SCP財団には、恐ろしい話が数多くありますが、悲しい背景を持つSCPも存在します。過去の記事では、
http://scpnote.com/archives/6190400.html
http://scpnote.com/archives/5739866.html
を紹介して来ましたが、今回はSCP-706 – 完璧な磁器人形を紹介します。
SCP-706とは
SCP-706は関節部を除き、表皮が全て磁器で出来ている思春期の欧州系アメリカ人の女性。表皮が全て磁器で出来ていることと平熱がおよそ38.5℃と異常に高いこと以外は生理学的に正常。オブジェクトクラスはEuclid。
███████ ████████という名前を持ち、年齢は最初に収容した際の地元の記録によれば12歳。記録によるとSCP-706はずっと家庭内教育を受けており、隣人によると屋外で目撃されることはほとんどなかった模様。
SCP-706の皮膚は非常に脆く、衝撃や過度の運動でヒビが入り、強い痛みを感じる。そのため、特別収容プロトコルでは、壁にパッドを入れ可能な限り尖った箇所を排した人型収容室で収容することとなっている。
SCP-706は適切な原料を摂取した場合、通常の皮膚と同様に皮層を再生することができる。カオリン(陶磁器の原料となる、カオリナイト – Wikipediaを含む粘土)のような調合されていない材料を許容し、好む。硬化した磁器の摂取は、組織に損害が及ぶ。
SCP-706は粘土を食べることで皮膚を治すことができるようです。
指示がない限り、SCP-706は強迫的に外観のメンテナンスをし、通常は鏡で自身を見て、使用可能な化粧やペイントをつけたり、取り除いたりして見た目を調整する。外観のメンテナンスに必要な材料が与えられなかったり、自身の姿を確認することを否定されるとSCP-706は苦しみ非協力的になる。
SCP-706はテキサス州████郊外にある住宅が激しい家族喧嘩をしていると警察に通報があった後に回収された。SCP-706は、ほとんどが燃やされ破壊された数ダースの磁器人形と、複数の陶磁器セットの残骸に囲まれた住宅の奥の部屋で発見された。執行官にクラスA記憶処理を施し、地元メディアに対して架空の話を与えた。
特別収容プロトコル
特別収容プロトコルは以下のようになっている。SCP-706は人型収容サイト-06-3にある、壁にパッドを入れ、可能な限り尖った箇所を排した人型収容室で収容する。SCP-706は定期的な食事に加え、毎日1.2kgのカオリンと陶器用の上塗りを与えることとなっている。
文書706-Eに記載のバニティ・ミラーや余った衣類などの非標準アイテムと陶器用のエナメル絵の具のついた絵筆を刺激または褒美としてSCP-706に提供することが許されていたが、現在は、実験時を除いて自殺観察手順下に置かれており、いつでも自殺の制止ができるようになっている。SCP-706は通知があるまで毎日治療会合に出席することになっている。
音声記録
補遺706-1によると、以下の音声記録が、████████宅で発見された壊れたデジタルカムコーダから得られている。
(簡潔さのために無関係な内容は編集しています。)
████████夫人: よし、いい子ね、もう一度、できる?
(打音、おそらくはドアの音)
████████夫君: (不明瞭)お前の喚き声にはうんざりだ。お前たち静かにできないのか?
SCP-706: パパ?
████████夫人: あなた?
████████夫君: (不明瞭)お前とそのガラクタ姫の騒音にはもう―
████████夫人: あなた、飲み過ぎじゃ―
SCP-706: パパ、おねがいやめて―
████████夫君: (不明瞭) ―に女共の戯言なんぞクソ食らえだ。
████████夫人: あなた、お願い―
(争いでカメラは倒され、これ以上映像は録画されていません)
████████夫人: ねえ、これ以上どうして欲しいの?(すすり泣き)もう私には―(口論)
SCP-706: ママ、パパ、やめて!
████████夫君: (不明瞭)ん、どうした、あ?止めなかったら、どうするつもりだ?
████████夫人: (すすり泣き)お願い…お願い止めて…
████████夫君: (不明瞭)止めなかったら銃でも撃つ気か、どうなんだ?
████████夫人: (すすり泣き)お願い、出てって!
████████夫君: (不明瞭)ほら!引き金を引けよ!
(争いの音)(2発の銃声が聞こえる)
SCP-706: (叫びながら)[判別不明]
(1発の銃声)
SCP-706: (更に叫びながら、泣き続ける)(記録終了)
状況としては、母親がSCP-706に何かさせているところに、酔った父親がやって来て、暴れ始めたようです。母親は銃を持ち出したようで、それを見た父親は引き金を引けと挑発。結果、父親は母親に撃たれ、母親は自分を撃って自殺した――、というところでしょうか。
インタビュー
補遺706-2で、最初の収容直後、現在の取扱方以前に実施されたインタビューを見ることができる。
質問者: █████████博士回答者: SCP-706日付: ██/██/██メモ: インタビューはSCP-706の収容室内で実施されました。SCP-706は席につくとバニティ・ミラーを見ながら髪にブラシをかけました。複写:█████████博士: どうしてこんなことが起きたの?SCP-706: わたしがお人形さんになりたかったから。█████████博士: どうして?SCP-706: ママはお人形さんをもってたの。たくさんのお人形さん、古いお人形さん。█████████博士: お人形さんについて教えてくれるかな。SCP-706: ガラスのケースの中に入ってて。わたしが小さいときに見せてくれると、ママにとってお人形さんがどれだけ大事か話してくれたの。ママはお人形さんたちをとても愛していたんだ。█████████博士: だけどガラスケースの中には閉じ込められたくないんだよね?どうしてお人形さんになりたかったのかな?SCP-706: ママはお人形さんを大事にしてたから。ママはお人形さんたちを大事に大事にしてたから、パパはママをあいしてたから、だからわたしがお人形さんになったらママはわたしをあいしてくれるかなって…SCP-706: …お人形さんは泣かないよね…お人形さんはお食事も、おふろも、お世話もいらない…だたすわってるだけで、きれいでかんぺきで…SCP-706: …わたしもかんぺきできれいだったら、そしたらなにもかも良かったのに…わたしがお人形さんみたいだったらパパもママもけんかしないで、ふつうの家族のように楽しく…SCP-706: …お家に帰りたい…ママ…おねがい、お家に帰らせて…(インタビュー終了)
SCP-706は母親から愛されたいと願っていたようです。母親が沢山の古い人形をガラスケースに入れ、大事にしていたことから、人形になりたいと思い、このような体になったようです。どうやら母親は娘にあまり関心がなかったようですね……。
研究員のメモ
補遺706-3では研究員によるメモを見ることができる。
SCP-706は収容以来職員に対して孤立し反応も鈍くなっている。彼女は故意に皮膚のひびを作り、好ましくない顔の部位を取り除こうとするため、彼女の健康に深刻な影響を与えている。この自滅的な行動を踏まえた収容手順の改定案がサイト管理官に提出され、現在審査中である。█████████博士
収容後、精神状態が悪化し、SCP-706は自傷行為をするようになったようです。自殺を危惧し、特別収容プロトコルには、自殺防止のための措置が盛り込まれるようになりました。
愛して欲しかった両親にはもう会えず、独り財団に収容され、精神的に不安定になっている……。切なく悲しいSCPです……。
おわりに
SCP-706でした。最後までお読み頂きありがとうございました!
ちなみにSCP-706 – The SCP Foundation Classicによると、SCP-706の画像は、初期はランドセルを背負った人形の少女だったようです。
翻訳者・作成年不明
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