SCP-902 – 最後のカウントダウン 内容整理と考察

SCP紹介&内容整理
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突然ですが皆さんはSCP財団で認識災害といえば何を思い浮かべるでしょうか?SCP-040-JP – ねこですよろしくおねがいしますや緋色の鳥SCP-2316 – 校外学習などが有名です。このような有名な作品は解説や考察がネット上に存在しますが、中にはあまり考察されていない認識災害系の記事もいくつか存在します。

今回はそんな記事の中から、SCP財団の初期に投稿されたあまり考察されていない(と思われる)作品、SCP-902 – 最後のカウントダウンの内容整理と考察をしてみました。

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SCP-902とは

SCP-902を説明する前に、まずはSCP-902を開くと最初に表示される文章を読んでみます。最初に以下の文章が表示されます。

警告

以下の報告書はアレフメタレベルのミーム的認識災害を引き起こすことが証明されており、現在の財団の技術では対抗することが出来ません。ファイルの閲覧から身を引きたい関係者はこの時点でブラウザを閉じ、記憶処置を受けるため上司に従って下さい。従うことを怠った場合、強制的な処置に値することになります。

レベル4の許可書が必要です。

続行しますか? はい / いいえ

こちらは警告文となっています。SCP-902を閲覧するとアレフメタレベルのミーム的認識災害を引き起こすそうです。ミーム的とあるので人々の間に拡散される可能性を有する認識災害のようです。

それでは本文を見ていきます。SCP-902のオブジェクトクラスはKeterと書かれており、危険性か収容難度が高いことが予想されます。

特別収容プロトコル

特別収容プロトコルは以下のようになっています。

特別収容プロトコル: SCP-902は北極基地シータ-12に移管されており、このサイトに保管されている唯一のSCPです。このサイトには50人の保安要員のチームが配置されることになっています。現時点でSCP-902の研究は行われていません。その番号以上のSCP-902に関する知識は、レベル3以下のスタッフに制限されなければなりません。限られた人数のシニアスタッフだけはSCP-902の存在を知っておかなければなりません。いかなる時点でも、O5のうち1名のみがSCP-902のことを知ることが許されています。北極基地シータ内部からの機密漏出の場合、サイトに設置された水爆が遠隔爆破されます。SCP-902は、時期尚早な破壊から常に守られねばなりません。

SCP-902は北極基地シータ-12に単独で保管されており、サイトには50人の保安要員のチームが配置されることになっています。このオブジェクトの収容のためだけに過酷な環境である北極にサイトを用意し、多くの人員を割いています。

非常に厳重な収容環境ですね……。

SCP-902の情報については閲覧が制限されています。このような閲覧制限はSCP財団の報告書に良く見られるもので、通常は上位のクリアランスレベルを有するものだけが閲覧できると定められることが多いです。しかしながらSCP-902はこれとは逆で、下位のクリアランスレベルを有するものだけがその情報を閲覧できると定められています。

具体的には、クリアランスレベル3以下のスタッフのみが、SCP-902の情報を閲覧することができると書かれています。

セキュリティクリアランスレベルによると、レベル3を超えるクリアランスレベルには、サイト管理者、セキュリティ責任者、機動部隊指揮官に与えられるレベル4、O5評議会員に与えられるレベル5がありますが、このクリアランスを有する場合は、SCP-902に関してはアイテム番号(902)だけしか知ることができません。

ただし、限られた人数のシニア(上級)スタッフだけはSCP-902の存在を知っておくことになっています(SCP-902の情報とは書かれていないため、ここで言っているのは、SCP-902に関する情報ではなくアイテム番号のことだと思われます)。

これはおそらく認識災害の問題でこのように制限されているのだと思われます。どういうわけかO5に関しては、1名のみが情報を知ることが許されると書いてあります。

ちょっと気になりますがとりあえず続きを読んでいきます。

特別収容プロトコルではこの他に、北極基地内部から機密が漏出した場合の対応として、サイトに設置された水爆を遠隔爆破することが定められています。

情報流出に水爆で対処するとは、周辺環境に甚大な影響を及ぼし、大規模な隠蔽工作が必要となる大きすぎる弊害のある対応のように見えます。このような手段が必要であるほど危険な認識災害なのでしょうか?

この点も疑問を覚えますが、続きを読んで行きます。特別収容プロトコルの末尾にはさらに気になることが書かれています。「SCP-902は、時期尚早な破壊から常に守られねばなりません」とあります。いずれは破壊するということでしょうか?オブジェクトを破壊するのは財団ではなく、世界オカルト連合のやり方に思えますが、どういう意味なのでしょうか?

次に説明を見てみます。

説明

SCP-902はおよそ成人の頭程度の大きさの箱で、寸法は30cm x 15cm x 19cm。約60年間財団の監視下にあったにも関わらず、約30年前に使用されていたタイプの弾薬箱に見える。SCP-902は鉛で作られており、SCP-902の内部のアイテムの構成は不明。

SCP-902は、「カチカチ」と表現される音を出す。この音を聞いた人は誰でも、カウントダウンしていると確信するようになる。箱を開いた時、中は空のようだが、カチカチ音は残り、オブジェクトはカウントダウンを継続する。個人間の接触、この報告書を読むことを問わずSCP-902を知った者は誰であれ、箱の中にあるものは何であれそれは恐ろしく危険であると確信するようになり、カウントダウンが完了する前ではなく、完了直後に破壊されねばならないと確信するようになる。

SCP-902に暴露したスタッフは、典型的には中のオブジェクトを見つけようとして箱の開け閉めを繰り返し続ける。

非常に簡潔な内容ですね……。

報告書では最後に意味がよくわからない文章がでてきますが、それは後回しにして、先に説明の内容を確認してみます。

SCP-902は「カチカチ」と表現される音を出し、この音を聞くとSCP-902がカウントダウンしていると確信するようになります。これは箱の開閉に関わらず継続する模様です。

この「SCP-902がカウントダウンしていると確信する」という現象は、音を聞くと現れる異常性であるため、SCP-902は聴覚的な認識災害を有すると考えられます。

続く説明によると、SCP-902を知った者は誰であれ、箱の中にあるものが恐ろしく危険であると確信するようになり、カウントダウンが完了する前ではなく、完了直後に破壊されねばならないと確信するようになります。

さらにSCP-902に曝露したスタッフは、典型的には中のオブジェクトを見つけようとして箱の開け閉めを繰り返し続けます。

こちらもSCP-902を認識した際に発現する異常のため、認識災害であると考えられます。

続けて最後の部分を読んでみます。ここまでは通常の報告書と同じような文章ですが、報告書の末尾に奇妙な記述が現れます。

オブジェクトは存在しない。オブジェクトは存在する。それは破壊されなければならない、カウントダウンが止まる時に。我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。

この記述は何なのでしょうか?おそらく最も可能性が高いのは、SCP-902による影響でしょう。実はこのSCP-902に付けられていたページ下部のメタタグの中には、認識災害以外にも異常性を現すタグがありました。それは情報災害です。

タグリストによると情報災害とは、言及するあるいは記述する際に異常な反応が発生するという異常性です。例えば、SCP-426 – 私はトースターは、情報災害を持つオブジェクトですが、SCP-426について記述すると、必ずその記述は一人称になってしまいます。

先ほどの文章がSCP-902の情報災害により書かれたものだとすると、この文章が意味することは何でしょうか?「オブジェクトは存在しない。オブジェクトは存在する。」という部分は明らかに矛盾していますが、これはSCP-902に曝露したスタッフが認識災害により箱の開け閉めをしてしまうという異常な行動を、曝露したスタッフの視点で記述しているように思えます。

曝露したスタッフは恐ろしく危険なものが箱にあると確信し、中身を見ようとして箱を開けますが、箱の中には何もないように見えるためにオブジェクトは存在しないと考え、箱を閉じるのだと思われます。しかし一度箱を閉じても恐ろしく危険なものが箱にある――オブジェクトは存在する――という確信は消えず、再び箱を開けようとします。

これが文章の意味するところではないかと思われます。

では、続いての「それは破壊されなければならない、カウントダウンが止まる時に。」という記述はどうでしょうか?

この記述は、「カウントダウンが完了する前ではなく、完了直後に破壊されねばならないと確信するようになる。」という異常性の説明と一致しており、こちらも曝露したスタッフの視点で記述されていると考えられます。

しかし、この記述自体に異常な行動を引き起こす認識災害の力があるのか、それともただ単に認識災害に曝露したスタッフの視点で記述されるだけなのかはまだ分かりません。

 

では最後の文章「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」という部分はどうでしょうか?こちらも同様に曝露したスタッフの視点で書かれていると思われます。

まず「我々は偉大な仕事を続けている。」についてですが、重要なのは我々の仕事と書かれている点です。我々の仕事、すなわち曝露したスタッフの仕事とは何でしょうか?

それは……財団の仕事です。

「我々は偉大な仕事を続けている。」という記述は、先ほどの認識災害により引き起こされる異常な行動を、自分たち財団職員が行うべき仕事であると錯覚していることを表しているように思えます。

ここまでは素直に解釈できますが、問題は「我々は止められなければならない。」という記述です。こちらは何の異常を表しているのでしょうか?

まず文章の意味を考えてみたいと思いますが、この文章中の「られる」を受け身と解釈するか、それとも可能と解釈するかで意味合いが変わってきます。そこで意味を確認するために、原文を見てみます。原文では”We have to be stopped.”と受動態になっており、受け身の意味であることが分かります。

したがってこの文章は「我々自身が止められないといけない」という意味になります。何を止められないといけないのでしょうか?それは直前にあった文章中の「偉大な仕事」のことだと思われます。

つまり、我々は偉大な仕事を続けているが、我々(の仕事)は止められなければならない。という意味になると思われます。

文章の意味することは分かりましたが、内容は矛盾しています。次は、この文章が何の異常性を記述しているのかを考えてみます。

まずは、今までに判明した異常性を整理してみます。SCP-902は以下の異常性があります。

  1. 「カチカチ」と表現される音を出す。
  2. 「カチカチ」音を聞くとSCP-902がカウントダウンしていると確信するようになる。
  3. SCP-902を知った者は箱の中にあるものが危険であると確信するようになり、カウントダウンが完了する前ではなく、完了直後に破壊されねばならないと確信するようになる。
  4. SCP-902に曝露したスタッフは、典型的には中のオブジェクトを見つけようとして箱の開け閉めを繰り返し続ける。

これらの異常性と報告書の最後の文章を照らし合わせると、先ほど述べたように「オブジェクトは存在しない。オブジェクトは存在する。」は箱の開け閉めを表していると考えられることから、4番目の異常性に対応しています。「それは破壊されなければならない、カウントダウンが止まる時に。」は、3番目の異常性に対応しています。

しかし、「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」という文章はどの異常性にも対応しているようには見えません。近いのは4ですが、箱の開け閉めは「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」とは関係がなさそうに……。

ん?我々の仕事?箱の開け閉め?

……。

いや、違います。関係がありました。

箱の開け閉めは確保・収容・保護を行うか否かに対応していると思われます。

我々の仕事とは財団の仕事です。異常な存在の確保・収容・保護がその職務です。オブジェクトが存在するなら確保し、収容・保護します。逆に言えばオブジェクトが存在しないなら、確保・収容・保護は行いません。

箱を閉めることは確保・収容・保護を行うこと、つまり、偉大な仕事を続けていることであり、箱を開けることは確保・収容・保護は行わない、止められなければならないということではないでしょうか?

これまで報告書の最後の文章は曝露したスタッフの視点から書かれているのではないかと述べましたが、「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」も同様に、曝露したスタッフに起こる異常性が、スタッフの視点から書かれていると考えられます。

「中のオブジェクトを見つけようとして箱の開け閉めを繰り返し続ける」異常性は、「オブジェクトは存在しない。オブジェクトは存在する。」と表現され、それがエスカレートする形で「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」とも表現されているのでしょう。

順を追って言うなら「オブジェクトは存在しない。オブジェクトは存在する。」と考え、箱を開け閉めすることは、「確保・収容・保護を行う。確保・収容・保護を行わない。」と考えることに繋がり、それが「我々は偉大な仕事を続けている。我々は止められなければならない。」という文章で表されたと思われます。

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財団はSCP-902の影響下にあるのか?

最後の文章の解釈はできましたが、ここである疑問が生まれます。最後の文章は曝露したスタッフの視点から書かれていると考えましたが、この記述は、はたして財団に認識災害として影響を与えているのでしょうか?

実は財団が影響下にあることを示す文章が収容プロトコルにありました。それは最初に読んだ際に気になっていた次の文章です。

SCP-902は、時期尚早な破壊から常に守られねばなりません。

もうお分かりかと思いますが、この文章は、カウントダウンが完了する前に破壊してはならないことを指示しているように思われます。

つまり「カウントダウンが完了する前ではなく、完了直後に破壊されねばならないと確信するようになる。」という影響を財団も受けていると解釈できます。

冒頭の警告

以下の報告書はアレフメタレベルのミーム的認識災害を引き起こすことが証明されており、現在の財団の技術では対抗することが出来ません。

によれば、財団はこの認識災害の影響を打ち消すことができません。財団はすでにこのSCP-902の影響下にあり、特別収容プロトコルにある厳重な警備はこの認識災害の影響で定められたということになります。

しかしながら、財団が完全にSCP-902の影響下にあるのかというとそういう訳ではないように思われます。認識災害の警告が書かれている以上、財団上層部もSCP-902が強力な認識災害であることは承知しています。また特別収容プロトコルには、SCP-902に関する情報の閲覧は制限されていると書かれています。

つまり、SCP-902の収容は認識災害の影響下にあるクリアランスレベル3以下の職員により行われており、財団上層部は職員がSCP-902の収容が認識災害の影響下にあることを知りつつ、影響がこれ以上拡がらぬよう情報の閲覧を制限しているのだと思われます。

特別収容プロトコルには、O5の1人だけがこの情報を知ることができると書かれていました。これも他のO5に影響が広がらぬようにするためだと思われます。SCP-902の情報を知ると認識災害の影響を受けるため、SCP-902を知っているO5の1人は、もしいるなら、既に認識災害の影響下にあると考えられます。

ただ、特別収容プロトコルには、この情報を知ることができるとあるだけなので、必ずSCP-902を知っているO5が1人いるとは言えません。

O5にも番号以外の情報を知らせないという選択肢があるようにも感じられますが、財団の最高管理官であるO5は、その職務上収容下のオブジェクトを知る必要性とそれを行う権限があります。もしSCP-902を知らないO5がその権限を用いてSCP-902の情報を不用意に取得すれば、SCP-902を知る者、すなわち認識災害の影響者が増える可能性があります。そのため、SCP-902の情報はO5のひとりだけが知ることができるように定められていると思われます。

SCP-902は認識災害の影響により危険であると見なされ、通常よりも過剰に高いコストで収容されていると考えられますが、収容さえできれば世界の正常性は保たれるため、この認識災害の影響は許容範囲にあると考えられます。

隠し文章

報告書はここで終わりですが、実はこの報告書には文章が隠されています。SCP財団にサインインした状態で読むと以下の記述が加わります(※[ユーザー名]にはSCP財団に登録したユーザー名が表示されます)。

それを開けるな[ユーザー名]。それはお前にして欲しいのだ。それはお前にさせる必要があるのだ。頼む、[ユーザー名]、それを開けろ。手遅れになる前に。

こちらの文章は読者である[ユーザー名]に対しての呼びかけとなっています。報告書の執筆者がわざと書き残したとは考え難いので、これも記述すると現れるSCP-902による情報災害であると思われます。その内容はSCP-902を開けるなという文章の後にそれを開けろと続きます。

これは説明にあった「SCP-902に暴露したスタッフは、典型的には中のオブジェクトを見つけようとして箱の開け閉めを繰り返し続ける」という認識災害そのものです。

つまり、SCP-902による情報災害で文章が改変され、SCP-902が読者に対しても認識災害を引き起こそうとしているのだと考えられます。

SCP-902は強力な認識災害により財団職員をその影響下に置き、その結果厳重に収容されているのです。

なお原著者であるAdminBright氏は、このSCPについて、財団のフォーラムのThe Leakというスレッドで箱は存在しないと以下の通りに述べていました。

SCP-902
-There is no box.

もしかすると箱自体も存在せず、ただ認識災害のみが残っているのかもしれませんね……。

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おわりに

SCP-902 – 最後のカウントダウンでした。いろいろと解釈できそうな作品でした。ちなみにこのSCPよりも厄介な箱のオブジェクトが日本支部にあります。SCP-938-JP – からばこです。こちらも読んでみてはいかがでしょうか?

最後までお読み頂きありがとうございました!

 

 

    SCP-902 – The Final Countdown
    原著者 AdminBright
    http://www.scp-wiki.net/scp-902
    作成年:2011
    SCP-902 – 最後のカウントダウン
    http://ja.scp-wiki.net/scp-902
    翻訳者、作成年不明
    アイキャッチ画像を除くこの記事の内容は『クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンス』に従います。

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