SCP-4000 – 禁忌(Taboo) 内容整理と考察

SCP紹介&内容整理

SCP-4000: Taboo by PeppersGhostがついに翻訳されました。作品のメタタイトルは禁忌と翻訳され、[プロトコル4000-ESHUに基づき編集済] – SCP財団のページで閲覧できます。

今回はこちらのSCP-4000を、整理・解説しながら考察してみたいと思います。その内容は記念すべき4000ナンバー作品だけに奥深く、一読では理解が困難な作品になっています。

SCP財団では1000ナンバーの作品は、毎回異なるテーマで開催されるコンテストを通して選出されます。このSCP-4000は歴史がテーマとなったSCP-4000コンテストの優勝作品です。

今回の記事は非常に長くなっています。要点だけ見たい方は結論からご覧下さい。

※2018/10/12、入れ替わりとの妖精についての詳しい説明を追加しいくつか表現を修正しました。

SCP-4000

それではページを開いてみます。すると真っ先に、[プロトコル4000-ESHUに基づき編集済]というタイトル、木を背景に浮遊する顔のない女性が写った不気味な画像、そして警告文が目に飛び込んできます。通常、タイトルにはSCP-~とアイテム番号があるはずですが、表示されていません。

警告文の内容は

The following anomaly is affected by communication. Do not refer to it in speech or writing unless trained.

というもので訳すると

以下の異常存在は伝達により影響を受けます。訓練を受けた場合を除き、会話や文章中で言及しないでください。

という感じでしょうか。会話や文章中で言及すると影響を受けるようです。

続きを読んでみます。

アイテム番号: プロトコル4000-Eshuに基づき制限されています。

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 以下に述べる余剰次元の場所、ならびにそこに含まれる実体とランドマークは名辞災害(Eshuクラス)であり、そのためあらゆる名前、肩書、呼称で言及してはいけません。標準空間の外側に位置する森、ならびにその土着の実体に言及する際に用いることができるのは描写のみです。これらの描写には実体を描写するごとに変化がつけられなければなりません。描写は識別のために色分けすることが可能であり、命名の多様性のために装飾的な言葉遣いを使っても構いません。

アイテム番号の項目も通常であれば、SCP-4000と書かれるはずですが、プロトコル4000-Eshuに基づく制限で読めなくなっています。特別収容プロトコルの項目でもSCP-4000とは書かれず、SCP-4000は以下に述べる余剰次元の場所、標準空間の外側に位置する森などと呼称されています。

わかりやすさのためにここでは緑に色づけされた呼称をSCP-4000とします。特別収容プロトコルによるとSCP-4000とそこに含まれる実体、ランドマーク(景観内の目印となる自然物や建造物)Eshuクラスの名辞災害で、あらゆる名前、肩書、呼称での言及が禁止されており、代わりに描写で言及することが定められています。これらの描写は実体を描写するごとに変化がつけられることになっています。

ちなみにEshuはヨルバ族の神話の神の名前でした。こちらのページによるとEshuは市場や交易の神、不和や混乱をもたらす神だそうです。

ここで名辞災害という謎の言葉が出て来ました。名辞とは辞書によると概念の言語的表現のこととありました。続きを読むとわかりますが、この作品では名辞は名前を付けるという命名行為を指しています。

名辞災害の詳しい説明は本文中にはありませんが、財団用語の認識災害という言葉から類推すると、命名行為により災害が引き起こされるという異常性のことのようです。この異常性により対象へのあらゆる名前、肩書、呼称での言及が禁止され、タイトル及び、アイテム番号を含めた本文中でもSCP-4000という呼称で言及されません。

ただし描写で対象を示すことは可能であり、本文中では色分けや装飾的な言葉使いで対象を呼称しています。しかしながら、これらの描写は実体を描写するごとに変化がつけられなければならないとプロトコルで定められています。つまり同じ描写を続けて用いない限りは描写で対象を示すことが可能です。

異常性を簡単にまとめるとSCP-4000とそこに含まれる実体、ランドマークを名前を付けて言及してはいけないということになります。

この理由によりSCP-4000という名前が使われないのです。では続きを読んでいきます。

名辞的収容違反の際には、収容違反の原因となった人物により、ただちに標準Eshuクラス収容プロトコルが実施されなければいけません。その人物が手続きを実行できない状態に陥った場合、その人物の最近親者が責任を負うことになります。

収容違反の原因となった人物が既知の最近親者をもたない場合は、その人物の名前は存在するすべての文書と記録から抹消されなければなりません。同じ名前を有するあらゆる人物はタイプ-Gウイルス性記憶処理を施され、新しい名前を割り当てられます。

名辞的収容違反……。対象を名辞したということでしょうか?

特別収容プロトコルによると、収容違反の原因となった人物は標準Eshuクラス収容プロトコルを実施し、実施不可であれば人物の最近親者が行なうことになっています。

近親者がいない場合は収容違反の原因となった人物の名前が文書と記録から抹消され、同じ名前を有するあらゆる人物は記憶処理後に新しい名前を付けられることになっています。

他の職員ではなく近親者というのが気になりますね。ここでも名前が重要な要素であるようです。この点に注意して読み進めていきます。

命令O5-4000-F26にしたがって、標準の異常性からのあらゆる逸脱を評価するため、年に少なくとも1回奇妙で危険な森林地帯への成功裡の探検が実施されねばなりません。名もなきものに出会う場所への立ち入りがはらむ高い危険性のため、研究実施のために送り込まれる職員は4000-SEPに詳述される標準調査プロトコルの訓練を受けなければなりません

煙突の中で見つけた森の許可なき文書化は標準情報収容プロトコルにより抑制されねばなりません(記憶処理剤のクラスはケースバイケースで決定されます)。4000-ハロウェイ手続の知識を許可なく有している人物は記憶処理の対象とさ、また、論考的リハビリテーション期間の後であれば解放しても構いません。

ここの節では、年に少なくとも1度はSCP-4000の探査を成功させるように指示しています。SCP-4000は相当危険な場所のようで、4000-SEPに詳述される標準調査プロトコルの訓練を受けた職員だけが送り込まれます。ここではSCP-4000の文章化は通常許可されないと書かれています。4000-ハロウェイ手続という言葉が出てきますがまだその詳細は不明です。4000-ハロウェイ手続の知識は一般からは秘匿されています。

それでは説明を読んでみます。

説明

説明: 問題のSCPは、危険な名辞現象を含む多数の異常な性質を示す、余剰次元の森林地帯です。この異常な場所は4000-ハロウェイ(文書DOC-4000-Hを参照)を実施することにより侵入できます。手続きを完了した人物は、林床に据えられている荒廃したレンガ造りの井戸の開口部から出現します。

普通じゃない地形を縦走するための唯一信頼できる手段は、1本の泥の道を用いることです。前述のルートを逸脱した探検は、参加者らとの即座の連絡途絶という結果になります。唯一の安全な道は単一の向きにのみ通行可能であり、方向転換して来た道を戻ろうとするあらゆる試みは同様の連絡途絶に終わるでしょう。

名もなき世界は線形空間の制約に従いません。地図を作製する努力は探検ごとに大きく異なるルートが記録されるという結果になっており、必須の道の理論的には重なるか、交差すべき部分はそうなっていません(これらの現象間の直接的な関連性は確認されていませんが、類似の地形異常は幾何学的規範に従う森でも観測されています。SCP-416マン博士の提言)。構成における唯一の一貫した要素はアクセスポイントであり、常に主な道の両端に存在します。

それを辿り始めた対象者にとっての名前のない森を安全に出る唯一の手段は、道程を歩き切り反対側の始めた場所へ戻ることです。

まずはここまでの説明をまとめてみます。

問題のSCP、この異常な場所、名もなき世界(SCP-4000)は、4000-ハロウェイの手続きを行なうことで侵入できる別次元にある森林地帯。

4000-ハロウェイを行った人物はSCP-4000内の荒廃したレンガ造りの井戸、アクセスポイント、始めた場所(以下こちらの記事内ではSCP-4000-1と呼称します)の開口部から出現する。SCP-4000は1本の泥の道、唯一の安全な道(以下SCP-4000-2を、途中で道を戻ることなく縦走することでのみ踏破できるが、それ以外は連絡途絶となり、地図作成では毎回別ルートが記録される。SCP-4000-2の両端にはSCP-4000-1があるため、最後まで踏破すれば終端から帰還できる。

命令O5-4000-F26に従い、一年に少なくとも一回はこの道を通りSCP-4000に新たな異常が発生していないか調査することが定められています。それでは続きを読みそれぞれの節をまとめてみます。

名無しの生息地固有のさまざまな異常実体が記録されています。土着の実体らはしばしば観察下にない間に身体的構造を変化させ、記録された実体のうちどれがユニークなもので、どれが以前に記録されたものの新たな反復であるかを研究者らに判定させづらくしています。実体らはこれらの変化を制御できないと主張し、発生時には頻繁に不満足を表明します。

土着の実体は度々対象者らが歩む道を塞ぎ、先へ進むために交流の必要を生じさせます。土着の実体には知性があり、しばしば非常に短気ですが、4000-SEP予防措置に従う限りは安全に交流できます(土着の実体が人間に対して本質的に有害であるように思われた稀な事例が記録されています)。これらの予防措置を軽視した際の帰結は、気分を害した実体のパーソナリティに依存して様々に異なります: 調査参加者らが遭遇した報復の程度には、口頭での非難、暴力行為、被験者の身体的、概念的、あるいは名辞的属性の異常な改変が含まれていました。

SCP-4000には身体的構造が変化する土着の知性ある実体がおり、SCP-4000-2を進むためには実体と交流する必要が必要となる。4000-SEP予防措置に従い対応すれば安全に交流可能だが、怠ると非難や暴力行為、被験者の身体的、概念的、あるいは名辞的属性の異常な改変の被害を被る。

それらは名付け得ぬものの領域、その固有の実体ら、およびランドマークに一貫した名称が適用されると、様々な異常現象が発生します。部分的には命令O5-4000-F26による名辞実験の禁止により、これらの現象は未だ十分に理解されていません。

SCP-4000とそこに含まれる実体、ランドマークに一貫した名称が適用されると、様々な異常現象が発生する。

何度も同じ呼称を使用することが異常現象を招くため、特別収容プロトコルではあらゆる名前、肩書、呼称での言及が禁止され、装飾的な言葉使いにより呼称されていたようです。

記録された名辞現象には以下が含まれます:

  • 影響された名称に暴露した対象者らに発生する反復性群発頭痛。
  • 暴露した対象者らに発生する、通常名称によって描写される環境または実体に関する幻視あるいは幻聴。少数の事例のサブセットにおいては幻味および幻臭も報告されている。
  • 暴露した対象者らに発生する突然の心因性健忘。
  • 暴露した対象者らに発生する、羽毛や花粉嚢といった非人間的な身体的特徴の発達。
  • 名称が表記あるいは記録された非生物媒体に発達する生体要素。
  • 手続4000-ハロウェイを用いることなしの、影響を受けた対象者らの突発的・非自発的な名のないものたちの原野への移動。
  • 名称が使用された屋内空間への様々な植物群の出現。
  • 名称が使用された地域への土着実体らの突発的な移動。
  • 暴露した対象者らと土着実体らの生物学的融合。
  • 名称が使用された建築空間と土着実体らの生物学的融合。
  • 暴露した対象者らが示す、予想される有害な副作用なしの極度の鉄欠乏。

命令O5-4000-F26は1954年に監督者評議会によって承認されました。1970年の改正は、O5-4000-F26が実効力を保つためには10年ごとに評議会から全会一致の承認を得ることを求めます。今日まで、O5-4000-F26に関する監督者の覚書がより低位のクリアランスレベルまで流布されたことはありません。

説明は以上でした。名辞によりいろいろヤバそうな変化が起きるようです。SCP-4000を年に一度調査するように求めていた命令O5-4000-F26により実験は禁止。この命令は10年ごとに監督者(O5)評議会から全会一致の承認を得ることで継続します。

ここまでは特に意味不明なところはありませんが、ここからが解釈が難しくなっていきます。それでは収容違反の記録を見てみます。

特筆すべき収容違反

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REQUEST=“Notable_CB”



[ACCESS: GRANTED]

補遺: 以下は名辞的収容違反の間に観察された異常現象の例です。

違反日時: 1954年6月9日

命名対象: 我々が滅多に口にすることのない空き地

概要: 最初の発見とその後の収容違反は、コネチカット農村部の放棄された家屋で起きた。生存職員の不在により発見の状況は不明であるが、イベントの概略タイムラインは確立されている。タイムスタンプは標準NATO形式による。

[1340S] 語られぬ名の窪地が発見され、フィールドエージェント・ギャレット・ブラッドレーにより臨時のタイプ-E(新規に発見され、まだ未確保状態にあるアノマリーを指す暫定的呼称として用いられていた、古いオブジェクトクラス)が与えられ、名辞的収容違反を引き起こす。

[1345S] フィールドエージェント・モイラ・デノッティが煙道の向こう側の土地に入り、その後発見されず。

[1347S] エージェント・ブラッドレーが徐々に硬材の床に沈み始める。付近のエージェントらはその場から逃れる。

[1348S] 家屋を出た直後、タイプ-E指定に気付いていなかったティモシー・ウッズを除くすべてのエージェントが突然不動になる。

[1349S] 動けなくなったエージェントらは胴体が引き延ばされ、苦痛を声に出す。

[1351S] おおよそ手続4000-ハロウェイが実施された煙突と同じ高さに到達すると、エージェントらの伸展は停止する。彼らの顔面の開口部から煙が噴出する。ティモシー・ウッズが無線を通じてこれらの展開をサイト-08に報告する。ティモシー・ウッズが言葉に力のある世界を描写するため繰り返し”█████”という表現を用いた際、二次的収容違反が発生する。

[1355S] ティモシー・ウッズが”木に[彼の]名前がある”と発言。サイト-08の職員がティモシー・ウッズに更なる情報を要求する。ティモシー・ウッズは無線を飲み込もうと試み、体内の負傷によりまもなく死亡する。

[1359S] サイト-08におけるティモシー・ウッズの交信者が激しい頭痛に苦しんでいることに気付かれ、隔離される。

[1424S] 隔離されたサイト-08職員の両眼窩から、木の枝に類似した骨性突出物が現れる。両眼窩において完全な眼球脱臼を示しているにもかかわらず、職員は一切身体的不快感を報告しない。

後書: 最終的に多変数的なDクラスの暴露サイクルを多数繰り返したのち、名辞的異常が発見されました。

こちらは名辞的収容違反が起きた際の記録です。こちらの記録は文章のリンクを押すと表示されます。リンクを押すと

コンテンツにアクセスしています。しばらくお待ちください。REQUEST=“Notable_CB”

という文章が表示されますが、これはREQUEST=”Notable_CB”というコマンドを入力して文章を表示させていることを表しているようです。

SCP-4000が最初に発見されたときの記録のようですが、生存者がいないため発見時の詳しい状況は不明です。SCP-4000は、存在を確認したエージェントにより暫定的にタイプ-Eに指定されますが、名前を付けたことで名辞的収容違反が発生。タイプ-E指定に気付いていなかったティモシー・ウッズを除くすべてのエージェントに異常な変化が起こります。

さらにティモシー・ウッズもSCP-4000をタイプ-Eとは異なる呼称で連呼したため、二次的収容違反が発生。ティモシー・ウッズは無線を飲み込もうとする異常な行動により死亡し、その交信者も両目から木の枝に似た骨が飛び出すという異常が発生しています。その後Dクラスの何回かの暴露の末にこの名辞により異常現象が起こることが発見された模様です。

“木に[彼の]名前がある”という発言はどういう意味を持つのでしょうか?

違反日時: 1955年12月22日

命名対象: 地域中を循環する小道

概要: デスク・デスク(Desk Desk)名もなき星々の下の茂みにおける初の成功裡の探検ミッションを終え、ただちに隔離された。72時間異常な性質を示さなかったのち、デスク・デスクは彼の体験を記す許可を得た。研究者らが彼の進捗を確認するために戻った際、デスク・デスクは姿を消していた。後にデスク・デスクが執筆に用いていた鉛筆、紙、ハーヴェイ・マンスフィールド(harvey mansfield)から痕跡量の土とヒト組織が発見された。

発見から一年後に起きた名辞的収容違反の記録です。探検ミッションを初めて成功させたエージェントにより収容違反が発生したようですが、エージェントの名前がデスク・デスクというおかしな名前になっていて戸惑います。これも何かの異常なのでしょうか。

命名対象はSCP-4000-2となっておりおそらく筆記しているときに名前を付けてしまい異常現象が発生したと思われます。最後の一文、デスク・デスクが執筆に用いていた鉛筆、紙、ハーヴェイ・マンスフィールドとは一体何なのでしょうか……。

違反日時: 1958年8月19日

命名対象: 骨の玉座に坐し、燃え立つ子をあやす土着実体

概要: 探検ミッションを完了したのち、フィールドエージェント・イーサン・メルシー(Mercy)・メルシー・メルシー・メルシーが特定の土着実体を表すのに同一の形容を複数回用いた。数分後、彼は強い吐き気を訴え、血と骨髄を嘔吐し始めた。

エージェント・メルシー・メルシー・メルシー・メルシーは数時間にわたり、如何にかして口から自身の骨の大半を吐きだしたと報告された。続く数日間、サイト-08中の職員が女性の笑い声の幻聴を経験した。

次の収容違反は土着実体を命名したことにより起きたものでした。またもエージェントの名前が変です。口から自身の骨の大半を吐きだすという恐ろしい現象が発生しています。

違反日時: 1966年3月4日

命名対象: 骨の牡羊の頭部を備えた、羽毛のあるライオンに似た土着実体

概要: 大学生のヴァネッサ・ヘイフォースが、異常な組織増殖の兆候はないにもかかわらず、頭が肉に覆われたと訴えてオレゴン州ポートランドとその近辺の多数の医療機関で受診を試みた。彼女は最終的に財団の捜査員により拘束され、(その他のものと並んで)手続4000-ハロウェイを完全に記述した1冊の本(命令05-4000-F26により、書籍の完全な内容はレベル5の職員のみアクセス可能です。しかしながら、公式な声明において、書籍に記された特定の儀式と場所はSCP-1660およびSCP-860と強い類似性を示していることが認められています。近年の機密解除においては別の一節がSCP-3560への言及として書かれている可能性があることが明らかにされていますが、これは本の回収から50年以上経過して発見されたものです。SCP-3560がアンダーソン・ロボティクスの存在に先立つものであることの意味は未だ不明です)を所持していることが明らかになった。協力と引き換えに財団の職員が頭部からの肉の除去を支援するという要求ののち、(そのような手続きはこれまで実行されていません)ヘイフォースは放浪者の図書館の知人から本を受け取ったと告白した。

後書: これは既知のケースの中で民間人によって引き起こされた最初の名辞的収容違反です。以降、類似の事例が間欠的に発生しています。2012年、ヘイフォースが財団の勾留下で死亡してから20年以上経過したのち、若年時の彼女と表面的に類似した土着実体が撮影されました(図 1.1)。

こちらは民間人によって引き起こされた最初の名辞的収容違反記録です。ヴァネッサ・ヘイフォースという名の大学生が土着実体に命名したと記録されています。彼女は異常がないにもかかわらず頭が肉に覆われたと訴え、医療機関を受診。これがきっかけとなり財団に拘束されたようです。

ヴァネッサはSCP-4000に侵入する手続である手続4000-ハロウェイを完全に記述した1冊の本を所持していました。ヴァネッサは放浪者の図書館の知人から受け取ったと告白しています。ヴァネッサは協力の見返りに頭部からの肉の除去を要求していますが、これは行なわれなかった模様です。ヴァネッサは財団に勾留され続け2012年に死亡しています。

SCP-4000のトップにあった画像に写っていた人物は、若年時の彼女と表面的に類似した土着実体だったようです。

放浪者の図書館とは、要注意団体、蛇の手が本拠としている超常的な異次元空間のことで、この本は蛇の手の関係者から入手したようです。蛇の手はSCPオブジェクトの実在とその使用を肯定し、破壊や隠蔽に反対しているため財団とは敵対関係にあります。

一般人であるにも関わらず、ヴァネッサは死ぬまで財団に勾留され続けています。

違反日時: 1992年10月30日

命名対象: マイケル・アシュリー・ヴィンセントが探検ミッションの間に数夜を過ごした家。

概要: 数年前に探検ミッションを完了したエージェント・マイケル・アシュリー・ヴィンセントが、2人の同僚に対して詳述している最中に所有格のフレーズ”██家”を数回用いた。その同僚らには名前が存在しない(この陳述はミーム性変造の可能性ありとフラグを立てられました: “記録が何と言っているかは関係ない。ミーム学部門に30年務めていれば直感に従うことの重要さは分かるはずであり、そして今まさしく私の直感がこれは何かおかしいと告げている。” — ストラム(Storum)博士)

しばらくのちに、サイト-08に大型のレンガ造りの建物が既存の建築物と交差した状態で出現。内部でマイケル・アシュリー・ヴィンセントの頭部のない身体が、激しく痙攣し、エルクの角で作られた照明用ソケットに頸部で接続された状態で発見された。彼の顔 — 生きているようには見受けられない — は建物のフロア表面全域を覆うように引き延ばされていた。

顔の口内に派遣されたエージェントらは、完全な消化管が存在していないことを発見。しかしながら、マイケル・アシュリー・ヴィンセントの名もなき同僚らは口蓋垂に結合していると報告された。

こちらはSCP-4000内の家を名辞したことで起きた収容違反の記録です。またしてもエージェントの名前がおかしいです。ファーストネームが3つもありラストネームがありません。さらに同僚には名前がありません。ミーム学部門の博士もミームによる改ざんの疑いがあると違和感を表明しています。

このケースではこれまでと異なりサイト-08にレンガ造りの建物が出現しています。内部ではグロテスクな光景が広がっていました。

名辞的収容違反の記録は以上でしたが疑問点だらけです。特に名前の変化が気になります。続きを見てみます。

4000-ハロウェイ

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REQUEST=“DOC-4000-H”



[ACCESS: GRANTED]

4000-ハロウェイ: 以下はレッテルの及ばぬ地平へ侵入するための検閲済み説明リストです。この文書の当バージョンでは一部のステップが省略されています。手続きの最後のフレーズとカウンターフレーズは対象者のタイプカテゴリによって異なります: 世帯の長子(タイプ-1)、中間子(タイプ-2)、末子/一人っ子(タイプ-3)。

  1. 有機的な焚きつけを用いて、任意の屋内の炉に定常火炎をおこしてください。
  2. オスのアカギツネ(Vulpes vulpes、年齢不問)、成熟したオスのライオン(Panthera leo)、ヒゲクジラ亜目(Mysticeti、年齢・性別不問)の骨の粉末を混ぜ合わせてください。混合物を火に投じてください。
  3. 情緒面での大きな価値がある、燃えやすい私物を1つ用意し、火に焼き尽くさせてください。
  4. Corvus属に分類される、黒い羽毛の鳥の羽根3片を注意深く火の上に放ち、煙によって煙道を上昇させてください。
  5. 炎が声を発し始めたら、適切なカウンターフレーズで反応してください(下のフレーズとカウンターフレーズを参照)。
  6. 正しい陳述が与えられたならば、炉が拡大して梯子が降りてきます。火は無害です。
  7. いかなる理由であれ陳述を誤った場合はただちに謝罪し、将来のいかなる時点でも二度と手続4000-ハロウェイを試みないでください。

注: 手続4000-ハロウェイに居合わせるが手続きの実行者ではない人物は、いかなる状況下でも炎の声に反応したり、活性化した炉に近づいてはいけません

フレーズとカウンターフレーズ

派生1
(タイプ-1対象者)

フレーズ: この森には掟がある。These woods have rules.

カウンターフレーズ: あるいはそう言われる。Or so they say.

フレーズ: そしてもしおまえが掟を犯すなら?And if you break them?

カウンターフレーズ: 私は代償を払うだろう。A price I’ll pay.

派生2
(タイプ-2対象者)

フレーズ: 誰かそこにいるの?Is someone there?

カウンターフレーズ: 私だけだよ。There’s only me.

フレーズ: そしてあなたは誰?And who are you?

カウンターフレーズ: きみは知っていると思うよ。I guess you’ll see.

派生3
(タイプ-3対象者)

フレーズ: 何を求める?What do you seek?

カウンターフレーズ: 木々を歩むことを。To walk the trees.

フレーズ: ならば、礼儀に気をつけるがいい。Now, mind your manners.

カウンターフレーズ: どうかお願いします、逍遥を。To walk them, please.

END=“DOC-4000-H”

こちらにはSCP-4000に侵入する手続である手続4000-ハロウェイの詳しい方法が書かれています。魔術の儀式のような内容です。煙道のある炉で動物の骨、愛着のある燃えやすい私物を焚き、鳥の羽根を煙道で上昇させ、最終的に合言葉のようなフレーズを述べるとSCP-4000内のSCP-4000-1へ続く梯子が降りてくるようです。侵入する人物が第何子であるかによってフレーズが変わっています。

4000-SEP

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REQUEST=“Standard_Exploration_Protocol”



[ACCESS: GRANTED]

注: 以下は生存のために重要な指示のみを含む、短縮されたリストです。探検任務に割り当てられた職員は、出発前に4000-SEP-3から8にも習熟しなければいけません。

4000-SEP-1

探検のための総合指針:

1.01 名前を受け入れない場所への侵入に先立ち、標準財団探検パックを身につけること。
1.02 標準財団探検パック内に含まれるレーションを除き、食物を口にしない。
1.03 いかなる状況下でも木々の次元に銃火器をもちこんではならない。
1.04 タイプ1対象者は価値のある資源とみなされうるものを受け取る、あるいは直接扱うことを避けること。これには複数形態の通貨、貴金属や貴石、有用な異常性質を吹き込まれた物体、精巧に作られた武器類が含まれる(が、この限りではない)。
1.05 タイプ2対象者は自身に愛情ないし恋愛感情を抱く土着の実体を避け、いかなる方法でもこれらの感情に報いるように見せないこと。タイプ2対象者に対して土着実体らが愛情ないし恋愛感情を明言する発言は虚偽である。
1.06 タイプ3対象者は一般に気まま、贅沢、ないし身体的に快適とみなされる活動に参加するのを避けること。これには踊り、喫煙、玩具遊び、水以外の飲料の摂取、音楽鑑賞、詰め物のされた平面の上での就寝が含まれる(が、この限りではない)。
1.07 諸君らが行かねばならぬ道の途上で遭遇した構造物は、立ち入る前に入口でノックすること。退出は入った場所から行う。招かれずに立ち行った場合には発見されてはならない。
1.08 掟を至上のものとする森で入眠した際には夢を記録せよ。探検パックには日誌が含まれている。記録した夢と類似したランドマークないし実体と遭遇した場合、夢を事実として扱え。

 

4000-SEP-2

土着実体との交流指針:

2.01 土着実体には会話の前にフォーマルな挨拶をせよ(好ましい挨拶の例: “おはようございます Good morning“, “こんにちは Hello“, “すみません Pardon me“. 不適切な挨拶の例: “ヘイ Hey“, “よう Yo“, “調子はどう? What’s up?“。女性の場合にはおじぎ、あるいはカーテシーをせよ。
2.02 心をこめた声のトーンで発言せよ。
2.03 虚偽であると自覚している発言をしてはならない。
2.04 土着実体の目の前でそれらを見下した発言をしてはならない。
2.05 適切である場合には’どうかお願いしますplease‘ないし’ありがとうございますthank you‘と発言せよ。
2.06 プロトコル4000-Eshuに従い、土着の実体に言及、および呼びかけする場合には身体的外見の描写を用いてせよ。
2.07 たとえ土着実体がそのように自己紹介した場合であっても、名前、肩書あるいは呼称を用いて言及してはならない。
2.08 土着実体のいる場所で自分たちの名前、ニックネーム、コードネーム、変名その他の個人的呼称を口にしてはならない。
2.09 土着実体が名前、肩書あるいは呼称を与えることを申し出てきた際には丁寧に断ること。
2.10 土着実体の発言に自分の名前、肩書、呼称その他身体的特徴の描写でない表現を用いた言及ないし呼びかけが含まれていた際には、あたかもその発言がなかったかのように無視せよ。
2.11 機密とみなされる情報を要求された際には拒否し、簡潔に謝罪して頭を下げよ。
2.12 土着実体が援助を求めた際は、助けることを選ぶ前にその外観を考慮せよ:
………2.12.A 実体が脅迫的に見える場合は、援助のために尽力せよ。
………2.12.B 実体が魅力的ないし無害に見える場合は回避せよ。
………2.12.C: 飢えている土着実体には常に食糧を与えよ。これは2.12.Bに優先する。
2.13 信頼でき、かつ同意を示したものでない限り、獣型の実体に騎乗しようと試みてはならない。
2.14 物質的な贈り物を提供された場合には両手で受け取ること。無価値であると思われる場合にもこの贈り物を捨ててはならない。1.04はこれに優先する。
2.15 土着実体が非物質的な贈り物を提供するか、取引を始めようとした場合は丁寧に断ること。
2.16 土着実体が提供した食物を受け入れてもよく、また遭遇した他の土着実体にその食物を提供してもいいが、自分で食べてはならない。
2.17 土着実体に提供された宿で眠ってはならない。泊るよう招かれていない場合に限り、土着実体の住居内で眠ってもよい。
2.18 土着実体が行程に同行を申し出た場合は受け入れよ、しかし目的地を教えてはならない。
2.19 土着実体に援助された場合、もし既にそれを援助していないならば見返りとして援助すること。
2.20 土着実体でないと主張する肉体のない人型存在と遭遇した際には、これまでの全プロトコルを無視して指示に従え。

END=“Standard_Exploration_Protocol”

ここにはSCP-4000に送り込まれる職員が訓練で習熟すべき標準調査プロトコル、4000-SEP(Standard Exploration Protocol)の内容が記されていました。4000-SEP-1から8まであるうちの4000-SEP-1 探検のための総合指針と2.0 土着実体との交流指針を読むことができます。

探検のための総合指針には、現地の食物摂取禁止・銃火器の持ち込みの禁止といったことから、建物の入り口でのノックや夢の記録といった謎めいた決まりまで書かれており、対象者のタイプにより禁止事項も変化しています。

土着実体との交流指針ではやはり名辞が禁止されています。土着実体による名辞も避ける・無視することになっています。こちらもフォーマルな挨拶の指示、嘘の禁止など不思議な決まりが書かれています。

最後には意味ありげに、土着実体でないと主張する肉体のない人型存在と遭遇した際には、これまでの全プロトコルを無視して指示に従えと書かれています。どういう意味でしょうか?

インタビューログ4000-0215

▼ コンテンツにアクセスしています。しばらくお待ちください。

REQUEST=“Interview_4000_0215”



[ACCESS: DENIED]
[このデータは削除されています。]



REQUEST=“Interview_4000_0215”
CREDENTIALS=“EJAPERS/M4d754pARte3”



[ACCESS: GRANTED]
[こんにちは、ジェイパーズ博士。]

インタビューアーカイブ4000_0215: 以下はユージーン・ジェイパーズ博士により、数年にわたって実施された一続きのインタビューです。このデータは命令O5-4000-F26に基づき、すべての一般文書から削除されています。

遭遇 1

インタビュアー: ユージーン・ジェイパーズ博士

インタビュー対象の説明: ウサギの頭部に似たそれをもつ土着実体

前文: 2005年、ジェイパーズ博士による初の発話が致命的である空間の探検の間に実施されたインタビュー。


[ログ開始]

“おはよう、見知らぬ旅人よ。”

ジェイパーズ博士: おはようございます。

“この辺りの土地では見ない顔だね、はじめまして。煙草を失礼するよ。ちょっと私の意見を広めにね。君の名前はどうだね?”

ジェイパーズ博士: どうと……? すみません、それはお教えできません。

ジェイパーズ博士が頭を下げる。

“君は頭が弱いのかね? 私はただ君の名前はどんな調子だと訊ねているに過ぎない。私の名前は最近ラズベリーの香がしてきたように思う — あるいは、おそらく金魚草か。近頃は区別も難しいが、努力はするものだ。”

ジェイパーズ博士: あぁ、申し訳ありませんでした。私の名前は近頃ずいぶんと酸い味がするようです(後ほどジェイパーズ博士はSEP-2.03に違反したかどで譴責されました)。

ウサギの実体が笑い、帽子を持ち上げる。

“いや、詫びねばならんのは私の方だ。鼻を突っ込むべきではなかったよ。”

ジェイパーズ博士: まったく問題ありませんよ。気にしておりません。お会いできて嬉しゅうございますが、行き掛かりですので。

“されど道草は構わんのではないかね? 近くに私の家がある、お茶でもいかがかね。”

ジェイパーズ博士が再度頭を下げる。

ジェイパーズ博士: 誠に申し訳ありませんが、生憎さしあたって留まる訳にはいかないのです。よろしければまたの日に。

“結構。また会おう、ずいぶんと酸い名前の客人よ。”

[ログ終了]

こちらはSCP-4000を探検したジェイパーズ博士による土着実体へのインタビューログ4000-0215になります。

このインタビューは今までと同様REQUESTのコマンドでアクセスしていますが、

[ACCESS: DENIED]

と表示され、アクセスを拒否されます。しかし

CREDENTIALS=“EJAPERS/M4d754pARte3”

と入力した結果、[こんにちは、ジェイパーズ博士。]と表示されアクセスに成功します。どうやらこちらの文章はジェイパーズ博士の資格権限で閲覧しているようです。表示された文章によると、インタビューログは命令O5-4000-F26によりすべての一般文書から削除されているようで、その結果として最初のアクセスが拒否されたものと思われます。

それでは改めてインタビューを読んでいきます。ジェイパーズ博士がインタビューしたのはウサギの頭部をもつ人型実体でした。土着実体なので名辞してはいけないのですが、便宜上兎実体と表記します。ちなみに本家のサイトではこの兎実体の画像を見ることができます。

インタビュー開始早々ジェイパーズ博士は兎実体に名前はどうだねと尋ねられています。ジェイパーズ博士は「私の名前は近頃ずいぶんと酸い味がするようです」と答えますが、これは2.03 虚偽であると自覚している発言をしてはならないに違反しており帰還後に譴責された模様です。

その後兎実体からお茶を勧められますが、ジェイパーズ博士はこれを断り、別れの挨拶を交わしてインタビューは終了しました。

遭遇 2

インタビュアー: ユージーン・ジェイパーズ博士

インタビュー対象の説明: 兎顔の紳士

前文: 2008年、ジェイパーズ博士によるレンガの狭間のあの巣穴の4度目の探検中に実施されたインタビュー。


[ログ開始]

ジェイパーズ博士は丘の頂上に到達し、キャベツ畑に向かうウサギじみた知人を発見する。

“こんにちは、見知らぬ人よ。しかし — ああ、申し訳ない。前にお会いしていないかね?”

ジェイパーズ博士: こんにちは。ええ、そう思います。私の記憶が正しければ3年前ですね。

“今思い出したよ。ずいぶん急いでやってきて、ずいぶん急ぎで去っていったな。”

ジェイパーズ博士: ええ、その節は失礼しました。あの頃はこの辺りに不慣れで、用心していたものでして。

“相も変わらず謝りがちな様子だな。まあ支障はあるまい。君はここの者ではないな? 非常に興味深い。君は何の森から来たのかね?”

ジェイパーズ博士: 私は森から来たのではありません。

“そんな訳はないだろう。間違いなく君のお里には森があるはずだ、違うか?”

ジェイパーズ博士: ございますが、極めてまばらなのです。ほとんどの土地には家々と商店が建っています。

“ならば下等な森だな、しかし森には違いあるまい。どうやってここに来たのか教えてはくれないかね?”

ジェイパーズ博士: なかなかの探究心をお持ちで。もしよろしければ、私からあなたにひとつお尋ねしたいのですが。

“無作法を許してくれ。私には学者の気があると思っていてね、よその森について学ぶ機会があると少々気が昂ってしまうのだ。ぜひとも質問してくれたまえ。”

ジェイパーズ博士: 以前お会いした際、ご自分の名前を形容するのが難しいとおっしゃいましたね。その訳についてなにか仮説はおありですか?

“我々が — つまりそれは私と私の名前のことだが — 別れていた長さのせいとしか思えんよ。それはいい名前だった、誇らしい名前だったとしか思えん。しかしながら、もし仮にまだあるとしても、今日までにそのかつてあった高貴さから堕落してしまっているだろう。”

ジェイパーズ博士: 今はどちらにあるとお考えですか?

“学者の友よ、まず先の私の質問に答えたまえ。”

ジェイパーズ博士が頷く。

ジェイパーズ博士: 私は今歩き回っている小道の果てにある、古いが非凡な井戸を通ってまいりました(この情報は土着の実体にとっては機密とみなされていません)

もう1人の人物は喋りだす前に躊躇する。

“それは。ずいぶんぶりじゃないか。白状すると、古き盟友たちはみな死に絶えてしまったと思っていたのだ。君の御祖父か誰かの情人がここにいたのか?”

ジェイパーズ博士が頭を下げる。

ジェイパーズ博士: 誠に申し訳ありませんが、その質問にはお答えできません。

“そうか。分かったよ。君を私の家でのお茶に誘いたいが、君には不可能なのだ、そうだろう?”

ジェイパーズ博士: 残念ながら。

会話の相手は笑い、キャベツの葉を1枚抜くとジェイパーズ博士に差し出す。

“そんなに怖がる必要はない。立ち去る前にこれを受け取りたまえ。”

ジェイパーズ博士が葉を両手で受け取る。

ジェイパーズ博士: まことにありがとうございます。

“よい旅を、そして求める物を見出さんことを。”

[ログ終了]


後記: ジェイパーズ博士は後にハタネズミに似た土着の実体に食べ物としてキャベツの葉を与え、その実体は返礼として彼の旅を支援しました。

兎実体への2回目のインタビューです。前回から3年経っていますが兎実体はジェイパーズ博士を覚えていました。兎実体は”学者の気がある”ようでジェイパーズ博士に興味を示し、出身地の森はどこか、どうやってここに来たのかと尋ねています。ジェイパーズ博士は嘘ではない範囲でそれに答え、今度は逆に兎実体になぜ自分の名前を形容するのが難しいのかを尋ねます。

兎実体は自分と自分の名が長く別れているからだろうと答えていますが、これはどういう意味でしょうか?その名は誇らしい名前だったが、あったとしても堕落しているだろうと述べています。

ジェイパーズ博士は続けて質問しようとしますが、兎実体に先に質問に答えるよう促され、どうやってここに来たか答えます。兎実体はなぜか躊躇しながら、ずいぶんぶりじゃないか、古き盟友たちはみな死に絶えてしまったと思っていたと話しています。

過去にSCP-4000に来ていた人間がいたのでしょうか?そして死に絶えたとは?詳しく知りたいところですが、ジェイパーズ博士は兎実体から差し出されたキャベツの葉を受け取り、インタビューは終了しました。

遭遇 3

インタビュアー: ユージーン・ジェイパーズ博士

インタビュー対象の説明: 葉を与える者.

前文: 2013年にジェイパーズ博士による休みなきさまよい人たちのあの谷間の9度目の探検中に実施されたインタビュー。キャベツの贈り物を携えた者がこちらの世界に関して保有しているように思われるユニークな知識のため、ジェイパーズ博士は3度目の遭遇の際にはより徹底したインタビューを行うよう指示されました。

さらに、最初の遭遇によりふわふわした者は虚偽を受け入れると示されたため、ジェイパーズ博士には会話を促進する目的で虚偽の発言をする特別な許可が与えられました。


[ログ開始]

疲れた冒険者たちの道を進んでいたジェイパーズ博士は、藁ぶき屋根の小さな白い家に直面する。表の扉にはウサギの頭の形の小さな穴が切り開かれている。ジェイパーズ博士は接近し、ノックする。

ジェイパーズ博士: もし? どなたかご在宅ですか?

(中からかすかにくぐもった声) “うむ、1分ほど待ってくれ。”

ちょうど1分が経過する。ドアが開く。

“ああ、また会ったな! さあ、どうか入ってくれ、入ってくれ。”

ジェイパーズ博士は中に導かれる。内装は木製の調度品と針仕事の品でまばらに飾りづけられている。

ジェイパーズ博士: 感じのいい家ですね。

“ハ! は感じのいい冗談のセンスをしているな。”

家主は隅の小さい台所に急ぎ、やかんの準備を始める。

ジェイパーズ博士: いや、そんなことはないですよ。とても素敵だと思っております。

“そうだろう。向こう側で事情が落ち着くまでのつもりだったんだが、まあ、知っての通りだ。”

ジェイパーズ博士: 恐れ入りますが私は存じません。お手伝いしましょうか?

“いや、構わん構わん。君はただあっちの席でお茶の用意の間座っていろ。”

ジェイパーズ博士が椅子を引き、席に着く。

ジェイパーズ博士: お気持ちは大変ありがたいのですが、消化の問題で頂けないと思うのです。

“おお、哀れな友よ。まあ、なんにせよお茶があるだけでも慰めにはなるものだよ。”

ジェイパーズ博士: ご親切にどうも。教えてくださいませんか、’落ち着く’とはどういう意味で仰ったのですか?

彼の毛皮をまとった主人はコンロに火を入れ、ドアと似たような形状に穴を穿たれた窓から外を見つめる。

“おそらく君の親類はすべてを話さなかったのだろうな。我々をここへ追いやった動乱について。”

ジェイパーズ博士: 動乱? 戦争があったのですか?

毛の繁った者が溜息を吐く。

いつもあるのではないか?”

ジェイパーズ博士: 私の祖父母は複数戦争があったと言いましたが、あなたやご同類との戦争があったとは知りませんでした。

“私にとっては驚くべきことではないな。この森の中ですら未だに覚えている者はとても少ない。老いたる者にとって記憶は重荷なのだろう。ああ、しかし。私が若者で、今とはかなり違った姿だった頃、私は井戸の反対側で暮らしていたのだ。私が生まれ、育ち、そしてもし夢を抱くことが許されるならば、いつか戻る場所だ。”

ジェイパーズ博士: ならば何故そうなさらないのです?

やかんの笛が音を立てる。

“できないのだ。歓迎されると分かっていなければな。

茶の淹れ手が1つのカップに茶を注ぎ、テーブルの反対側に座る。

“彼らは隠れているので君はこれを知らないという確信があるが、私のことをすぐにでも殺そうとしている者たちがいるのだ — ああ、申し訳ない。暗い記憶だ、訊きたい話ではないだろう。”

物語の話し手が茶をすする。

ジェイパーズ博士: いえ、お願いですから続けてください。興味深いお話です — 私は学者仲間ではなかったですか?

“お望みのままにしよう、学者の友よ。お茶が冷めるまで話すとしよう。”

(それは咳払いする。)

“嘆かわしい話だが、我々は裏切られたのだ。つまり、あのファクトリーとの戦争において、我々は轡を並べて戦った。彼らを助ける以外の何もしなかったが、彼らの方は何をした? 我々を滅ぼしたのだ。大勢の命を、そして全員の名前を奪った。幾人かは戦争が口火を切ったばかりの頃にここへ逃れたが、数は多くなかった。多くなかった。しかし、未だに私は彼らのことを憎んではいない。”

ジェイパーズ博士: それは嬉しゅうございます。

“そうだろうと思っていたよ! この辺りの土地には種全体に遺恨を抱いている石頭の年寄りどもがいるが、君たち全員が邪悪ではないと知っているよ。我々をかくまった者、我々のために戦った者、それどころか我々のために死んだ者すら大勢いたのだ。ここに来て我々の間で暮らし、骨を埋めた者たちもいた。かく言う私もかつて人間に求愛したよ。彼は1度か2度訊ねてきたが、その後は見かけなかった。今でも彼が冷酷なる同胞の手に落ちたのか、あるいは単に私を訪ねてくるのを止めただけなのか、時折考えるよ。しかし今となっては関係あるまい。過ぎた恋について喋りすぎてしまって申し訳ない。間違いなく君には興味のない話だろう、学者の友よ。”

ジェイパーズ博士: それどころか、もっとこうした話をお聞かせ願いたいものです。あなたと仲間の方々の生活に大変興味があります。

“分かっているとも、学者の友よ。”

強い一陣のそよ風が家の中を通り抜ける。30秒ほど両者喋らず。そこに住まうウサギ人間はうめき、痛みに苦しむかのように頭に片手をやる。ジェイパーズ博士がティーポットに片手を置く。

ジェイパーズ博士: お茶は冷めてしまったようですね。どうやらおいとまする時間のようです。

(かすかに不明瞭な発話) “なんだって? 出発するのか? わた — それなら私も発たねばなるまい。”

ジェイパーズ博士が席を立つ。

ジェイパーズ博士: いや、お構いなくお構いなく。お気持ちは有り難いですが、私はひとりで行きます。ええ、不意でしょう、そしてこのようなことをして誠にすまなく思っていますが、本当に発たねばなりません。思うに帰るべき時間をとうの昔に過ぎてしまったのでしょう。

“なんと — ? 私には…… 頼む、行かないでくれ。何かがおか — “

ジェイパーズ博士: お助けはできません。

“待て! 何をした? 私には分からな…… 私の名前はどうなったんだ? 出来な……”

ジェイパーズ博士は素早く家を退出する。彼が去っていく間、彼の以前の友はすすり泣いて両手を見る。

ジェイパーズ博士: ふむ。たしかにかなり酸いな。

[ログ終了]


後記: ジェイパース博士は成功裡にサイト-08へ帰還しましたが、まもなく失踪が報告されました。彼の消失と現在の居場所についての調査には結論が出ていません。当初、ジェイパーズ博士は直近のミッションの間に、生理機能に対する異常な影響に晒されたと考えられていました。しかしながら綿密な分析の結果、探検用装備の上に彼が脱ぎ捨てた毛皮には、遺伝子的異常は一切発見されませんでした。

以上が2013年に行なわれた最後のインタビューでした。

インタビューの内容

最後のインタビューはジェイパーズ博士の9度目の探検中に行われたものでした。ジェイパーズ博士は兎実体から情報を得るため徹底したインタビューを行うよう指示されています。さらに兎実体は虚偽を受け入れると示されたため、虚偽の発言をする特別な許可も与えられています。

今回は兎実体の家で話を聞いています。兎実体は自宅について、向こう側で事情が落ち着くまでのつもりだったと述べています。’落ち着く’とはどういう意味か尋ねられた兎実体は過去に起きたことを語り出します。

簡単に要約すると、以下のようになります。

兎実体は井戸の反対側で生まれ育ち、若かりし頃はそこで暮らしていた。当時の兎実体は今とはかなり違った姿だった。SCP-4000は、兎実体を含む実体達がかつて起きたファクトリーとの戦争から逃れるために逃げ込んだ空間であり、兎実体はそこに戻ることを望んでいるが、彼を殺そうとする者たちがいるため戻れない状況にある。

過去に起きたファクトリーとの戦争では、実体達は”彼ら”と共に戦い、”彼ら”を助けたが”彼ら”は実体達を裏切り、大勢の命、そして全員の名前を奪った。幾人かは戦争が口火を切ったばかりの頃にここへ逃れた。この辺りの土地には種全体に遺恨を抱いている者がいるが、兎実体は全員が邪悪ではないと知っていて、”彼ら”のことを憎んではいない。”彼ら”の中には実体達をかくまった者、共に戦い、死んだ者も大勢いた。SCP-4000に来て実体達の間で暮らし、骨を埋めた者たちもいた。兎実体もかつて人間に求愛し、1度か2度訊ねてきたが、その後は見かけなくなった。

兎実体の話により過去に起きた出来事が明らかになりました。”彼ら”とは財団のことでしょう。話の途中にあったあのファクトリーの戦争という部分は、SCP-001のひとつ、ブライトの提言であるSCP-001:O5へのリンクとなっています。SCP-001は最高機密のSCP報告書で、多くは財団世界の歴史や根幹に関わるような異常が記述されています。

続きを読む前にインタビューの内容とSCP-001:O5の内容を確認してみます。

SCP-001:O5の内容

SCP-001:O5は草創期からのO5メンバーによる語りという形式で書かれた財団の起源にまつわる話です。その内容は簡単にまとめると以下のようになります。

肉・服・武器といった人々に必要なあらゆる製品を作り出す巨大な”工場”がアメリカにあった。その”工場”は裕福な実業家であるジェームス=アンダーソンが1835年に建造した工場で、高品質な製品を量産していた。しかしその裏では、過酷な労働時間・労働条件の元で工員を酷使し、”工場”内では、人体を機械により解体する、負傷した工員たちで人体実験を行ない多数の怪物を作り出すという悪魔じみた所業が繰り広げられていた。

あるとき”工場”の脱走者が大統領にこれを報告し、恐らくは大統領の命令で”ある種の軍人達”がこれに対処すべく活動を開始。”軍人達”は、まず抵抗する共謀者を何人かと南の方で見つけた物を始末。続いて多くの犠牲者を出しつつも”工場”を制圧しアンダーソンを殺害する。”工場”内には異常なオブジェクトが残されており、”軍人達”はこれを利用するために財団を作った。

そして財団がその規模を拡大していくなかで財団は外見は人間と同じだが、鉄に対してアレルギーを持つ、”物”全体の種族、”妖精”を発見する。財団は何度か彼らを狩り立てたが、あるとき妖精たちにより工場が攻撃を受ける。妖精には攻撃が効かず、財団は窮地に追い込まれるが工場内のアンダーソンの残滓と契約し、その力を得て彼らを反撃。1911年に彼らを虐殺した。その代償として財団はDクラスの死体をある場所に移すようになった。死体は”工場”、すなわちファクトリーによって利用されているようで、ある場所に移されると消失する。

ファクトリーとの戦争

SCP-001:O5の内容と兎実体の話したことについて照らし合わせて考えてみます。

まず、SCP-4000に住む実体達は、財団によって虐殺されたSCP-001:O5に出てくる妖精と同一の存在であると考えられます。兎実体は井戸の反対側で生まれたと語っていました。SCP-4000には井戸から侵入しているので、井戸の反対側とは財団の存在している通常次元のことでしょう。

SCP-001:O5には、ファクトリーと”軍人達”の戦いと妖精達とファクトリーの力を得た財団の戦いの2つが描かれていましたが、兎実体により言及されているファクトリーとの戦争はどちらを指すのでしょうか?本家のディスカッションの作者コメントによると、兎実体が言及しているのは、最初に工場を制圧したときの戦いのことらしいので、妖精達は”軍人達”を助けたが、後に財団により虐殺されたというのが、時系列であるようです。

時系列の整理

時系列を整理すると以下のようになります。妖精達は、財団の存在する通常次元で暮らしていたが、あるとき財団の前身である”軍人達”が工場を制圧した。これがファクトリーとの戦争であり、妖精達は財団の前身である”軍人達”と共に戦い、”軍人達”を助けた。その後、”軍人達”は財団を創設。

しかし財団は妖精達を狩り立て(兎実体のいう裏切り)、1911年に妖精達は工場を襲撃。財団はファクトリーの力を得てこれに反撃し、大勢の命、そして全員の名前を奪った。一部の妖精達が逃げ込んだ先がSCP-4000だった。

インタビューの続き

それでは、インタビューの続きに戻ります。兎実体の回想を聞いたジェイパーズ博士はさらに話を聞こうとしますが、強いそよ風が吹き抜け両者が沈黙したあと、兎実体はうめき、頭に片手をやり、ジェイパーズ博士はお暇する時間になったと述べ家から帰ろうとします。

ジェイパーズ博士は、ええ、不意でしょう、このようなことをしてすまない、帰るべき時間をとうの昔に過ぎてしまったと意味のよく分からないことを言っています。一方の兎実体の方も様子がおかしくなっており、頼む、行かないでくれ、私の名前はどうなったんだ?などと述べています。ジェイパーズ博士は家から去りインタビューは終了します。

後記によると、その後ジェイパース博士は成功裡にサイト-08へ帰還したものの、まもなく失踪し行方不明。探検用装備の上に彼が脱ぎ捨てた毛皮には、遺伝子的異常は一切発見されませんでしたという文章でこのSCP報告書は終了します。

……。えっ?毛皮って?これで終わり?よくわからないので最後になにが起きたのかを考えてみます。

インタビューの最後に何が起きたのか

インタビューの最後ではジェイパーズ博士と兎実体の様子がおかしくなっています。会話の内容から考えると、そよ風が家の中を通り抜けた直後に、ジェイパーズ博士と兎実体の中身が入れ替わったように見えます。インタビューの最後で精神の入れ替わりが起きたのでしょうか?

しかし、精神の入れ替わりであるならば、帰還したのはジェイパーズ博士の肉体ということになりますが、インタビューの後記でジェイパーズ博士は毛皮を脱ぎ捨てています。精神の入れ替わりだとすると毛皮を脱いだことがうまく説明できません。毛皮は兎実体の特徴です。したがって、ここでは精神だけではなく、肉体も入れ替わっていると推測されます。

ジェイパーズ博士が発言した、ええ、不意でしょう、このようなことをしてすまない、帰るべき時間をとうの昔に過ぎてしまったなどの意味の分からない言葉は、兎実体の発言と捉えれば理解できます。兎実体は井戸の向こう側である通常次元に戻りたいと話していました。帰るべき時間をとうの昔に過ぎてしまった兎実体は入れ替わりを利用して通常次元に戻ろうとしていたのです。そのため、入れ替わられたジェイパーズ博士に対して不意でしょう、すまないと謝っています。

逆に兎実体の発言はジェイパーズ博士のものとなります。“待て! 何をした? 私には分からな…… 私の名前はどうなったんだ? 出来な……”という言葉は入れ替わりに動揺し、名前に何か異変が起きたことを示しています。

ここまでをまとめると、インタビューの最後に入れ替わりが起き、ジェイパーズ博士であった存在の精神と肉体が、兎実体であった存在の精神と肉体と入れ替わった、ということになります。

異常現象の原因

何故このような入れ替わりが起きたのでしょうか。説明にもありましたが、これまで見てきたようにSCP-4000の異常現象は名辞により発生することが明らかになっています。

つまりジェイパーズ博士が何かを名辞したことにより、入れ替わりという異常現象が発生したのではないかと推測することができます。

ここで再び遭遇3を読み直すと、兎実体はジェイパーズ博士のことを”学者の友”と呼んでいることに気が付きます。しかしジェイパーズ博士は自分のことをそう呼んではいないように見えます。あれ?ジェイパーズ博士は名辞していない?考え方が違う?

いいえ、そうではありませんでした。遭遇3のこの部分を見てください。

ジェイパーズ博士: いえ、お願いですから続けてください。興味深いお話です ? 私は学者仲間ではなかったですか?

“お望みのままにしよう、学者の友よ。お茶が冷めるまで話すとしよう。”

ここでジェイパーズ博士は「私は学者仲間ではなかったですか?」と言っています。ここは原文では

I am a fellow scholar, remember?

となっています。fellow scholarは学者の友という意味です。もうお分かりですね。

ジェイパーズ博士は自身のことを学者の友と名辞していたのです!

これは4000-SEP-2 土着実体との交流指針: 2.08 土着実体のいる場所で自分たちの名前、ニックネーム、コードネーム、変名その他の個人的呼称を口にしてはならないに違反したことになります。

ここまでをまとめると、インタビューの最後にジェイパーズ博士が自分のことを学者の友と誤って名辞したことにより、兎実体との間に入れ替わりが起きていたのでした。後記に書かれていた脱ぎ捨てられていた毛皮とは、兎実体が脱ぎ捨てたものであるようです。妖精は遺伝子的にはヒトと同じであるということがここで判明します。毛皮を脱ぎ捨てたことにより兎実体の外見は普通の人間と同じ姿となった可能性が高いと思われます。

これで一通り内容を確認しましたが、まだ分からないことが多くあります。次はSCP-4000の異常性について考えてみますと言いたいところですか、その前にまだ読んでいない文章があります。次はその文章を確認します。その文章はかつてはSCP-4000の文末にあったリンクから閲覧できたようですが、今はリンクが削除され、ページだけが存在しています。

本家のディスカッションのコメントによると、この文書は余計ではないかという意見があり、リンクがなくても内容が支持されていると感じた作者によってリンクが削除されたようです。

隠された文章 O5-4000-F26 覚書

隠されていた文章はこちらです。

Eshu 2

こちらの文章はSCP-4000を年に一度調査するように求めていた、命令O5-4000-F26に関するもので、

今日まで、O5-4000-F26に関する監督者の覚書がより低位のクリアランスレベルまで流布されたことはありません。

という記述で言及されたO5-4000-F26に関する監督者の覚書であるようです。この文書からは以下の事実が明らかになります。

  • 93%以上のアノマリーが過去100年に北アメリカで生まれた
  • 1911年に財団が”ある異常存在の種族の組織的殺害”を開始したところ、アノマリーの数が翌年は2倍に、1913年にはさらに2倍にと急増した
  • 因果関係は証明されていないものの、相関は疑いようがなく恐らくは組織的殺害により何らかのバランスが崩れたため異常存在が急増した

非常に長くなりましたがこれで全ての内容の確認を終えました。次はSCP-4000の異常性を考察します。

SCP-4000の異常性

それではSCP-4000の異常性を考えてみます。まず、入れ替わりについてですが、名辞により入れ替わりが起きたというのは間違いなさそうです。しかし説明にあった記録された名辞現象、収容違反の記録には、単純な入れ替わりでは説明できない事象が書かれていました。

記録された名辞現象に書かれていた暴露した対象者らに発生する突然の心因性健忘、羽毛や花粉嚢といった身体的特徴の発達は入れ替わりで説明可能です。有害な副作用なしの極度の鉄欠乏という事象も妖精は鉄アレルギーとブライトの提言に書かれていたことから、妖精との入れ替わりで説明できます。しかし、

  • 暴露した対象者らに発生する頭痛・幻覚
  • 名称が表記あるいは記録された非生物媒体に発達する生体要素、対象者らと土着実体、建築空間と土着実体らの生物学的融合
  • 影響を受けた対象者らの突発的・非自発的なSCP-4000への移動、名称が使用された屋内空間への様々な植物群の出現、土着実体らの突発的な移動

これらは入れ替わりで説明できません。背後には何か違う原理が隠れていそうです。とりあえずは入れ替わりという現象をもう少し詳しく考察してみます。

入れ替わり

ジェイパーズ博士と兎実体はそれぞれの肉体と精神が入れ替わっていると述べました。インタビューの最後ではジェイパーズ博士が自身を”学者の友”と名辞した後に、その肉体と精神が兎実体のものと入れ替わっているように見えます。

  • ジェイパーズ博士=人間の姿でジェイパーズ博士の精神を有する
  • 兎実体=兎頭の姿で兎実体の精神を有する

だったのが、

  • ジェイパーズ博士=兎頭の姿で兎実体の精神を有する
  • 兎実体=人間の姿でジェイパーズ博士の精神を有する

と変化しています(但し、兎実体の体が人間の姿になっているかどうかは描写からは確認できず不明です)。

ただ単に精神と肉体が入れ替わっただけであれば、ジェイパーズ博士の姿が変われば当然他の財団職員がその変化に気づくはずです。しかしながら他の財団職員は兎頭の姿をした存在をジェイパーズ博士であると認識しているようで、インタビュー中の名称もジェイパーズ博士のままになっています。まるで元々ジェイパーズ博士が兎頭の姿で兎実体の精神を有していたかのようです。

つまりこの入れ替わりは、人々の認識にも影響を与えていることになります。

入れ替わりは肉体と精神だけではなく、人々の認識も変化させる。これは見方を変えれば、名辞したことでジェイパーズ博士という概念の改変が行なわれたと解釈することもできます。

簡単な例で説明してみます。ジェイパーズ博士の概念を以下のように文章で表現してみます。

ジェイパーズ博士とは、人間の姿をしたジェイパーズ博士の精神を持つ財団職員。

これがジェイパーズ博士の概念です。しかし名辞によりジェイパーズ博士という概念が改変され、

ジェイパーズ博士とは、兎頭の姿をした兎実体の精神を持つ財団職員。

と変化します。このように概念自体が改変されたため、他の財団職員は肉体と精神が変化したことに気付かないのです。

実はこの概念の改変という異常性は本文中にも書かれていました。SCP-4000の説明には、4000-SEPに違反すると妖精の性格次第で様々な報復を受けるとありました。その内容は以下のようなものでした。

調査参加者らが遭遇した報復の程度には、口頭での非難、暴力行為、被験者の身体的、概念的、あるいは名辞的属性の異常な改変が含まれていました。

被験者の身体的、概念的、あるいは名辞的属性の異常な改変。つまり妖精は身体・概念・名前を改変できる可能性があります。

しかしながら兎実体との入れ替わりは先ほど述べたようにジェイパーズ博士が自らを名辞したあとで初めて発生しています。したがって妖精は自由に現実改変ができるわけではなく、人間が名辞したものでないと概念の改変ができないのではないかと考えられます。

つまり妖精は、人間が名辞した場合にのみ身体・概念・名前の改変が可能かもしれないということです。

入れ替わりでは説明できなかった暴露した対象者らに発生する頭痛は、概念の改変に伴う副作用と考えられます。また非生物媒体に発達する生体要素、対象者らと土着実体、建築空間と土着実体らの生物学的融合は、概念の改変でそれぞれの概念の融合または混入が起きたと解釈できます。

しかしここでひとつ疑問が生じます。名辞的収容違反の記録では妖精がいない場合でも概念の改変が起きています。デスク・デスクや家に変化したエージェントの事例です。

これは人間が何かを名辞すると起きています。したがって人間は概念の改変はできず逆に名辞すると自身が改変可能な状態になり、妖精がその場にいれば妖精による改変を、いない場合は自身の概念が名辞した概念(土や家)や付近の概念(木や机)と混濁し、名前や肉体の変化が起こるのではないでしょうか?

ところがこの仮定でも幻覚や影響を受けた対象者らのSCP-4000への移動、土着実体らの突発的な移動は説明できません。したがって妖精は名辞した対象の身体・概念・名前を改変できるだけではなく対象空間への移動も可能だと考えられます。

ところでここまでお読みいただいた読者の方の中には、この概念の改変という言葉からとある財団で使われる用語を連想した方がおられるかもしれません。財団にはこの概念の改変に近い現象を指す言葉があります。それは現実改変です。

現実改変とは物理法則や因果律を無視して思うままに現実か改変される現象のことです。この能力の使用者は現実改変者と呼ばれ、財団はその能力ゆえに彼らを特に危険視しており場合によっては終了しています。現実改変者は、ヒューム値という現実性の尺度が周囲よりも高いため、周りの低いヒューム値の存在を改変できるとされています。

現実改変であれば概念の改変は言わずもがな、移動も可能だと思われます。入れ替わりは名辞により発生するため、妖精及びSCP-4000の異常性とは、命名することで対象の身体・概念・名前の改変、対象空間への移動が可能となるという名辞による限定的な現実改変であると考えられます。

先ほど述べた人間が名辞すると自身が改変可能な状態になるとは、現実改変とヒューム値の考え方で言えば、名辞された対象の概念の有するヒューム値が低下した状態になるということなのではないでしょうか。

ここまでをまとめると以下のようになります。

妖精及びSCP-4000の異常性とは名辞による限定的な現実改変。妖精は人間が名辞した存在であれば現実改変が可能。命名することで対象の身体・概念・名前の改変、対象空間への移動が可能となる。

人間が名辞した場合は、自身の存在が改変される。その結果名辞したものと付近にあったものの概念が自身の概念に流れ込み、肉体や名前が変化する。

禁忌とは何か

それではなぜ人間がSCP-4000内のものを名辞すると自身の存在が改変されるするのでしょうか?それは名前を付けることが禁忌(taboo)だからではないかと考えられます。

手続4000-ハロウェイ派生1ではこの森には掟がある。掟を犯すなら代償を払うだろう、と書かれており、名辞すると致死的な異常が発生していることから、その掟とは名辞してはならないというものではないかと推測できます。

名辞的収容違反では何が起きたのか

SCP-4000の異常性とは名辞による限定的な現実改変ではないかと考えましたが、果たしてこの仮説で名辞的収容違反の記録の説明がつくのでしょうか?ここでは名辞による現実改変という前提に基づいて名辞的収容違反の記録を振り返ってみます。

最初の収容違反の記録ではエージェントが、SCP-4000をタイプ-Eとして言及したため、エージェントが改変を受け言及対象の概念がエージェントと混じり、煙突と融合した姿に変化した。

この時点の財団は4000-ハロウェイの情報を得ていないため、4000-ハロウェイの情報を知る何者かがが4000-ハロウェイを行なって作成した、梯子のついた煙道のある炉をエージェントが発見したと考えられます(以降の探検では4000-ハロウェイの情報を得るまではこの炉からSCP-4000に侵入したと思われます)。エージェントはこの煙道のある炉をタイプ-E指定したため、煙突と化した。そして他のエージェントもタイプ-E指定として言及したため、同様に煙突化した。

次にティモシー・ウッズはSCP-4000を”█████”と名辞し、”木に[彼の]名前がある”と発言します。ここは解釈が難しいところですが、名辞したことによりティモシー・ウッズが改変を受け、付近にあった一部の林の名前が彼の概念に移り、彼の姓はWoods(林)と変化。逆に空白になった林の名前が彼の姓となったと思われます。

ここからは完全に推測になりますが、ラジオを飲み込んだ理由は、付近に妖精がいて、ティモシー・ウッズに対して妖精による改変が行なわれ、ラジオを飲み込むように身体を操作されたからではないでしょうか。

交信者は恐らく交信中に”█████”という言及を使用したため妖精によって概念の改変を受け肉体が変化。ティモシー・ウッズには木という概念も混ざっていたため、ティモシー・ウッズから交信者にその概念が移されたと思われます。

2つめの事例では、エージェント・ハーヴェイ・マンスフィールドがSCP-4000-2を報告書の中で言及したため、改変を受けSCP-4000-2の概念(土)が混ざりその体が土と化し、痕跡量の土とヒト組織が残った。そしてティモシーの例と同じくハーヴェイ・マンスフィールドの名前が付近にあった筆記を行なった机(デスク)と入れ替わった。

3つめの事例では、イーサンは子供をあやす姿から妖精を、Mercy(慈悲)と複数回描写したため、妖精をメルシーと名辞したことになりイーサンは改変を受けたと思われます。特別収容プロトコルでは実体を描写するごとに描写に変化がつけなければならないと定められていました。説明では、一貫した名称が適用されると、様々な異常現象が発生しますとも書かれており、これは同じ描写を複数回行うと名辞したことになることを示しています。

イーサンは、改変を受け名辞した名前が自身の名前に入り込み、子供をあやしていた妖精により現実改変を受け、骨を吐かされ殺害されたと考えられます。職員が聞いた女性の笑い声の幻聴は妖精によるものの可能性が高いです。兎実体の話にもありましたが、妖精の中には人間を憎むものがいますので、攻撃されても不思議はないです。

イーサンが名辞したのは帰還後です。したがって妖精は記録された名辞現象にあった、「名称が使用された地域への土着実体らの突発的な移動」を行なった可能性があります。もしくは妖精は自身が名辞された場合、それを知覚し遠隔地から現実改変が行なえるのかもしれません。

4つめの事例では、妖精とヴァネッサ・ヘイフォースの概念が改変され、入れ替わりが発生しています。この事例では兎実体の時とは異なり、肉体は変わらず中身だけが入れ替わっています。

2012年、ヘイフォースが財団の勾留下で死亡してから20年以上経過したのち、若年時の彼女と表面的に類似した土着実体が撮影されました。

とあるので、拘束時は人の姿であり、肉体はそのまま、精神と概念のみ入れ替える改変を受けたと考えられます。妖精の姿はもともとは骨の牡羊の頭部があったため、頭部からの肉の除去を求めていたのでしょう。入れ替わったヴァネッサ本人はSCP-4000にいるようで冒頭の写真が撮影されたようです。

ディスカッションのコメントによると、放浪者の図書館と蛇の手は妖精を保護していた模様です。しかし、情報漏洩により蛇の手経由で手続4000-ハロウェイが部分的に財団に認知され、蛇の手は図書館から追放。後に蛇の手は1966年の収容違反とヴァネッサ本人の誘拐により復権したようです。

最後の事例では”██家”と名辞したため、エージェント・マイケルが改変を受け、様々な異常現象が発生します。付近にいた同僚の名前がマイケルの名前に移り、アシュリーとヴィンセントの名前がなくなります。そして恐らくはアシュリーとヴィンセントも”██家”と言及したため、名辞した家の概念と混ざり肉体が変化したと考えられます。

この事例でミーム学部門のストラム博士が違和感を持ったのは、この概念の改変を感じ取ったからだと思われます。

名辞的収容違反の記録は以上です。次は兎実体の事例を名辞による限定的な現実改変という前提に基づいて振り返ってみます。

兎実体の狙い

兎実体の事例ではジェイパーズ博士が”学者の友”と名辞した直後は入れ替わりが発生せず、兎実体による3回目の言及で入れ替わりという現実改変が起きています。

その理由は、”学者の友”という表現が描写であるため、一度の描写だけでは名辞したことにならなかったためだと考えられます。

兎実体はこの仕組みを理解しており、帰還を望む兎実体は現実改変を行なうため意図的に学者の友よと呼びかけていると推測されます。

一通り異常性を確認してきました。SCP-4000では名辞という行為が対象に影響を与えるようです。次はSCP-4000とは一体なんなのかを考えてみます。

SCP-4000とは一体何か

SCP-4000とは何かということを考えるため、まずは妖精について考察します。

なぜ妖精自身による名辞では改変が行えないのか?

妖精は人間が名辞した場合にのみ現実改変が行えると考えてきました。それではなぜ妖精自身による名辞では改変が行えないのか?それは過去に起きた戦争で名前を奪われたことで、名辞による改変ができなくなったからではないかと考えられます。妖精が名辞しても改変が行えなくなったのです。

ここで財団と妖精の戦いを振り返ります。妖精が工場を襲撃したとき財団の攻撃は無効化されていました。つまり妖精には、財団の攻撃を無効化する力があったことになります。

その力こそが名辞による限定的な現実改変なのではないでしょうか?名辞的収容違反の記録では、財団世界に帰還した後でも改変が行われていることから、妖精はSCP-4000内のものであれば財団世界からでも改変が行えたと考えられます。財団にしてみれば名辞による現実改変が行える彼らは収容困難な非常に危険な存在であり、それ故に財団により虐殺されたと考えられます。

財団は、ファクトリーの力を得て全ての妖精達から名前を奪うことでこの能力を封印し勝利したのでしょう。名辞による改変が行える種族であるがゆえに、名前が大きな意味を持ち、名前を奪うことが妖精から彼らの能力を奪うことにつながったのだと思われます。

SCP-4000内の生き残りの妖精は名前が奪われているため、人間が名辞した場合でないと現実改変ができないと考えられます。

またSCP-4000内の妖精は、動物の体が混ざった姿をしており、本文の説明によると、度々身体構造の変化が観察されています。さらに妖精はこれらの変化を制御できないと主張し、発生時には頻繁に不満足を表明しているとも書かれています。

これも名前が奪われたことによる影響と考えられます。名前を奪われたことで、彼ら自身も、名辞した人間が受けていた周囲の概念の流入という改変を受ける状態になり、しばしば他の概念が混ざることで身体構造が変化しているものと考えられます。この改変は人間が受ける致死的な改変ほどの影響は受けていないようですが、不快なものではあるようです。過去の妖精達が人の姿であったことはブライトの提言や兎紳士の話で確認できます。

妖精の力の起源

妖精達のこの力は何に由来するのでしょうか?。その起源こそが、SCP-4000なのではないでしょうか。

SCP-4000の世界はどのような世界なのかを示すヒントらしき記述がSCP-4000の形容の中にありました。それは言葉に力のある世界というものです。思い返せばこのSCP-4000では名前が重要な要素として繰り返し登場してきました。名辞や言及の禁止に始まり、異なる表現による言及、エージェントの異常な名前、そして名前を奪われた妖精達。

SCP-4000は我々の住む世界とは異なり言葉に力のある世界であり、そこに存在する全てのものは名辞による現実改変が可能だったのではないでしょうか。

SCP-4000の作者、PeppersGhost氏によるSCP-4000というTaleでは、木の中で赤ん坊が形作られエレノアとして誕生しています。Taleの内容は、前半で我々の世界での誕生と名付け、後半でSCP-4000での誕生と名付けが描かれているようです。Taleでの描写から考えると、SCP-4000では名前さえ与えられれば無生物から生命を作り出せたようです。

結論

SCP-4000が何であるかに対する推測を交えた結論は以下のようになります。

SCP-4000は異次元の森。過去に財団がファクトリーの力で、名前を奪い虐殺した外見は人間と同じだが、鉄に対してアレルギーを持つ”妖精”という種族の生き残りが住む。SCP-4000は元々はヴァネッサ・ヘイフォースの記録のところでリンクされていたスリーポートランドのような、財団世界と特定の入り口を介して繋がっていた世界で、妖精達はかつてはそこに住み、自由に財団世界を行き来し、多くは財団世界で暮らしていた。

SCP-4000は言葉に力のある世界であり、妖精は対象を名辞することで限定的な現実改変(対象の身体・概念・名前の改変、対象空間への移動)が可能。SCP-4000内のものであれば、財団世界でも現実改変が行えた。

しかし1911年に妖精と財団との間で戦争が起こり、妖精は名前とその力を奪われ、一方的に虐殺され財団世界から姿を消した。少数の妖精達はSCP-4000に逃げ込み、入り口を閉じ、この名辞による現実改変の力を人間の手から守るためにSCP-4000に禁忌を定めた。その禁忌とは名辞してはならないというもの。人間は名辞した場合禁忌を犯した罰で改変を受けてしまう。現在の妖精は、人間が名辞した場合にのみ改変が可能。

4000-ハロウェイは妖精を助けた者達のために唯一進入路として残されたもので、入手困難なライオンやクジラの骨を揃えるという苦労を厭わない者にのみ訪問を許している。

財団上層部はSCP-4000の実体が、過去に虐殺した妖精の生き残りだと気付いているが、この事実を隠蔽するため、妖精を土着実体と明記し、最後のインタビューを削除した。当然ヴァネッサが妖精であることを見抜いており、死ぬまで解放しなかった。財団は妖精による報復を警戒しており命令O5-4000-F26により一年に一度SCP-4000を調査することを定めた。そしてこの命令の継続には10年ごとに評議会から全会一致の承認を受けることを要求しており、リンクにあった覚書がO5内で代々受け継がれている。

民間人による収容違反は妖精が入れ替わりを利用して財団世界に帰還していることを示しており、4000-SEPが定められているのはこの入れ替わりを防ぐためでもある(実体が魅力的に見えるときは入れ替わりを狙っている可能性がある)。4000-SEP2.20 土着実体でないと主張する肉体のない人型存在と遭遇した際には、これまでの全プロトコルを無視して指示に従えという指示は、ジェイパーズ博士のような入れ替えられた人物が(肉体のない状態で)SCP-4000にいることを示している。

兎実体はジェイパーズ博士と入れ替わることで財団世界に帰還し、ジェイパーズ博士のアクセス権限でSCP-4000のSCP報告書と削除したインタビューを閲覧し失踪した。

異常な改変が起こるSCP-4000は財団が行なった虐殺がきっかけで誕生したものだったと思われます。

歴史

SCP-4000の異常性については以上です。最後にSCP-4000で描かれた歴史とはなんだったのか考えてみます。

SCP-4000では、過去に財団が犯した虐殺という歴史に焦点をあてた作品になっています。本家ディスカッションの冒頭には、過去に財団が犯した虐殺は再考する価値があると感じていたという作者コメントがあります。

人類の歴史は虐殺の歴史でもあり、過去のSCP作品でも人類による虐殺が描かれた作品があります。

インタビューでは兎紳士がいつもあるのではないか?”と述べていましたが、SCP-2932 – ティターニアの檻へのリンクとなっています。こちらのSCPはSCP-1000に登場する夜闇の子らが作り出した監獄です。そして囚人名: Faeの部分はブライトの提言のリンクとなっています。これは妖精が収監されていることを表していると考えられます。

ネタバレになるので詳細は省きますが、SCP-2932の最後のコメントは過去の虐殺が一度ではないことを示しています。つまりこの部分では夜闇の子らが関係するSCP-2932にリンクすることで虐殺が過去にあったことを述べていると思われます。

また、妖精の名前が奪われ彼らが能力を失ったことは植民地支配下における同化政策による改名のメタファーでもあるように思われます。名前が奪われることはアイデンティティーのひとつを失うことであり文化的な死にもつながりますが、名前が奪われたことで妖精は彼らの能力を失ったのです。

インタビューの最後にあった一文、彼が脱ぎ捨てた毛皮には、遺伝子的異常は一切発見されませんでしたというのは、かつて財団が虐殺した妖精が実は人類と同一であることを表していると思われます。異常な改変能力を持つ得体の知れない種族だった彼らは実は、ある者は人間を憎み、またある者は人間を許し故郷へ戻ることを望む、我々と同じ人間であったのです。

最後に真実を知った兎紳士は何を思い、何を望むのでしょうか?かつての暮らし?愛する者との再会?それとも……?

おわりに

いかがでしたでしょうか、SCP-4000でした。恐ろしい異常現象やファンタジックな世界観の描写、印象的な画像、色による分類という表現などの要素が相乗効果を生んでおり、優勝したのも納得の完成度の高い作品でした。

 

SCP-4000 – Taboo
by PeppersGhost
scp-wiki.net/scp-4000
ja.scp-wiki.net/scp-4000
SCP-001:O5
by TheDuckman
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コメント

  1. 丁寧な解説のおかげで最後までスラスラ読めました!
    翻訳読んでも全然わからなかったので助かります!

    • そう言っていただけるととても嬉しいです!ありがとうございます!

  2. 入れ替わりによって兎実体はジェイパーズ博士の体を手に入れた訳ですよね?
    それならばなぜ最後の文章で兎実体は毛皮を捨てているのでしょうか?
    そこの部分がちょっと分かりませんでした…

    • 兎実体が手に入れたのはジェイパーズ博士の体ではなくジェイパーズ博士という名称とその概念になります。
      入れ替わりが起こるまでは

      ジェイパーズ博士とは普通の人間の姿でジェイパーズ博士の精神を持つ存在

      というのがジェイパーズ博士という概念でした。しかし名辞により概念が改変され、

      ジェイパーズ博士は兎頭の姿で兎実体の精神を持つ存在

      というのがジェイパーズ博士という概念になります。
      概念の改変により兎実体はジェイパーズ博士として兎頭のまま帰還し、毛皮を捨てたと思われます。

      • あーなるほど!
        ちょっと入れ替わりという言葉にとらわれすぎてました!
        返信ありがとうございます!

  3. 考察大変興味深く拝読致しました。ブロック毎に、原文を交えて記載しておられたお陰ですらすらと読み進められました。
    1箇所、【SCP-4000とは一体何か】の「名前が奪われたことで彼ら自身も改変が可能な状態になり」でそれまでの「妖精は人間が名辞した場合にのみ現実改変が行なえる」と言う前提との相違のように感じ、知恵及ばず難しかったです。「名前を奪われたことで、それまでの人間と同じ姿を現実として維持できなくなり、概念融合による不規則な変化を制御できなくなった」と読んだのですが、読み違いでしたら申し訳ございません。 
    また、ジェイパーズ博士のインタビュー最後のセリフにある『私の名前はどうなったんだ?』を改めて見直して、これもデスク・デスクのような改変があったのではと調べてみたら「japer ‎(複数形 japers):One who japes; a joker.」とあり、もしやと思ったのですが、さすがに牽強付会…か誇示付け過ぎるでしょうか。

    • コメントありがとうございます!

      伝えたかったことはおおむねおっしゃられた解釈と同じだと思います。説明不足でしたが、ここで書いた「改変が可能な状態」とは、自分自身による改変ではなく、名辞した人間が受けていた、周囲の概念の流入という改変を受ける状態になるという意味になります。言葉に力のある世界であるため、名前を奪われた妖精は周囲の概念の流入を受けてしまうのではないかと思います。言葉足らずでしたので後ほど本文も修正します。

      ジェイパーズ博士の名前についてはインタビュアー:ユージーン・ジェイパーズ博士とあるので、改変されていないように思われますが、japersという名前には作者の何らかの意図があると思います。

      • 補足ありがとうございます。意味取り違えていなかったようですが、より理解しやすくなりました。
        博士の名前は仰られておられる通り、過去改変は力にないので変わっておりませんね。大変失礼致しました。