として翻訳する)

L███: (一息ついて)島の人々は、キミたちに渡したあの日誌の一行の話をまだ覚えている。彼らの船長に起きたことを気の毒に思うよ。あの日誌からも確かめただろうが、ワシらの地図には西から先に何も示していない。それは何故かすでに知っておるな。(L███は再びSCP-1372の海へと向く。)ワシらは皆これを見ることができるのだよ、センセイ。だがそれでも、団結して船を出す若者どもは時々いる。キヤツらは地図の端の向こうに何があるのか見たいのだ。キミらも同じなのではないかな、センセイ?

R██████: 確かに好奇心もないではありません。しかし、我々は異常存在を、えっと……。

L███: (笑う)キミらは正しいよ。しかし、キミらは東から着陸しなかったね。端の越えた先のことは、ワシもキミと同じで何も知らんのだ。というより、キミたちが聞きたがっているようなことは知らん、というべきか。ワシが教えられるのは、何が戻ってくるのか、それで全てだ。

R██████: 貴方は異常な船と接触したのですか?

L███: それが端から戻ってきた船のことなら、その通りだ、数回ほど見たよ。ワシらはすぐに理解したよ、センセイ、ワシらの船とワシらの仲間に見えるソレはもはやワシらのものではないとな。キヤツらが何なのかワシが理解できるものではないが、端の先にあるものはこの地球にあるものではない。接触した人々がどうなるか……別の日にキミ自身の目で見ただろう。それも直接、そうだろう?(メモ:L███は事案1372-1について言及しており、3日前に発生しています。)彼らもキヤツらと同じようにされてしまうのだ。……感染船の一員にな(はっきりしない口調で)。

R██████: 感染症ですか? 詳しく説明していただけますか、長老? 我々は船内の人間を検査して、そして……(間をおいて)死体を切り開いたのですが、体内から病原体のようなものは見つかりませんでした。

L███: (遮って)おそらく、あれはワシやキミが理解しているような病気ではない、センセイ、だがそれでも病気なのだよ。

R██████: 分かりました、長老。その言葉の意味をすべて教えてくれますか。それは我々の知っているどの病気でもありません、つまり、貴方達部族が知っていて我々が知らないことに違いありません。

L███: ため息)それは医者が扱うような病気ではない。皮膚を痛みのある発疹が覆ったり、痛みで眠りを妨害するような病気なんかじゃない。ワシらはそれをイレクァー(ilekwah)と呼んでおる。それは、キミが知っているような、咳で伝染するものではないし、感染者の血に接触して伝染るものでもない。感染者の言葉によって、世界の端を超えてもたらされた知識によって、運ばれてくるのだ。だから、医者の手に負えるものではない。まるでクルジン(kurujin)のように。クルジンとは広き島々の水兵がもたらした病で、若者たちに「そこには1人であり3人である、雲の中に住まう魂以外は存在しない」などと言わせる奇病。分かるかな?

R██████: おそらくは、長老。しかし、我々の言語には”病気”とは違うクルジンやイレクァーに当てはまる言葉があります。

L███: キミはワシが端の向こうについて知っているか尋ねたね。ワシらはそれを死者が住む場所、[編集済]の地だと呼んでいる。もっとも、これは広き島々の人間を納得させる答えではないだろうがね。だがそれでも、[編集済]の地について、キミたちが知っている以上のことはわからないのだよ。(間をおいて)キミはあの時、ワシが怒っていることに気付いたようだね。キミの……助手が、広き島々の言葉で話していることに対して。ワシはあの言葉が許せないのだ。

R██████: なぜでしょうか? 部族に加わる船員たちと話しやすくなるはずですが。

L███: もしもワシが、水夫たちや多くの島民たちと同じく、広き島々の言葉を知ってしまったなら、端を超えて戻ってきた者共の言葉も理解できてしまう。理解できてしまったなら、キミが3日前に戻ってきた船に送ったあの人間のように、ワシもなってしまうのだよ。分かるか?

R██████: ……一見、信じがたいですが、長老。

L███: キミに話したとおりだよ、センセイ。世界の果ての向こうから帰ってきた人間の言葉は[編集済]からのメッセージなのだ。キヤツらは海を渡ってきた者達を永遠に褒め讃え、キミが知りたがっていることについて話す。そしてキヤツらの言葉を理解できたものは同様に病気に罹る。だからこそワシらは死者の住む地について知らないのだ。キミたちが来る前の月に、広き島々の言葉を話す者共の船が端からやってきて、ワシらの仲間と、キヤツらとともに暮らしていた水夫たちは、その言葉を理解してしまった。彼らは皆、その船の一員に加わった。感染船を破壊するのは困難を極めたよ……。

R██████: 簡単に理解するだけでも、感染してしまうのですか? それが、貴方達が英語や共用語を習わない理由……。

L███: やっと理解できたかな? だからワシらはあれに対して火を行使する。キミたちが見つけた航海日誌にもそう書かれているだろう。端を保護することに関してワシがキミ達を信じるべきというのなら、キミはこのことを理解しなければならん。あれは伝染病だ。海に放してはならない。ワシらの仲間とキヤツらのときは簡素なロングボートだから簡単だった。全ての船が出てきた時でさえも、1つずつ、どうにか船を対処することはできた。しかし、今やキミたちは空を飛ぶ機械や、海の恐ろしいサメでさえ小さく見える船を持っている。そしてそれらがワシらの世界に解き放たれた時、キミたち財団が、感染船を封じ込めたり、保護したりできるなど、とうてい納得できんよ。

R██████: しかしそれが我々の為す事なのです、長老。

L███: 望む事」なのではないかね、センセイ。ワシはこの島をキミたちの保護に任せることにした。そして、キミたちに端の警備を託そう。しくじれば、感染船が来る。ワシらを裏切るんじゃないぞ。

(このインタビューの後、全島民をマーシャル諸島の無人の環礁へと移住させ、島でSCP-1372と彼らの生活に関する全ての記憶を除去した。文書-1372-1を除いて、すべての島とSCP-1372に関する文書はO5司令部により機密文書となった。4/1372以上のアクセス権のある研究員は文書を読む際には最低1人以上のO5からの許可を得る必要がある。)

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SCP-1372は一体なんなのか?

SCP-1372は一体なんなのでしょうか。インタビューによるとSCP-1372から戻ってきた船の乗組員は、[削除済]となり、彼らがもたらす知識を理解すると彼らと同様[削除済]になってしまうようです。島の原住民達はこれをイレクァーと呼び、これを防ぐため、英語や共用語を使わず、戻ってきた船を乗組員ともども焼却して感染の拡大を予防していたのでした。イレクァーは財団が言うところのミーム災害のように見えます。

酋長はイレクァーは、「広き島々の水兵がもたらした病」クルジン(kurujin)と似た病気だと言っています。広き島々というのは大陸のことであろうと思われます。南半球の島々に船乗りと共にもたらされたものといえばキリスト教なので、クルジンはキリスト教のことなのではないかと考えられます。島民にとってみれば、宗教はそれまでの価値観や文化に対する脅威ともなる病気のようなものであり、これを恐れたとしても不思議はありません。島民が恐れたキリスト教と似た脅威を、財団は収容せねばならないのです。

さらに酋長は、クルジンを”若者たちに「そこには1人であり3人である、雲の中に住まう魂以外は存在しない」などと言わせる奇病”と述べています。1人であり3人であるというのはキリスト教の教義である三位一体 – Wikipediaを表しているように考えられます。

島の酋長は、端の先にあるものはこの地球にあるものではなく、死者の国と考えていますが、端の先にあるものはこの世界とは異なる世界で、もたらされるものは異世界の宗教なのかもしれません。

SCP-1372と接触していないものも出てくるので、飛行機や巨大な艦船が端から現れ、大きな被害をもたらす可能性がありますね……。

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おわりに

いかがでしたでしょうか?海から異常なものがやって来るという恐怖を現実の史実と絡めて描いたSCPでした。

 

SCP-1372 – The Utter West by Solan625
http://scp-wiki.net/scp-1372
作成年:2012
翻訳者 Porsche466
http://ja.scp-wiki.net/scp-1372
作成年:2014

本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。

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