カクタスバースの世界へ! SCP-4840 – 魔性のランスロットと空中都市アウダパウパドポリス

SCP紹介&内容整理
この記事は約47分で読めます。

SCP財団で数多くの高評価作品を投稿している著者の一人、djkaktus氏。その作品のいくつかは互いに繋がっており、djkaktus氏独自の財団世界を構築しています。これらはカクタスバース(kaktusverse)と呼ばれ、大きな物語を形成しています。

つい最近まで開催されていた6000コンテストでもdjkaktus氏はカクタスバースの作品、SCP-6666 – 魔性のヘクトールと恐怖のティターニアを投稿して2位の結果を得ました。

今回はカクタスバースを知る上で重要なSCP作品、SCP-4840 – 魔性のランスロットと空中都市アウダパウパドポリスを紹介します。

※クロスリンク記事、DJ・カクタスの提言Ⅲや未翻訳記事である、SCP-4812 – Wrath、SCP-4008 – Wormwoodの内容にも大きなネタバレではないと思いますが、触れています。ネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

※2021/08/18追記:SCP-4812 – 憤怒は翻訳されました。サリュスからサルースに変更されていたので修正しました。

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SCP-4840 – 魔性のランスロットと空中都市アウダパウパドポリス

SCP-4840は、ロシア北極圏にある不毛地帯の約7.8km上空に浮遊している、巨大な古代都市遺跡です。アノマリー分類システム(ACS)による区分は、クリアランスレベル(機密度合い)4、収容クラス(オブジェクトクラスに相当)Keter、撹乱クラス(世界へ与える影響度合い)はEkhi(5段階中の上から2つめ)、リスククラス(人への影響度合い)はNotice(5段階中最低)。

機密性の高いオブジェクトとなっています。

特別収容プロトコル

特別収容プロトコルによるとSCP-4840はロシア北極圏の約120km2の領域内部に収まるように気象条件とSCP-4840の推進メカニズムを監視しています。

財団は現地の気象現象を操作し厚い雲がSCP-4840を取り巻くようにしています。操作が不可能である場合や雲の覆いが晴れてSCP-4840が視認できる状態になった場合は、SCP-4840に搭載されている雲生成装置を起動し、自然な雲の形成に相応しい天候へと変化させています。

天候操作でSCP-4840の隠蔽を謀っていますね。

現地の民間人がSCP-4840を目撃していないかを監視し、SCP-4840を見たと主張する人物は拘留され、処理のためにサイト-210へ移送されます。

収容チームはSCP-4840-B実体の活動の兆候を監視します。

SCP-4840-Aから収集された情報と、他の異常現象との関連性のため、この文書は制限付きレベル4/4840機密情報に指定されます。この文書へのアクセスはSCP-2254、SCP-████、SCP-████、SCP-4812割当の上級スタッフに限定されます。要注意団体“インサージェンシー・リボーンの構成員による干渉の可能性があるため、この文書には許可された端末からのみアクセスできます。

インサージェンシー・リボーンとは、財団から離反した要注意団体であるカオス・インサージェンシーと名前が似ていますが、どういった要注意団体なのでしょうか?これはおそらくカオス・インサージェンシーのエージェントが主人公であるDJ・カクタスの提言Ⅲ – 終焉の在り方と関連性があるように思われます。

説明

巨大な古代都市遺跡であるSCP-4840の建築様式は、都市自体があらゆる既知文明以前のものであるように思われる一方で、高度な技術と材質を使用して構築されたことを示唆します。構成要素の一部(ガス灯など)は建造から数百年、あるいは数千年経過しなければ世界に存在しなかったはずの物です。

高度な技術を持つ謎の超古代文明といった感じです。

SCP-4840-はその高度にも拘らず、都市の境界内にいる人物は平均海面と同じような気温と酸素濃度を経験します。SCP-4840はかつて10万人以上の居住者を抱えていたと推定されていますが、現在この遺跡には2体の実体、SCP-4840-ASCP-4840-Bのみが存在しています。

SCP-4840-Aは高齢の人間男性で、民族的帰属は不明確ながら遺伝子検査で先祖は恐らくメソポタミア系であると判明しています。

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SCP-4840-A

しかしながらSCP-4840-Aの遺伝マーカーには自分以前の先祖との繋がりが存在せず、SCP-4840-Aが地球上に存在する外来生命体であるか、地球上の知的人類種の先駆けとなった遺伝物質を有することを示唆しています。

SCP-4840-Aは英語、北京官話、ロシア語、フランス語、スペイン語など数多くの言語を話し、財団によるインタビューに応じています。インタビューでは、この実体はSCP-4840の成り立ちや自身の生い立ち、その歴史について語っています。

SCP-4840唯一の住人です。後述するインタビューによると彼は最初の人類であるようです。

SCP-4840-BSCP-4840上に存在するヒト型の巨大実体で、SCP-4840に存在する“日没の寺院”の廃墟の上に身動きせず横たわっています。

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SCP-4840-B

この実体は身長およそ12.8mで、赤外線レンズを通してのみ視認可能です。SCP-4840-Bは活動の兆候を示さず、SCP-4840-Aからは“死んでいる”と説明されていますが、一定量の変化しない熱を放出し続けています。

SCP-4840-Bは6本の脚と著しく膨張した6本の腕が付いたヒト型の胴体を有しており、それぞれの腕の先端は巨大な鉄球が接続された鎖付きの雑な留め金に嵌め込まれています。SCP-4840-BにはSCP-2254に見られるものと一致するマーキングもあります。

後述するインタビューによるとSCP-4840-Bは魔性のランスロットと呼ばれる存在であるようです。

SCP-4840には、遥か昔に断絶した人間の言語であると確認されたマーキングがあります。この死語は地球上の他のどの古代集落からも発見されておらず、この言語は古代ギリシャ語やその他の地中海言語の先駆けとなったと推測されています。マーキングは財団の言語学者たちによって解読され、SCP-4840がアウダパウパドポリスAudapaupadopolis、大まかに翻訳すると“最初の父の都”と呼称されていたことが判明しています。

唯一存命のSCP-4840居住者であるSCP-4840-Aから収集された情報によると、SCP-4840の住民たちは最初にして唯一の指導者を失った後、長期間にわたって放置されました。自然の要因によるものか、何らかの異常な影響かは不明ですが、SCP-4840はその後、人類の社会意識から完全に消滅しました。

この辺りの記述もインタビューで理由が判明します。

発見の経緯

SCP-4840は1933年9月、ロンドンからオスロに向けて飛行していたイギリス人飛行士のジョージ・ダンセン卿によって最初に発見され、北海の上空を飛行する都市の報告が公表されました。財団とイギリス王立公衆認識院は情報操作を行い、ダンセンが酩酊して高高度で幻覚を見たのだと主張しました。

その後、フランシス・パイク隊長率いる財団研究員の一団が熱気球で接近してSCP-4840に到着。研究員たちはSCP-4840-Aと遭遇しました。パイクは自らの探検日誌にこの出来事を記録しました。

都市全体は高い丘の上に築かれたローマのようで、『広く壮麗な遊歩道を下り、この場所の絢爛さを目の当たりにした。確かに放棄されてはいるが、建築の素晴らしさは私が一生の中で見てきたどんな都市とも比べようがない。』とパイクは書いています。

パイクたちは恐らく七十歳以上である一人の男性に出会います。彼はパイクたち財団研究員を迎え入れ、この都市の管理人であると自己紹介し、住まいを見せました。彼は都市の名前を教えます。その発音は“odd-uh-paw-puh-daw-poh-lis”でした。

アウダパウパドポリスですね。

案内の途中、オレンジと青に漆塗りされた石造りの寺院が廃墟になっており、ここで何が起きたのかと老人に訊き、彼はいずれ答えると返しています。

彼らは街の中心にある大広間へと進み、そこで食事をふるまいます。料理は素朴だが心の籠もったもので、老人は訪問に感謝の意を示しました。パイクたちが財団について簡潔に説明すると、彼は既に暫く前から知っていると語り、安全に保たなければならない“古き秘密”がこの都市にあると言いました。彼は長らく使われていない部屋を見せ、そこでパイクたちが休めるようにしました。

この探検日誌に書かれている、財団研究員を迎え入れた都市の管理人を名乗る人物がSCP-4840-Aと指定されています。

説明によるとSCP-4840-AはSCP-4840の全般的な動きを制御でき、さらに、SCP-4840-Aはある程度限定的ながら全知能力を持つらしく、そうでもなければ知り得ないほど遠隔地で起きた出来事を描写することが可能です。

SCP-4840-AはSCP-4840の大広間の下にある封印された部屋に入室できる唯一の人物でもあり、SCP-4840-Aはこの部屋を“古き図書館”と呼んでいます。

その発見から数年間、SCP-4840-Aは質問に対して控えめな答えを返しており、しばしば周囲にいる銃で武装した兵士を警戒し疑念を抱く様子を見せていましたが、1949年9月、財団研究員のヴァル・オストラヴィッチ博士によるインタビューに応じました。

補遺4840.3: インタビュー

インタビューによると、SCP-4840-Aは何十億年以上も遙かな昔、この世界が誕生した原初の時代から存在しているようです。SCP-4840-Aが語った内容を時系列に沿って編集し、まとめると以下のようになります。

唯一の真の神が、2柱存在した。それはIS(然り)とIS NOT(然るに非ず)。この2柱の神は実体や発想ではなく、真実であり、この2つはお互いが無ければ存在できない。IS NOTはISの影でISを包括し、世界を超えて先へと延びる長大な虚無だ。

それは共に集えば、真の意味での知識としてそこに在る、それまでに存在したものも存在しなかったものも、全てが一つになっている知識だった。これらの真実が初めて認識された時、この世界は存在し始めた。
世界の始まりに関する話です。IS(然り)とIS NOT(然るに非ず)という神が現れて世界が生まれたと語られています。
その後、西の奇妙な民最初にこの宇宙で目を開いた。彼らはISの最後の煌めく破片から作られ、他の誰よりも創造の意思と調和していた。彼らは森の中に住み、最初の歌を書いた。それは離れた世界にいても、彼らの歌が聞こえた。

西の奇妙な民は禁忌(SCP-4000)にリンクしています。禁忌に登場する妖精たちがその正体だと思われます。妖精たちはカクタスバースの歴史に深く関わっています。

その次に現れた者がSCP-4840-Aたちだった。生まれ落ちた世界を自分の目で見る最初の人間たち。まだ幼い時期は、狼、熊、豚、ライオンといった世界の母親たちが面倒を見た。彼らは成長するとともに学び、自分たちに名を付けた。

SCP-4840-Aによると妖精たちの後にSCP-4840-Aを含む人間たちが現れたそうです。

果てしない神秘の世界で、あの頃のSCP-4840-Aたちはごく僅かだった。創造の霞が長い間この惑星を厚く覆っていたが、その霞の中でSCP-4840-Aたちは偉大な真実を多く学んだ。何百万年も勉強し、観察し、学んだ。SCP-4840-Aたちに何ができるかを学んだとき、SCP-4840-Aたちはこの場所に来て都を建てた。アウダパウパドポリスの都。最初の都。ここで、まさにこの場所でISが存在し始めた。
真の神であるISが存在し始めた場所に人間たちの最初の都市、アウダパウパドポリスが建てられたそうです。
SCP-4840-Aたちは鉄の神が空に燃え盛る星を配し、肉の神が血潮の最初の一滴を大地に落として生命を吹き込むのを見た。
鉄の神と肉の神が出てきました。この鉄の神とは壊れた神の教会が信奉するメカーネであり、肉の神はサーキック・カルトにおける神格ヤルダバオートではないかと思われます。アウダパウパドポリスの日の出の寺院西の壁には 歯車と鋼鉄で出来た物、血と肉で出来た物があります。
とその闇の弟によって何が然るべきであり何がそうでないかの基礎が築かれた当時、SCP-4840-Aは少年で、世界が変遷し始めた時に最初の日の出を見た。

ここでは蛇が放浪者の図書館にクロスリンクされており、闇の弟はSCP-3000にクロスリンクされています。SCP-3000は巨大な水棲のドクウツボに非常によく似た実体で、財団はSCP-3000から得られるY-909化合物から記憶処理剤が作られています。

『何が然るべきであり何がそうでないか』は先ほどのIS(然り)とIS NOT(然るに非ず)のことだと思われます。その基礎が築かれた当時はSCP-4840-Aは少年だったそうです。

しかし、この世界が存在し始めたきっかけであるはずのISとIS NOTの基礎が、世界が既に存在するこの時点で作られたとしたら、順序が逆になってしまいます。これは、世界の初めに混ざり合った状態で存在していたISとIS NOTが、蛇と闇の弟によって二つに分かたれたということかもしれません。

DJ・カクタスの提言Ⅲ チャプターⅣ THE SPEAR AND THE SERPENTでは、放浪者の図書館が主な舞台で、作中に登場する放浪者の図書館の司書によると、放浪者の図書館の土台である巨大な石柱は遙かな昔に大蛇が建てたもので、土台から上にはすべての知識が存在し、土台から下には生死の外の空白、すなわち虚無があるとされています。土台はそう在るものと在らざるものを隔てるものであるそうです。

大蛇は現実の普遍的な一面、『情報』の化身であり、『アイデアが存在し得る、あるいは全てには各々に固有の真実が在るというアイデア』であるとされています。土台から下の空間の外側では、大蛇の形で認識され、土台から下の空間では数多の形をとるようです。土台から下の空間は虚無であり、大蛇の物言わぬ兄弟は、そんな静かな忘却の果ての王であり、そこを進むものは存在そのものを失うとされています。
最初の人間たちには最初の王がいた。彼はアセムと呼ばれる、黄金色の美丈夫で、その手で山を築き、その足で広大な草原を渡り、その声で呼びかければ、海をその身に帯びることができた。笑い声は地平線に見える雷雨の囁きのように明るくて力強く、神をも殺せるという槍を持ち歩いていた。また、彼の目は天国の先、彼方の世界を覗き込んでいた。

人の最初の王であるアセムは絶大な力を有しており、その力で人の最初の都市、アウダパウパドポリス(最初の父の都)を築いたようです。

ちなみにアセムが持っていたとされる神をも殺せるという槍ですが、DJ・カクタスの提言Ⅲ チャプターⅣ THE SPEAR AND THE SERPENTには、『信じざるものの槍(Spear of the Non-Believer)』が登場し、DJ・カクタスの提言Ⅲ チャプターX LOYALTIESでは別名として『古代王サルースの神無き槍(the godless lance of Old King Sarrus)』と呼ばれています。

DJ・カクタスの提言Ⅲ チャプターⅩⅠ THE ALL-SEEING EYE ではこの槍が財団にSCP-5935と指定されて収容されていたことが明らかになります。
その名前が“IS”を意味するのでSCP-4840-Aたちは彼をアセムと呼び、彼こそは創造の歓びの具現であると信じていた。
その当時は有り得ないほど強力な女や男がアウダパウパドポリスの通りを歩いていた。目に驚異(ワンダー)を宿した男、深紅の衣に身を包んだ王、蛇とその弟、竜たちと空の領主たち、土星からの使者、他にも大勢。鉄の神と肉の神が広間で顧問を務め、夢の王が夜に見張りの目を光らせていた。それら全ての中で最も偉大だったのが、人の最初の王だった。

アセムは神すらもしのぐ偉大な存在であったようです。目に驚異(ワンダー)を宿した男は初代のワンダーテインメント博士でしょうか?深紅の衣に身を包んだ王は緋色の王を連想させます。蛇とその弟は先ほど出てきました。竜たちと空の領主たち、土星からの使者は思い当たりませんが、ENのディスカッションには土星からの使者はSCP-2845 – 鹿神様ではないかというコメントがありました。

SCP-2845 – アニヲタWiki(仮)ではSCP-2845はローマ神話に登場する農耕神、サートゥルヌスではないかと考察されています。サートゥルヌスは土星の守護神ともされるそうです。
しかし、彼の中に羨望という最初の悪徳が芽生えた。彼は空を見て、それが自分の物であればと願った。人類最初にして最も偉大な都を築く間にも、彼はより多くを切望した。彼の欲求は創造そのものにさえおよび、彼は宇宙の秩序を乗り越えて他の世界の物を手に取った最初の者になった。
それは冠だった。彼はその冠を別の世界から、別の存在から取り、我こそは全ての然るべきものの王(King of All That IS)であると宣言した。ISが最初に見出されたこの場所で、彼は権力の座を築いた。彼はまだ優しく美しかったが、さらに多くを渇望した。彼はこの欲求に魅入られ始め、自分が懇願と呼び掛けへの答えを求める大いなる宇宙以外の何事も考えられなくなった。

アセムは他の世界に起源を持つ冠を手にして、全ての然るべきものの王であると宣言しますが、この冠によって王国には綻びが生まれます。この冠はカクタスバースを語る上で重要なオブジェクトとなります。

最初の裏切りは彼の息子たちから来た。真ん中の息子は父親の冠を羨み、自分にそれを渡せと求めた。彼は軍を率いて父親の土地を荒らし、剣と松明で人の世界を荒廃させたが、アセムによって打ち倒され、地底深くにある石の墓に幽閉された。
一番上の息子はこの世界の人々に情熱的に語り掛け、父親が自分に冠を渡すべき道理と理由を求めた。王国は一番上の息子に膝を屈して彼を神と崇めたが、アセムは彼が大地と付き従う者たちを毒するように呪いを掛けた。彼は追放され、太陽が東に沈む日が来るまで、世界の荒涼とした地を放浪することを強いられた。
最後に、末息子は父親が眠っている間に部屋へと入り、彼の頭から冠を取った。これは最大の裏切りだった、父親は末息子を最も愛していた。末息子は密かに夜闇の中へと去り、父親の王国は崩壊した。アセムは世界を煙る荒地へと変え、SCP-4840-Aたちは、末息子に従うごく少数の者たちと共に、影の中へ姿を消した。

アセムの息子たちがアセムの冠を手に入れようとした結果、上2人の兄は処罰され、末息子は冠を盗んで逃走。王国は崩壊してしまいます。

SCP-4840-Aたちは、冠だけを求め、天地がひっくり返ったとしても見つけようとしたアセムと兄二人に、千年の間追われ続けたが、冠は隠され、彼らが伝説へ、そして神話へと薄れて消えるまで遠ざけられたままだった。
SCP-4840-Aがようやく日の光の下へ戻ると、世界は変わっていた。畑は青々として、森は豊かで、空は澄んでいた。SCP-4840-Aと共に逃げた人々は家族となり、彼らの家族はこの新世界へと広がっていった。この世界について書き記す者たちは、そこをオールド・エウロプ(Old Europ)と呼ぶ — 定命者たちにとって最初の真の王国。

SCP-4840-Aたちは影から戻ると、真ん中の息子とアセムにより荒廃していた世界は豊かな自然溢れる世界に変わっており、SCP-4840-Aたちと共に逃げた人々は新世界へと進出して勢力を広げ、オールド・エウロプ(Old Europ)と呼ばれる、定命者たちにとって最初の真の王国が生まれたそうです。最初の王国崩壊後に人々によって作られた王国がオールド・エウロプになります。

SCP-4840-Aは、知識への情熱と学びへの欲求を持つ親切な男、ハリアンと懇意となり、アセムの鉄冠でハリアンを戴冠させた。ハリアンはアポリオン、暗黒を統べる王(King Over The Darkness)と呼ばれた。彼は壮大な広間や寺院や図書館を建て、程なくオールド・エウロプの全てが聖王(High King)の前に跪いた。ハリアンが死んで冠が息子ユーヴァンの手に渡った時、SCP-4840-Aは暇乞いをして、東の父と兄たちの都に帰った。こうしてSCP-4840-Aは一万年ぶりに休みを得た。

SCP-4840-Aは親しくしていたハリアンに、アセムの鉄冠を戴冠させ、オールド・エウロプはハリアンにより統治されるようになります。ハリアンはアポリオン、暗黒を統べる王(King Over The Darkness)と呼ばれ、以後、ハリアンの家系はアポリオン王家として続いていきます。SCP-4840-Aは暇乞いをして、アウダパウパドポリスに戻りました。

SCP-4840-Aが目覚めた時、世界はまた様変わりしていた。東方の血の魔術師たち、ダエーワ族とその憎むべき狂王モロス(Mad King Moros)が西へ攻め込み、一千の血塗られた戦を仕掛けていた。
ハリアンのアポリオン王家は空の王者(Sky Kings)を名乗り、大陸各地であらゆる集落や未熟な領主たちから略奪し、征服していた。
西方では、別の種族が暗い森から力強く姿を現したという噂が広まった — 人類よりもなお古く、木々と根から作り上げた武器を帯びている種族だった。世界に戦争が巻き起こった。これらの遺跡は発見しても説明が付かないものだ。それらは古く、意味は遥か昔に失われている。だがこうした戦争は来たるべき世界の基盤を築いた。

SCP-4840-Aが目覚めると、東方の血の魔術師たち、ダエーワ族が台頭して、狂王モロス(Mad King Moros)が西へ攻め込み、アポリオン王家は空の王者を名乗り大陸各地を侵略、西方では、別の種族が暗い森から力強く姿を現したという噂が広まり、各地で戦争が巻き起こります。

SCP-4812によれば、空の王者たちはオールド・エウロプを何百世代に渡って支配したと言われ、東のダエーワや南の鉄の神の信徒に忠実な人々の抵抗があったと書かれています。

現在未翻訳であるSCP-4008 – Wormwood(ニガヨモギ)へのクロスリンクがありますが、SCP-4008にはダエーバイト帝国(SCP-140 – 未完の年代記に登場する過去の歴史に存在したとされる国家)が用いたと考えられている大量破壊兵器が登場します。

これはショクヨウガヤツリに似た植物の種子で、植物が生育する土壌に撒くと、急速に成長して水とミネラルを枯渇させ、5分ほどで1.2〜1.5 kmの高さに完全に成長します。この樹木は1時間後に分解しますが、反ミーム効果を有しており、取り囲むエリア内のあらゆる記憶を、影響者から失わせます。ダエーバイトは死後も抵抗を続ける夜の子どもたち(Night Children’s)から逃れるためにこれを使用したようです。

Night Children’sはおそらく『夜闇の子ら』(Children of the Night )のことだと思われます。夜闇の子らはSCP-1000 – ビッグフットに登場する、人類よりも前に文明を築いていた種族です。西方の別の種族とは夜闇の子らではないかと推測されます。

SCP-4840が住民の消えた後、人類の社会意識から完全に消滅したとSCP-4840の説明に書かれていますが、このニガヨモギにより忘れ去られたのかもしれません。
SCP-4840-Aは荒れ果てた父の広間に隠れたが、やがて空の王者に見つかった。彼は名をゾルスといい、兵団を率いてアウダパウパドポリスに進軍すると、SCP-4840-Aの父のを引き渡せと迫ったが、 槍は世界の暗黒時代の何処かで、父とともに失われていた。そう言うと、ゾルス・アポリオン(Xorus Apollyon)は草の根を分けてでもこの都から槍を見つけると脅した。

だが此処にはまだ秘密、地下に封じられている大いなる真実があったため、悲痛な思いで、まだ大地を歩んでいた最後の巨神、巨竜バラタ
を呼び、SCP-4840-Aと共に都を空に持ち上げ、大地の人々から永遠に切り離した。

空の王者を名乗ったアポリオン王家のひとり、ゾルスが、アセムの神をも殺せるという槍を求めてアウダパウパドポリスに進軍します。SCP-4840-Aは地下に封じられている大いなる真実を守るため、巨竜バラタを呼び、SCP-4840-Aと共に都を空に持ち上げました。こうしてアウダパウパドポリスは空中都市となったようです。

SCP-4840-Aは何千年もの間、王が次々に現れては去ってゆくのを見た。その誰もが一族に伝わる血に塗れた時代遅れの慣習を続け、その間ずっと彼らの頭にはアセムの鉄冠が鎮座していた。

SCP-4840-Aはアウダパウパドポリスから人々の歴史を見続けました。アポリオン王家では代々アセムの鉄冠が継承されています。

ダエーワの英雄ギルガメッシュがイェルサレムの野でサルース(Sarrus)2世の唯一の息子との一騎打ちに敗北し、討たれるのを見た。

アポリオン王家はダエーバイト帝国とも争ったようです。サルースはアポリオン王家の王であり、カクタスバースでは何度も登場します。翻訳には反映されていませんが、一騎打ちしたのはサルース(Sarrus)2世ではなく、その唯一の息子の方でした。※2021/11/30追記:翻訳が以下のように修正されていました。

ダエーワの英雄ギルガメッシュが、イェルサレムの野の一騎打ちでサルースII世の一人息子を討つのを見た。
海を上昇させて人の地を洗い流そうとした恐るべき魔術師ノア・エル・メートーが、憤怒者マリドラウに打ち倒されるのを見た。
ジョレイ・アポリオンが夜闇の子の王と会うために海へと船出し、彼女が悍ましい女神樹の心臓に捧げる贄として生き埋めにされるのを見た。やがて世界は変わった。

ここでの記述はSCP-6666魔性のヘクトールと恐怖のティターニアと関連しています。少し前に述べましたが、SCP-4840-Aが目覚めた後に言及された、西方の暗い森から力強く姿を現した別の種族とはこの夜闇の子らであるのかもしれません。

サルース8世が大西洋を渡って奇妙な民たちの生き残りに滅びをもたらすのを、息子のサルース9世が彼らの姫を地に埋めて大いなる冒涜者たちを王国に呼び寄せるのを、人の王国が揺らいでサルースが四つの背信に苛まれるのを、SCP-4840-Aは深い悲しみと共に見届けた。

奇妙な民たちとは妖精たちのことでしたね。アポリオン王家のサルース8世は妖精たちと戦ったようです。大いなる冒涜者たちは未翻訳記事であるSCP-4812 – 憤怒とクロスリンクしています。

SCP-4812によるとサルース8世は妖精たちが住む地域を欲し、侵略するために大軍を率いて船で大西洋を渡り、妖精たちを壊滅させ妖精の姫を連れ去ったそうです。

連れ去られた妖精の姫は、オールド・エウロプに向かう航海中にアポリオン王家に呪いをかけ、嵐が船団を襲いサルース8世は海に消えました。生き残りった船団は帰還し息子のサルース9世は報復として連れて来た姫を地に埋めました。さらに姫の呪いからアポリオン王家を守るため、4人の騎士、ラハイア、ランスロット、ヘクトール、オジエを任命します。SCP-4812に出てくる古文書にはさらに妖精の姫が何かをしたかのような記述がありますが、文章が途切れていて詳細は不明です。

SCP-6666によれば姫の呪いは4人の騎士にも降り掛かったそうです。

またこのとき姫により、大いなる冒涜者たちと呼ばれる4人の騎士とは異なる3体の実体が生まれたようです。SCP-4812では大いなる冒涜者たちであると推測される実体を、それぞれSCP-4812-SSCP-4812-ESCP-4812-Kと指定しており、SCP-4812に出てくる古文書によれば冒涜者たちはサルース9世を襲ったと記述されています。
話は前後しますが、いなる冒涜者についてはSCP-4840-Aがインタビューの最後でも触れられていました。
サルース9世が奇妙な民の最後の姫を埋めた時、彼女は三柱の大いなる冒涜者で彼らを呪った。抑圧者(リストリクタ)、堅牢(アダマント)、そして闇(ダーク)。この三柱には気を付けろ。彼らは呪いを受けた者たちの、太陽の子らとその鉄剣から逃げた者たちの、夜闇の子らとその命を刈り取る大鎌の最後の名残だ。これらの恐怖を見た時は、俺が此処で何と言ったか思い出せ。彼らはお前たちの歴史が始まる遥か前からいる古代の存在だ。彼らに気を付けて、見ろ。

妖精の姫を埋めたことでサルース9世は妖精の姫に呪いをかけられ、三柱の大いなる冒涜者がサルース9世に襲いかかったようです。SCP-4812には、同様の内容がより詳しく書かれていました。SCP-4840-Aはこの三柱には気を付けろと警告しています。

それではSCP-4840-Aの話に戻ります。

サルースの騎士たちは邪神の前に膝を屈して怪物に成り果てた。ラハイアは西へ、オジエは北へ、ヘクトールは南へ向かい、東には王の隣に座していたランスロットがやって来た。程なくして、彼は此処へ、SCP-4840-Aの父の都へと至る道を見つけ出した。
ラハイアはSCP-2254 – 魔性のラハイアと情欲の谷にクロスリンクされています。SCP-2254には異常な性的暴力性を有する胎児を生ませる、巨大な六つの目を持つ人型実体が登場しますが、この人型実体がラハイアであるようです。
オジエはDJ・カクタスの提言Ⅲでは既に収容されていました。

サルースの騎士たちは邪神の前に膝を屈して怪物に成り果てたとSCP-4840-Aは語っています。邪神が何を指すのかは分かりませんが、妖精の姫の呪いと関連していると思われます。

SCP-4840-Aによると

サルースの騎士たちはアポリオン王家に誓いを立てた貴族だ。オジエがまず最初に膝を突き、その次にランスロット、ラハイア、ヘクトールと続いた。彼らは王のため身命を賭すと宣誓したのだが、奇妙な民の冒涜者たちが大地から身を起こすと心変わりした。

姫の呪いからアポリオン王家を守るために任命されたはずの4人の騎士は、大いなる冒涜者たちが現れると心変わりしたようです。

裏切りによって彼らはサルース9世に呪われ、怪奇異様な姿に変わった — 古き妖精たちの神々の姿だった。ランスロットは鎚矛の名人だったから、彼の腕は変形し、彼の心は怒りに任せて破壊すること以外には何もできなくなった。彼が山々を越えてきた時の物音は、喚き叫ぶ豚の大軍団のようだった。

4人の騎士は怪物に成り果てたそうです。

SCP-6666では、財団は、古文書を調べた結果から、妖精の姫によって4人の騎士が呪われたと推定しています。どちらが正しいかは不明です。
騎士たちの裏切りは伝説になり、やがて伝説とも言えなくなった。最終的に残ったのは四人の名前だけで、それらは他の物語に採用された。SCP-4840-Aの兄の寺院の廃墟の上で大の字に転がっている死んだ生き物は、円卓に座っていた男ではなく魔性のランスロットとでも呼ばれる存在だった。

SCP-4840に存在する死んだ人型実体、SCP-4840-Bはランスロットであるようです。SCP-4840-Aによればランスロットという名前だけが他の物語に使われたそうです。つまりここで話に出てくるランスロットは円卓の騎士のランスロット – Wikipediaではなく、言うなれば魔性のランスロットとでも言うべき存在であったようです。

魔性のランスロットはSCP-4840-Aによるとアウダパウパドポリスへ行く道を見つけ、アウダパウパドポリスに向かったようです。

ランスロットはこの都を瓦礫に帰せしめることもできただろう、しかし最後の味方がアウダパウパドポリスの防衛に駆け付けた。何週間も、魔性のランスロットは老竜バラタと、海の君主アークトゥルスと、英雄ベオウルフと、ダエーワ王レリヴァインと争った。忘却され、記憶から消えて久しい最後の偉大な英雄たち。戦いの中で次々に命を落とし、SCP-4840-Aと竜のバラタだけが残った。最後の力を振り絞って、バラタはランスロットの悪臭を放つ心臓を引き裂き、その歪んだ身体を日没の寺院の上に放り投げた。

ランスロットはアウダパウパドポリスを襲撃したそうですが、老竜バラタと、海の君主アークトゥルスと、英雄ベオウルフと、ダエーワ王レリヴァインがSCP-4812-Aに加勢して、激しく争い、その結果ランスロットを討ち果たしました。しかし戦いで英雄たちは次々に命を落とし、SCP-4812-Aだけが生き残るという結末を迎えました。

バラタが死んで、SCP-4812-Aは一人きりになった。残っているのは、父の冠を求めて大地を彷徨い歩くSCP-4812-Aの兄たちだけだ。大地の心臓の中で腐れつつあるのでない限り、SCP-4812-Aの父も何処かにいるだろう。

SCP-4812-Aの父アダム・エル・アセムはまだ存在するようです。その居場所は分からないと話していました。

SCP-2932 – ティターニアの檻ではAdam El Asemという名前が出てきます。SCP-2932は一種の監獄であり、夜闇の子らが危険な実体を捕らえるために作らせた植物系生命体からなる施設です。SCP-2932の動力源は女神ティターニアの心臓であるとされています。

SCP-2932に収容されている実体の中には、Adam El Asemが含まれていましたが、2015年4月7日に独房が空になっていることが判明し、現在はSCP-2932に収容されていません
冠は、冒涜の闇がサルース9世をその顎に捕えた時、丸呑みにされて失われた。アポリオン王家は一夜で滅亡し、オールド・エウロプの最後の王国は散逸し、夜闇の子たちが恐るべき長船で海を渡り、人の世界から可能な限りの物を奪い取って、世界の隅にある彼らの暗い広間へと持ち帰った。

妖精の姫を連れ去ったサルース8世の息子であるサルース9世は、先ほど述べた冒涜の闇に冠と共に丸呑みにされアポリオン王家は滅亡したそうです。

冒涜の闇には顎があると言うことなので闇はSCP-4812に出てくるSCP-4812-Kのことかと最初は考えましたが、原文ではmaw(口や胃の意味)となっているため、顎というよりは口や胃というニュアンスだと思われます。従って強力な認識災害により光の中で観察することが不可能なSCP-4812-Eが冒涜の闇であるようです。

洞窟に収容されているSCP-4812-Eは動かず、接触や雑音に反応しませんが、致命的な認識災害を有しており、直接視認はおろか写真や映像を介しても即座に激しい痛み、皮膚や開口部からの出血、麻痺、窒息を経験し、やがて死に至ります。

認識災害により外見は不明ですが、SCP-4812-Sの身体は有機物で構成されており、SCP-4812-Sの巻きひげのような付属肢は収容されている洞窟の周辺の地中奥深くまで伸びていると考えられています。

夜闇の子らは人の世界から可能な限りの物を奪い取って、世界の隅にある彼らの暗い広間へと持ち帰りました。

SCP-4840-Aの語る歴史については以上でした。SCP-4840-Aはさらに現在の状況について語っています。

俺はこの長い年月、古い世界の多くを隠し続けていた。俺の生命は衰えている、それはつまり秘密を保ち続ける能力もそうだという意味だ。

SCP-4840-Aは見た目が老いているだけでなく、その能力にも衰えがあるようです。説明によれば、1933年以前、SCP-4840は未知の異常な手段で視認・知覚から秘匿されており、これはSCP-4840-Aによれば、彼が構造物に与える影響によるものであると主張しています。

しかしながら、SCP-4840-Aの体調に何らかの変化が及んだらしく、SCP-4840は裸眼でもレーダー機器でも観測可能になりました。財団によるスクランブル装置と雲発生装置の搭載や、遠隔地へのSCP-4840の移動によって、この挙動変化の影響は軽減されています。

俺にはラハイアが西で目に見えないように動いているのが見えるし、ヘクトールは南で姿を現す準備をしている。ランスロットは長らく此処に死んで横たわっているが、未だに冷える様子がない。

ラハイアはSCP-2254であり、アラバマ州ファロンの町に収容されています。ヘクトールはSCP-6666に登場します。

何故か? 冒涜の堅牢が再び空に姿を見せたと、冒涜の堅牢はランスロットが圧倒的な力を求めて祈りを捧げた相手だったという話がある。遥か昔から長らく眠り続けていた何かが動いている。だからこそ俺にはお前たちの助けが要る。俺は有り得ないほど長生きではあるものの、永遠には生きられないだろう。この都を維持する重圧が俺を消耗させ、いずれは人類の後継者であるお前たちに都を明け渡さなければならない日が来る。お前たちは秘密を守らなければならなくなる。
SCP-4840-Aは何かの動きを感じていて、財団の助けを必要としているようです。SCP-4840-Aは非常な長命ではあるものの不死ではないようで、やがては財団にアウダパウパドポリスを明け渡すことになると感じているようです。
冒涜の堅牢は空に存在するということから、未収容状態であり、成層圏上部に滞空しているSCP-4812-Kが冒涜の堅牢であると思われます。SCP-4812-Kはクワガタムシとサソリの両方に似た巨大な銀色の翅を持つ昆虫のような実体で、その体長は約180mあり、大きなハサミを前2本に有する6本の肢と、端に尖った鋸状の棘のある、節に分かれた長い尾を持っています。

SCP-4812-Kの全身は厚く反射性の高いキチン質で覆われており、背中から伸びる4枚の翅で飛行します。SCP-4812-Kは昆虫の目と口の代わりに標準的な人間男性のような顔を持っています。

これまでSCP-4840-Aは、アポリオン王家のゾルスの手から逃れるために、都を浮上させ、また、侵入した魔性のランスロットと激しく戦ったと話していました。SCP-4840に最初に到着したパイクの探検日誌にも書かれていましたが、アウダパウパドポリスには守るべき秘密があるようです。

秘密は古き図書館の中にある。この場所でISが見出された。此処はISが結実した場所だ。俺の父は、あらゆる権威の中でも最大の権威が万物の始まりに落ち着いた場所に、権力の座を築いた。俺たちはあの場所を古き図書館と呼び、その中には“最初の書”がある。

SCP-4840-Aはインタビューのはじめの方で、ISが存在し始めた場所に人間たちの最初の都市アウダパウパドポリスが建てられたと語っていましたが、正確にはSCP-4840-Aたちが古き図書館(Old Library)と呼んでいた場所でISが見出され結実したようです。その中には“最初の書(First Book)”があると語っています。

実際には全く本ではないが、それが一番簡単な説明だ。蛇の図書館は宇宙全体でも最大の知識の集約で、時空を超え、次元を超え、現実を超えて成長している。あの図書館の文章はISとその何たるかについては説明する。最初の書はISを説明するだけではない、それ自体がISだ。

蛇の図書館はISとその何たるかについては説明していて、古き図書館にある最初の書はISを説明するだけではなく、それ自体がISだと言っています。

最初の書には最も根源的な、人や獣に理解されることを全く意図していない真実が収められている。どのように。何故。それ以上の事。実を言うと、俺はあの本を読んでそれらの真実を知ろうと試み、失敗している。もし真実を知ればこの世界の過ちを正せると信じたが、俺は混迷した子供であり、何も知らなかった。俺は一度“別の書”の中で危うく己を失いそうになり、その中で年老いた。

SCP-4840-Aは本を読んでそれらの真実を知ろうと試み、失敗したと語ります。また、SCP-4840-Aは“別の書(Other Book)”の中で危うく己を失いそうになり、その中で年老いたそうです。見た目が老化しているのは、これが理由なのでしょうか?

古き図書館には二冊の本がある。最初の書と、別の書。別の書はIS NOTの本だ。これもまた真実を含んでいる。在ってはならない真実。存在しない真実。暗い真実。古き真実。今は俺の魔術が古き図書館を保護しているが、いつか失敗する時が来る。此処に何があるかを知っていて、見つけ出そうとする輩がいる。

古き図書館には二冊の本、ISの本である最初の書と、IS NOTの本である別の書があり、別の書もまた在ってはならない真実や存在しない真実など、真実を含んでいるそうです。SCP-4840-Aの魔術が古き図書館を保護しているそうですが、此処に何があるかを知っていて、見つけ出そうとする輩がいるそうです。いったい誰なのでしょうか?

空の王者を名乗ったアポリオン王家のひとり、ゾルスが、アセムの神をも殺せるという槍を求めてアウダパウパドポリスに進軍したため、アウダパウパドポリスを浮上させたとSCP-4840-Aは述べていましたが、その際に此処にはまだ秘密、地下に封じられている大いなる真実があったと話していました。その秘密とは古き図書館にある二冊の本、最初の書と、別の書のことであると思われます。

SCP-4840-Aの目的はアウダパウパドポリスの秘密を守ることであるようです。

SCP-4840-Aはインタビューの最後に自身の名を明かしました。

オストラヴィッチ: あなたは誰ですか?

SCP-4840-A: (沈黙) 俺の名はセスだった。カインアベルの弟、人の最初の王 アダム・エル・アセムの息子。

オストラヴィッチ: “だった”?

静寂。

オストラヴィッチ: すみません、その —

SCP-4840-A: いや、構わない。 (沈黙) 少年だった頃、まだ若い宇宙の夜空を見つめていた俺は、父に俺一人だけの星を求めた。父は手を伸ばして俺のために鉄の冠を引っ張り出し、そしてその冠こそが人の心に根強く残る穢れを播いたのだ。それは俺の父を狂気に、俺の兄たちを虐殺に追いやり、俺たちの王国を滅亡に導いた。あの冠が無ければサルース8世は海を渡らなかったかもしれない。冠さえなければ、ハリアンの系譜は海の向こうからやって来た夜闇の子らを撃退できたかもしれない。あの冠ほど憎むべき物、忌まわしい物など在りはしない。あれは悪の根源にある種であり — (沈黙) — 俺への贈り物だった。そうだ、かつてはセスだった。俺は既に名を失ったのだ。

SCP-4840-Aは、自身がかつては人の最初の王であるアダム・エル・アセムの息子であり、カインアベルの弟でもあるセス(Seth)であったと明かしました。

SCP-4840-Aのインタビューを振り返ると、以下のように話していました。

最初の裏切りは彼の息子たちから来た。真ん中の息子は父親の冠を羨み、自分にそれを渡せと求めた。彼は軍を率いて父親の土地を荒らし、剣と松明で人の世界を荒廃させたが、アセムによって打ち倒され、地底深くにある石の墓に幽閉された。
真ん中の息子とあるのでこれはアベルの過去の話のようです。鉄冠を求めて、軍を率いて父親の土地を荒らし、剣と松明で人の世界を荒廃させたとあります。その行動はアベルの高い身体能力・戦闘能力と結びつきます。真ん中の息子が幽閉された石の墓は、アベルが封印されている3m立方の黒い変成岩であるSCP-076-1だと考えられます。
一番上の息子はこの世界の人々に情熱的に語り掛け、父親が自分に冠を渡すべき道理と理由を求めた。王国は一番上の息子に膝を屈して彼を神と崇めたが、アセムは彼が大地と付き従う者たちを毒するように呪いを掛けた。彼は追放され、太陽が東に沈む日が来るまで、世界の荒涼とした地を放浪することを強いられた。

一番上の息子とあるのでこちらはカインの話です。真ん中の息子とは異なり話術で鉄冠を手に入れようとしています。『大地と付き従う者たちを毒する呪い』は、植物などの土で成長するすべての生命に対し害を与え、20m範囲内のそれらの生命が死に絶えるカインの異常性と結びつきます。また、SCP-4840-Aは兄に対して以下のようにも述べています。

お前たちは真実の探求者だろう? どこか兄を思い出させるのさ。俺の兄は学者でな、多分俺たちの時代では最も賢かった。誰かとテーブルを挟んで座れば、相手について知るべき事を一目見るだけで全て集められたものだ。

ここの兄は一番上の息子のことでしょう。最も賢いというのは、カインが実施した知能検査ですべて平均以上の点数を出したことと一致しており、『相手について知るべき事を一目見るだけで全て集められた』についてはカインが映像記憶を持ち、過去に起きた出来事を詳細に説明することができることと一致しています。

話をインタビューに戻すと、鉄冠を求めてカインとアベルはアセムと争うことになり2人は追放されましたが、SCP-4840-Aは鉄冠こそが王国の滅亡だけでなく、アセムの子孫であるアポリオン王家のサルース8世の遠征や、その後の夜闇の子らからの襲撃に対する防衛に失敗した元凶であると考えているようです。あの冠ほど憎むべき物、忌まわしい物など在りはしない。と語っています。

SCP-4840-Aはかつてアセムから盗んだ鉄冠をハリアンに戴冠させていましたが、その後に鉄冠こそが悪の根源であったと気付いたのでしょうか?

自分への贈り物であった鉄冠が末代まで続く悪の根源であった――。SCP-4840-Aが名を失いアウダパウパドポリスの秘密を守っていたのはその償いのためかもしれません。

インタビューの内容は以上です。

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まとめ

長くなりましたが、SCP-4840-Aが語った歴史は、大まかにまとめると、アダム・エル・アセムの王国の時代、アダムの子孫であるアポリオン王家が支配したオールド・エウロプの時代、財団に収容された現代と分かれています。

アダム・エル・アセムは人の最初の王であり、カイン・アベル・セスの父でした。異世界に起源を持つ鉄冠や神をも殺せるという槍(信ぜざるものの槍)をかつては所持していました。王国なき後はSCP-2932 – ティターニアの檻に幽閉されていたようですが、現在行方不明です。

SCP-4840-Aことセスは秘密――大広間の下にある封印された”古い図書館”にあるという最初の書と、別の書――を守っているようです。

妖精たちや夜闇の子らは最初の王国の時代に現れ、ダエーバイト帝国はオールド・エウロプの時代に現れます。アポリオン王家に仕えながらも呪われ、災いをもたらした4人の魔性の騎士、ラハイア(SCP-2254)、ランスロット(SCP-4840-B)、ヘクトール(SCP-6666-A)、オジエや、アポリオン王家を破滅させた冒涜者たち(闇:SCP-4812-S、抑圧者:SCP-4812-E、堅牢:SCP-4812-K)もこの時代に現れました。

アセムの王国やアポリオン王家が崩壊したのは、アダム・エル・アセムが手に入れた鉄冠が原因のようです。鉄冠はセスが盗み、アポリオン王家に伝わり、王家の滅亡と共に失われ、現在はSCP-3790に存在している可能性があります。

SCP-6666ではさらなる歴史が明らかになります。SCP-4840-Aの語った歴史は以上です。最後にSCP-4840の3棟の寺院を紹介して終わります。

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3棟の寺院

SCP-4840には歴史上の出来事、要注意団体や人物、その他の異常存在を描写していると推測される図像で装飾された3棟の寺院が存在します。SCP-4840は4ヶ所の、住人の工芸技術に基づいて分割されていた四分円区画と、それらを接続する巨大な中央ハブに分割されており、その中央ハブに3棟の寺院と巨大かつ豪奢に設計された権力者の座と推定される大広間が存在します。

日の出の寺院

本殿への入口

まず本殿への入口についてですが、入口には壁画があります。

裸の子供2人が森林の端に立ち、どこか不安げに地平線を見つめている。狼と熊が1匹ずつ子供たちの後ろに、彼らを保護するように立つ。この壁画の反対側の壁には、炎の剣を持った姿が丘の上に立ち、森を見下ろす様子が描かれている。

炎の剣を持った姿はクレフ博士の提言、ゲートガーディアンでSCP-001に指定されている巨大な人型実体と類似しているようです。裸の子供2人は人類の始祖を表しているのでしょうか?狼と熊は、SCP-4840-Aが語っていた幼い時期に面倒を見たとされる狼、熊、豚、ライオンといった世界の母親たちのことだと思われます。

本殿

最奥の壁

鮮やかな日の出が描かれ、SCP-4840が前景に見える。日の出の正面には黄金色の男が立ち、その隣に他2人が控えている。第3の人物が彼らから離れた場所にいる。黄金の男は先端が銀色になった長い棒を持ち、光り輝く王冠を被っている。上の空には、緑色の目をした青銅色の竜が描かれ、竜の横には“彼らは何が然るべきものかを知るだろう”という文言が記されている。

黄金色の男は黄金色の美丈夫だったとされるアセムのことだと思われます。他2人はカインとアベル、第3の人物はセスでしょうか?銀色になった長い棒は神をも殺せるという槍を思い起こします。光り輝く王冠はアセムの鉄冠を思い起こしますが、アセムの鉄冠は西の壁に描かれているようなのでこちらは違うもののようです。

緑色の目をした青銅色の竜に当たる存在は、何が然るべきものかを知るだろうという文言から、何が然るべきであり何がそうでないかの基礎を築いたとされる放浪者の図書館の蛇かもしれません。

東の壁

アウダパウパドポリスの大広間での集会の一場面。最大の壁画に描かれていた黄金の男は王座の足元に立ち、他2人の姿が両隣に立っている。第3の人物は描かれていない。黄金の男の前では、緋色のローブと炎の王冠を身に着けた王が手を伸ばして親愛の情を示しており、この王の横には、身体に1匹の蛇を巻き付けた裸の女金属製の男濃い紫色のローブを着た魔術師がいる。他の人物たちが近くに立つ。

黄金色の男はアセムで、他2人はカインとアベルだと思われますが、セスと覚しき第3の人物は描かれていません。緋色のローブと炎の王冠を身に着けた王はタフトの提言、緋色の王にクロスリンクされています。SCP-4840-Aは深紅の衣に身を包んだ王が存在したと語っていましたが、この王は緋色の王であるようです。

王の横の身体に1匹の蛇を巻き付けた裸の女はSCP-336 – “リリス”であるようです。金属製の男は構築者というTaleにクロスリンクされています。金属製の男はロバート・ブマロであるようです。ロバート・ブマロはDJ・カクタスの提言Ⅰであるツイステッドギアーズ=カクタスの提言にも登場します。

濃い紫色のローブを着た魔術師は未翻訳Tale、To Never Again See The Light Of Dayにクロスリンクされています。Taleでは要注意団体、マーシャル・カーター&ダーク株式会社に関係すると思われるスキッター・マーシャル(Skitter Marshall)という人物が出てくるので、この人物のことかもしれません。

追記:このTaleにはワンダーテインメント博士も登場し、ワンダーテインメント博士のロゴが紫色であることから、濃い紫色のローブを着た魔術師は初代のワンダーテインメント博士なのかもしれません。

西の壁

大広間の王座に座る黄金の男が描かれており、頭上には鉄の王冠が浮かぶ。王冠には未知の言語が彫り込まれ、煌めく白い宝石が散りばめられている。

描かれている鉄の王冠はアセムの鉄冠のようです。鉄の王冠はSCP-3790 – 怪奇部門にクロスリンクされています。

怪奇部門は財団には存在しないとされている謎の部門で、これに関連するSCP作品が多数存在します。SCP-3790はロンドンにある『SCP財団 怪奇部門』というプラカードの付いた謎の構造物で、缶詰会社の倉庫の地下に存在します。その内部には小さなガラスの覗き窓の付いた部屋が複数あり、部屋の中には様々なオブジェクトがあることが確認されており、オブジェクトの名称を示していると思われるプラカードが扉に存在しています。

SCP-3790の第六階層にはアポリオンの冠 (Apollyon’s Crown)と記されたプラカードが付いている部屋があり、銀色の鍵付き箱が部屋の中央のテーブルに置かれています。ドアの外装は何かが入室を試みたかのように引っ掻き傷で覆われています。

アセムの鉄冠はアポリオン王家に渡り、代々継承されていました。SCP-4840-Aは鉄冠は冒涜の闇に飲まれ失われたと語っていましたが、部屋にあったものは本物なのでしょうか?

黄金の男の背後には、巨大な一枚岩のような物体が幾つかあり、 歯車と鋼鉄で出来た物、血と肉で出来た物、氷と石で出来た物、星で出来た物、で出来た物。光り輝く白い長髪の若い女が、彼らの前で空中に浮かび、南を指差している。

歯車と鋼鉄で出来た物、血と肉で出来た物はSCP-4840-Aの話にも出てきた鉄の神と肉の神のことだと思われます。それぞれ壊れた神の教会が信奉するメカーネ、サーキック・カルトにおける神格ヤルダバオートではないかと思われます。

眼で出来た物は、SCP-3125 – 逃亡者にクロスリンクされており、光り輝く白い長髪の若い女はSCP-179 – 太陽の姉妹サウエルスエソルにクロスリンクされています。前者はK-クラスシナリオを起こしうる危険なミーム複合体です。SCP-3125と反ミーム部門の戦いを描いたTaleシリーズ、ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブではこのSCP-3125は多量の足と目を持つ巨大な蜘蛛のような実体として認識されていました。

後者は太陽の近傍に存在する人型実体で、地球上の生物に多大な害を与える隕石や異常なオブジェクトといった脅威に向けて腕を差し向けます。これにより財団は脅威を察知して対処することができその有用な性質からSCP-179はThaumielに指定されています。南を指差している姿が描かれていることからおそらくその方角に脅威があることを示していると思われます。

SCP-4840-Aが語っていた、『その当時は有り得ないほど強力な女や男がアウダパウパドポリスの通りを歩いていた。』時代を描いたのではないかと推測されます。

南の壁

“海を越えて彼らを呑み、長き闇を近付けることの無いように”だけが記されている。これはモザイクタイルで埋め込まれている。

これはどういう意味でしょうか……。

日没の寺院

日の出の寺院と同じく、日没の寺院にも本殿に通じる広い入口があり、入口にはSCP-4840内とその周辺の都市や町の詳細な図と、SCP-4840自体の地図がある。SCP-4840は巨大な壁があるものとして描写されており、小さな町や村が都市の外周を取り巻いている。

東から流れる川の上に別な町1つが描かれ、農場が川に沿って南北に広がる。“人の地”という文言が壁画の最上部、日の出の寺院に描写されていたのと同じ青銅の竜の横に鮮やかに記されている。様式的な矢印が南東を指し示し、その上に“血の王と死霊術師の地”と記されている。もう1つの矢印が西を指し示し、“遠く奇妙な西”としている。

入口にはSCP-4840とその周辺の地図が描かれており、SCP-4840周辺が“人の地”、南東は“血の王と死霊術師の地”、西は“遠く奇妙な西”と記されています。

南東の“血の王と死霊術師の地”はSCP-140 – 未完の年代記にクロスリンクされています。“遠く奇妙な西”はSCP-4840-Aが奇妙な民と呼称している妖精たちが暮らしており、南東にはダエーバイト帝国があったと思われます。

SCP-4840-Aはインタビューではこの寺院を兄の寺院と呼んでいました。

本殿

内装は日の出の寺院と構造的に類似。SCP-4840-Bの倒れた身体によって本殿の大部分は破壊され、唯一残っている壁画が西側の端に見える。

壁画には、鉄の王冠を被った黄金の男が白馬に跨っている。剣、弓、斧で武装した男女の軍団が黄金の男の背後に立ち、彼の両隣に2人の人物 — 恐らく日の出の寺院の壁画と同一の2人がいる。片方の人物は黒い剣、もう片方は緑の杖を持つ。黄金の男は右手に長い銀色の槍を持つ。黄金の男の向こう側は嵐雲と雷が集まる風景であり、その描写は崩落した壁に近付くにつれてより劇的になっている。

残っている壁の隅には、明るい緑の身体で、鮮やかな色の服を着た小さなヒト型実体群が描かれている。これらの姿にはいずれも、縦一列で3個ずつ両側に並ぶ合計6個の目がある。

日の出の寺院と同じく、壁画の鉄の王冠を被った黄金の男はアセム、両隣の2人の人物はカインとアベルでしょうか?武装した軍団や人物の様子から戦いに向かうその様子を描いたもののように見えますが、戦う相手の姿は壁の崩落により確認できません。しかしその隅にはSCP-4000にクロスリンクされている明るい緑の身体で、鮮やかな色の服を着た小さなヒト型実体群が描かれています。

このヒト型実体群は妖精たちであるようなので、アセムたちの相手は妖精たちと何らかの実体であるようです。縦一列で3個ずつ両側に並ぶ合計6個の目は4人の騎士の特徴と一致します。SCP-4840-Aによると、4人の騎士は『裏切りによって彼らはサルース9世に呪われ、怪奇異様な姿に変わった — 古き妖精たちの神々の姿だった。』と語っていたため、このヒト型実体群は古き妖精たちの神々なのかもしれません。

SCP-4840-Aの語った歴史から考えると、壁画はアセムの王国があった時代に描かれたと思われます。壁画にカインとアベルらしき人物がいることから、アセムの王国は兄弟を追放し滅びる前に何らかの敵対者と戦っていたと思われます。

残りの壁にはより多くの小さな緑の姿があり、その背後に灰色の斑模様が付いた巨大な何かが存在するが、この壁画の主題が描いている壁の大部分は崩落している。構造物の天井は夜空に合わせて塗装されている。天井の大部分は崩落しており、残っている星も現代の空に見られる既知の星座とは対応していない。

現在の星座と対応してないと言うことはアセムの王国の時代は星座が異なるほど遙かな過去だったということでしょうか?

夜の寺院

夜の寺院は3棟ある寺院の中で最も小さく、中庭の最端 — 大広間の反対側に位置する。1階建てだが、他の寺院より遥かに広い領域を占めている。

SCP-4840-Aから収集された情報は、この寺院の一部が都市の地下にも通じており、大広間の下の構造物と繋がっている可能性をも示唆している。

寺院の入口には、暗い夜の森を背景にして辛うじて見える実体群が描かれている。これらの実体群には明るい黄色の目があり、体毛に覆われているようだが、顔は顕著に人間と似通っており、彼らはそれぞれ同一の、先端に明るい赤色の石が付いた華美な木製の笏を持っている。

明るい黄色の目があり、体毛に覆われているという文章はSCP-1000 – ビッグフットにクロスリンクされています。描かれた実体群は夜闇の子らであるようです。

寺院の内部は、相互接続された小さな部屋の迷路で、部屋の目的は不明。多くの部屋が森の中に生えた巨木の同じ描写を共有する。赤い光が木の根元を囲み、複数のヒト型の姿が枝から吊り下げられているように見える。木の中心にある樹皮の開口部から、巨大な赤い臓器が見え、木材と石材から成る塔のような構造物が木を囲んでおり、それぞれの塔は血のように赤い大きな花を咲かせる太い蔓に巻かれている。

森の中に生えた巨木という文章はSCP-2932 – ティターニアの檻にクロスリンクされています。このSCP-2932は夜闇の子らが利用していたとされる危険な実体を幽閉するための施設でした。やはり夜闇の子らに関するものが夜の寺院では描かれているようです。

その他の描写は、共同墓地に投げ込まれる男女、燃やされる子供や動物、木製の棺で生きたまま埋葬される男たち、木の幹に縛られた骸骨、体毛の長い大柄なヒト型実体群によって強姦・虐殺される小さな緑のヒト型実体群などからなる。

非常に不穏な内容が描かれています。体毛の長い大柄なヒト型実体群はその特徴から考えると夜闇の子らであるようで、小さな緑のヒト型実体群は、先ほど日没の寺院本殿に描かれていたものと同じく妖精たちのことであると思われます。この部分の内容はSCP-6666で詳しく明らかになります。

寺院の最中心部の部屋には、構造物の下に繋がる階段がある。この部屋は寺院の他の場所と同じく、未知の光源で薄暗く照らされており、長い石棺が壁に沿って並んでいる。この空間に入った人物は信じがたいほどの不安を感じると報告し、石棺の中から引っ掻く音が聞こえると述べる。寺院の地下に通じる階段へのアクセスは、瓦礫と落石によって塞がれている(恐らく日没の寺院の崩落を招いたのと同じ事件による)。

地下へと降りる階段がありますが、塞がれていて詳細は不明です。

夜の寺院の調査中、ある探索チームは財団の“中心”記章が記された扉のある部屋を発見したと報告した。扉を開けたところ、サイト-00-00-00と識別される放棄された財団サイトのような場所への入場が可能だった。その後の寺院探索でこの部屋は発見されていない。

“中心”記章はSCP財団のロゴであると思われますが、なぜサイト-00-00-00と識別される放棄された財団サイトのような場所が遙かな太古から存在する遺跡で報告されるのでしょうか?

幾度か、SCP-4840-Aは自身がSCP-4840内で唯一の人物ではなく、夜の寺院にもう一人いると語っている。SCP-4840-Aはその人物について何か他の情報を述べることに消極的らしく、また如何なる理由でも夜の寺院には立ち入らない。

夜の寺院にもう一人いるという話ですが、これも謎です。ENのディスカッション3ページ目ではDJ・カクタスの提言ⅢチャプターⅩⅢTHE WAY IT ENDSのある人物の台詞

『私はあの最初の男が最初の奇跡を見た時に生まれた──財団全体の意識創発だ。』から、この人物が夜の寺院にいるのでは?と質問されていました。

封印された部屋

大広間の下には1つの部屋があり、SCP-4840-Aのみがアクセスできる大きな石造りの扉が設置されています。SCP-4840-Aはこの部屋を“古き図書館”と呼んでいます。扉が開いている時に戸口の敷居を通過しようとする人物は、それ以上の入室を試みる際に、圧倒的な徐々に増大する、気詰まりな罪悪感と後悔として描写される緊張の高まりを感じると説明します。その激しさは敷居に接近する人物を無力化するのに十分なものです。この感覚はしばしばパニックと不安障害を伴い、戸口から遠ざかることでのみ緩和されます。

これは侵入者を近寄らせないためのSCP-4840-Aによる魔術のようですね。

現在、具体的に何がこの入口の先に存在するかは不明です。

アウダパウパドポリスの大広間は日の出の寺院と同じ図像を数多く有しているが、その下方の封印された扉がある小さな前室には、扉自体に描写された2つの姿以外には特徴がない。左側の図は金と銀で華やかに装飾され、滑らかな白い石が中心に嵌め込まれた1本の垂直線から成る。右側の図は実際のところ図とは呼べず、反対側の扉と同一の形が描かれている。左の扉は青銅の蝶番と金の据え付け具を備えた白大理石で作られている半面、右の扉は錆びた鉄で出来ている。

扉が開いている時、前室にいる人物は、扉の向こうにいる何者かが自分の声で話しているのが聞こえると主張する。

SCP-4840-Aは戸口について 「通路さ、他と同じくな。この場所と何処か別な場所の間にある物だ。他と違って、この通路は古く、敷石は良く踏み均されている。世界の光はあの場を離れて久しく、定命の者たちはもうそこを歩くことはできない。」と述べている。

自分の声で話しているの部分はSCP-3930 – パターン・スクリーマーにクロスリンクされています。SCP-3930は一定数以上の人間から知覚されると生命の喪失に繋がる空虚であり、準要注意団体「パターン・スクリーマーズ」と関する作品でもあります。この辺りの記述も謎めいています。

日の出の寺院、日没の寺院、夜の寺院と見てきましたが、アセムの王国の初期が日の出の寺院、中期が日没の寺院、後期が夜の寺院で描かれているようです。

また、日の出と日没の寺院は、太陽の子らと呼ばれている人間たちがテーマで、夜の寺院は夜闇の子らがテーマであるとも考えられます。SCP-2932- ティターニアの檻では、SCP-2932を管理するSCP-2932-Aは人間たちを太陽の子らと呼んでいました。

寺院と大広間については以上です。

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おわりに

SCP-4840でした。有り余る程の情報量でしたね。

途中で何度かDJ・カクタスの提言Ⅲの話を書きましたが、こちらの提言作品は翻訳された中では1、2位を争う非常に長い作品ですが、面白いのでおすすめです。時間があれば挑戦してみてはいかがでしょうか?

SCP-6666も今後記事にしたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました!

 

SCP-4840 – The Demon Lancelot and the Flying City of Audapaupadopolis
画像
SCP-4840-A
SCP-4840-B
原著者 djkaktus
http://www.scp-wiki.net/scp-4840
翻訳者 C-Dives
http://scp-jp.wikidot.com/scp-4840
作成年:共に2019

SCP-4812 – Wrath
原著者 djkaktus
http://www.scp-wiki.net/scp-4812
作成年:2018

SCP-4008 – Wormwood
原著者 Mortos
http://www.scp-wiki.net/scp-4008
作成年:2018

上記のSCP記事に基づくアイキャッチ画像を除く本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。

 

コメント

  1. 最近この動画を作られた方のを見てから、より理解したく探していた所にこの記事を見つけました。とてもわかり易くまとめて頂きありがとうございました。
    DJカクタスの提言はまだ読んでなかったので、そちらもぜひ読んで見たいと思います。
    本当にありがとうございましたm(_ _)m

    • お役に立てて何よりです。励みになります。

  2. サルース2世の一人息子とギルガメッシュの勝敗が逆になってませんか
    I watched as the Daeva hero Gilgamesh slayed Sarrus II’s only son in single combat on the fields of Jerusalem.
    あとなんかSCP-JPって怖いくらい訳者の裁量が重んじられてるんですけど、とりあえず一人息子の件は直ってるからいいものの、間違いや更新漏れに気づかれたなら普通にディスカッションで指摘されてはいかがでしょうか…。「これは翻訳者の深い意図があるに違いない」で読みづらすぎる歪な日本語とか単なる誤訳がスルーされすぎてる気がします。
    妥協と翻訳者への無根拠な信頼が8年間積み重なって、あのサイトなんかとんでもないことになっているように見えるのですが…。

    • ありがとうございます。確かに逆ですね。修正します。

      > ディスカッションで指摘
      そうですね、正直なところ怠っていました。気を付けます。

      誤訳については、翻訳投稿ガイドに従えば初訳者
      でなくとも修正可能なので、裁量で直せないというよりは、増え続ける作品に対して翻訳者が少なく気付かれないのだと思われます。

      • ありがとうございます。

        「SCP 誤訳」で検索かける限りどちらかというと以下の4点が実情なのだろうと思います。

        ・非公式時代、および転載以降も、気付いてる方が多数いる中で放置されまくった
        ・原文読まないで「わからないのは原文がもともとそうなのだろう」という無根拠な思い込んでしまった
        ・上記2点どちらが「わからない」原因なのかわからないがゆえ、他支部産の記事が敬遠されるようになった
        ・それはそれとして前述したように、無根拠に訳質を信頼する向きがある
        ・これだけ誤訳まみれなのに議論もされず放置されてるプラットフォームですから、そこに自分が翻訳修正をする勇気が出ない (それがまた別ベクトルで誤訳だった場合に追修正してくれる人が出ない恐怖)

        訳質を疑って議論する風潮が高まればいずれの問題点も好転の余地があるように思いますし、仮に誤訳じゃなかったとしても考察議論に繋がるので、JPのディスカッションがENに比べて全然盛り上がってない現状を打開することにも繋がるんじゃないかなあと。ちょうどさっき最近のフォーラム投稿見てたら2700exに一件投げられてました (挙げられてる点自体は過去に出されてた批判とかぶってるのですか…)。ああいうのが増えてほしいですし私も努めています