吊られた王とアラガッダの大使の正体とは?SCP-701の謎に迫る関連SCP・Tale紹介

吊られた王アイキャッチ SCP紹介&内容整理
吊られた王アイキャッチ
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SCP財団初期の有名な記事にSCP-701 – 吊られた王の悲劇という作品があります。こちらは上演すると流血の惨事が発生するというSCPらしい怪奇系の作品で、サイトの歴史と文化にとって重要であると認められたSCP財団殿堂入りコレクションでもあります。

そんな本作ですがその内容には多くの謎があります。中でも気になるのは上演中に出現するSCP-701-1と指定された謎の人物と吊られた王の正体です。また、本作に名前が出てくる「Alagadda(アラガッダ)の大使」はサーキック・カルトに関連する作品、『SCP-2264 – アラガッダの宮廷で』に出てくる異次元の都市、アラガッダ(Alagadda)との関連が疑われます。

今回はSCP-701を紹介した後に、この2人の人物の正体に迫るSCPやTaleを紹介します。

SCP-701の報告書は少々まとまりが悪いため、以下では内容に沿って少し翻訳や文章を変えています。

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SCP-701- 吊られた王の悲劇

SCP-701 – The Hanged King’s Tragedy

SCP-701「吊られた王の悲劇」は五幕からなるチャールズ1世時代(1625年 – 1642年)の復讐悲劇。オブジェクトクラスはEuclid。

「吊られた王の悲劇」は1640年に出版されたことが知られているが、台本の作者は書かれておらず、出版社の一つであるウィリアム・クックはその後すぐに歴史から姿を消した。奇妙なことに、テキストはロンドン書籍出版業組合の記録には現れなかった。

劇を上演すると、謎の人物(SCP-701-1と指定)が登場し、観客と演者との間で「精神病的、自殺的な振る舞い」が突発的に発生する。歴史的推計によると過去三百年間に█████人から█████人以上の人々の命が、奪われたと見積もられている。

歴史的な記録の調査によると、イベントは一般的に同じパターンを辿るが、上演は必ずしもイベントの発生で終わるわけではなく、██回発生した上演のうち、██回(36.78%)のみがイベントの発生に繋がっている。

上演すると殺人や自殺が起こるというのがSCP-701の異常性です。上演するとどのようなことが起こるのでしょうか?以下はその一般的なタイムラインです。

イベント1~2週間前(7-14日)

ドレスリハーサル(芝居の衣装を着て行われる舞台稽古)の間、出演者たちは出版された台本から自然に逸脱を始める。逸脱は、俳優が新しい台本の版に従っているかのように、整然と首尾一貫している。キャストと裏方はその変化に全く気づかないか、もともとそういう台本であったのだと答える。

本来の筋書きとは異なる展開が自然に進行するようです。

イベント2-3時間前

イベントの発生は一般的に初演の間、そうでなければ最も出席者の多い公演(一般に開演から一週間以内)に起こる。

イベント1-2時間前

第一幕の最後のシーンで、SCP-701-1がステージに現れる。たいていは舞台の脇、あるいは背景に現れ始める。SCP-701-1は舞台へ上がる際も降りる際も舞台裏を通っているようには見えない。舞台からはただ単純に消える。役者たちは少なくとも最初の頃はSCP-701-1について注意を向けたりコメントしたりはしない。

SCP-701-1がステージにどこからともなく現れるようです。SCP-701-1の画像はこちらです。

SCP-701(新)

 

イベント

第五幕の晩餐会のシーンでSCP-701-1は「吊られた王」として演劇に現れる。役者たちはしばしば自然と舞台に現れるように見える小道具を使い、お互いに殺し合いや自殺を行う。観客席でも暴動が発生し、観客たちはそれまでの人間関係に関わらず目の前の相手を誰であれ無関係に攻撃する。

惨劇は第五幕の晩餐会のシーンで起こります。このときSCP-701-1は「吊られた王」の役として登場します。

イベント後

もし生き残った観客たちがいれば、彼らは劇場を出る可能性がある。その場合、彼らはランダム、あるいは日和見的な暴力行為に関与し続ける。この場合犠牲者たちは鎮静、あるいは抑制を必要とする。犠牲者達の本来の人格は”イベント”のおよそ24時間後に戻り始める。生き残った犠牲者たちは通常、心的外傷を示す徴候を見せる。何人かはイベントの記憶を失う。残りは永久的な昏睡状態、あるいは精神病に陥る場合がある。

生き残っても心的外傷や記憶喪失、永久的な昏睡状態、精神病に陥ります。

SCP-701である「吊られた王の悲劇」は、上演すると一定の割合で舞台上の役者と観客により惨劇が発生し、生存者にも悪影響が生じるという危険なオブジェクトでした。次は収容方法を見ていきます。

特別収容プロトコル

特別収容プロトコルは以下のようになっている。

SCP-701に関するすべての資料は、貯蔵サイト██の三重ロックを施された書庫に保管される。これらは現状以下のアイテムから構成され、持ち出しは禁止されている。エリアへのアクセスは重度の監視を受け、どんなことがあろうとも、書庫へのアクセスにはL████, R█████ ,J██████博士からの直接の許可を得る必要がある。

  • 2部の現存する1640年版のクォート版のコピー
  • 27部の1965年版の大型ペーパーバック
  • 10部の1971年版のハードカバーのコピー
  • 21部のフロッピーディスク([削除済み]への強制捜査により入手されたデータから成る)
  • 1本のS-VHSビデオカセットテープ(SCP-701-19██-Aに指定)
  • 1本の起源不明の鋼鉄製のナイフ(SCP-701-19██-B)

財団のエージェントは可能である場合は必ず、これらのアイテムを確保または破壊することになっており、SCP-701の出版・上演を阻止するため、絶えず監視して抑制している。

コピーの起源を探る・隔離させるすべての試みは失敗したものの、台本の出版を抑制する試みは概ね成功しており、1971年の学術版のコピーの殆どは拡散前に破棄された。しかしながら、1965年版の大型ペーパーバックのコピーが、若干の規則性を持って大学と高校の図書館に出現しており、またアップロードされた台本が時には異なるタイトルが付けられオンラインで入手できるままとなっているなど、出現を完全に止めることはできていない。

SCP-701は何度も繰り返し出現しているようです。次はイベントの発生事例を見ていきます。

発生事例

  • 18██年、アメリカ合衆国の██████,████,██での演劇公演で初めてのSCP-701″イベント”が起こる。
  • 19██年の██████,████,██における小劇場での公演
  • 1964年の██████████,███████████,の██████████大学による公演
  • 19██年の██████大学での公演(財団によって初めの抑制に成功)
  • 19██年の██████,CAにおける学生グループの公演
  • 19███年の██████████放送によるテレビ版(財団が放送前に差し止めることに成功)
  • 19██年の████████████████における事件(SCP-701-19██-1事件として指定)

典型的な発生事例は、19██年の█████████████, ████における高校の演劇発表会で起きたインシデントレポートSCP-701-19██-1に書かれており、出版された台本の詳細は文書SCP-701-1640-B-1に書かれています。

SCP-701は歴史上繰り返し出現しており、財団の抑止の試みにも関わらず、イベントが発生しているようです。

財団の研究者はSCP-701は自己進化するミーム的なウイルスであり、劇の台本を通じて未知の手段によって伝染すると考えられているようです。L████ 博士は[削除済み]とSCP-701の”イベント”に関連があるとの仮説を立て、衛星による観測の結果、19██事件の発生した████における██████レベルの突出は[削除済み]との一致を指し示していると書かれています。

L████博士はKeterへの格上げを提案したもののO5-█によりXK-クラスシナリオを起こしうる証拠がないとして拒絶されています。

以上がSCP-701の内容です。

吊られた王の悲劇の内容

吊られた王の悲劇の内容は文書SCP-701-1640-B-1に書かれています。こちらは1640年版のクォート版の要約です。劇中には「Alagaddaの大使」という人物が登場します。

簡単にまとめると「吊られた王の悲劇」はTrinculo王国を舞台としたアントニオという下級貴族の復讐譚です。復讐する相手はゴンサーロという人物。ゴンサーロはTrinculoの王妃イザベラと共謀し、Trinculoの王であるスフォルツァに睡眠薬を盛り、王を殺害。ゴンサーロは王妃イザベラと結婚し新国王として即位します。

しかし即位式の後に酔ったイザベラが、幾人かの廷臣の前で、ゴンサーロ達が先王スフォルツァを殺害し、先王を侮辱するために罪人のように木に吊るしたことを告白。さらにイザベラは即位式で初めて宮廷に足を踏み入れた下級貴族、アントニオが実はスフォルツァとイザベラの息子であり、正統な後継者であると話します。アントニオは初めそれを信じませんが、前王スフォルツァの幽霊によりそれが真実だと知ります。ここまでが第一幕です。

ここで、スフォルツァは「罪人のように木に吊るされた」ことが明らかになります。このことから本来の筋書きでは、木に吊るされたスフォルツァを指して、吊られた王の悲劇というタイトルが付けられたのだ思われます。

第二幕では、ゴンサーロはイザベラの告発を知り、告発を目撃したと確認できた3人の人物(Sortino公爵、公爵の娘Alinda、聖職者Cornari)を殺害する計画を立て始めます。ゴンサーロは女王を発狂したという名目で修道院に監禁し、Alagaddaの大使と面会を約束します。一方女王が収監されたというニュースを聞きアントニオは復讐を開始します。

※告発を目撃したと確認できた3人の人物の名前はわかりやすさのために、ソルティーノ公爵、公爵の娘アリンダ、聖職者コルナリと表記します。

第三幕では、ゴンサーロと彼の同盟者は夕食に目撃者であったソルティーノ公爵を招待し公爵を殺害、宮殿のコックに人肉シチューを作るよう命じ、さらに公爵の娘アリンダを修道院に収監します。

一方のアントニオは狂気を装いイザベラのいる修道院へ向かいます。イザベラはアントニオを殺すために毒を用意しましたが、アントニオはその計画を見抜き、逆にイザベラに毒を飲ませて殺害します。またアントニオの召使フランシスコは道に迷った結果、目撃者である公爵の娘アリンダの部屋へと迷い込み、彼女を解放しました。

第四幕と続きますがあまり重要ではなさそうな部分は飛ばして重要なところを抜粋します。第四幕ではAlagaddaの大使が出てきます。

第四幕ではゴンサーロは真実の隠蔽のために”秘密の協力”と引き換えにAlagaddaの大使から無味で強力な毒を手に入れ、弑逆(目下の者が、主君や親などを殺すこと)を確実に隠蔽するために晩餐会で廷臣たちを殺害しようとします。

第五幕はゴンサーロの晩餐会です。アントニオは晩餐会に乗り込み、ゴンサーロが毒を使う前に、ゴンサーロの同盟者Petruccioから得た署名された供述書により自身の血筋を証明します。すると怒った廷臣によってゴンサーロは追放されますが、アントニオはゴンサーロをかばい、彼を殺す代わりに彼を修道院に入れます。彼は召使フランシスコにアリンダとの結婚の計画をたてるよう命令し、廷臣たちのダンスによって舞台は幕を閉じます。

以上が吊られた王の悲劇の内容です。Trinculoの前王であるスフォルツァが吊られた王で、Alagaddaの大使はゴンサーロに”秘密の協力”と引き換えに強力な毒を与える役割を持っています。ゴンサーロが追放されてハッピーエンドを迎えるのが、本来の筋書きでした。

これが本来の吊られた王の悲劇ですが、イベントでは本来の筋書きからの逸脱が起き、惨劇が発生します。次はイベントで起こる逸脱を見てみます。

イベントによる逸脱

最初の逸脱は第一幕で発生する。召使フランシスコと高級娼婦の会話がなくなり、代わりに台本にはないアントニオの長い独白が始まる。また、SCP-701-1が間接的に目撃される。この独白は正確なキャロライン時代(英国王チャールズ 1 世の時代、1625から1649年までを指す)の文法であることが確認されている。

その後、幕が進むにつれ度々SCP-701-1が現れる。途中、リハーサルではカットされた、ゴンサーロが宮廷のコックにソルティーノ公爵の死体をシチューにするよう命じるシーンが始まる逸脱が見られ、る。第四幕第一場、台本上ではゴンサーロが道徳的葛藤を独白するシーンでは、ゴンサーロは大使に与えられる”秘密の協力”が十分であるか心配しているように見える。

第四幕第二場の最後、アントニオが彼の復讐のために刃を得るために舞台を去る場面では、SCP-701-1が現れ、アントニオは舞台を去るのではなく、SCP-701-1の正面で立ち止まり、小道具リストやその他の記録に全く言及されていない長い短剣を受け取る。この短剣が報告書にあった1本の起源不明の鋼鉄製のナイフ(SCP-701-19██-B)の最初の出現だと考えられている。

第五幕第一場、晩餐会のシーンで台本からの逸脱が本格的に始まる。本来アントニオは前王の殺害とアントニオの王家の血筋を証明する供述書を持って入場するが、アントニオは供述書ではなく、羊皮紙を持って入場する。羊皮紙はAlagaddaの大使からの請求書で、アントニオはこの請求書がゴンサーロの示した”秘密の協力”よりも多い金銭をAlagaddaへ提供するものであると宣言する。

SCP-701-1はここで舞台左手から現れます。すべての出演者たちはそれを認めているようで、ゴンサーロは立ち上がり、観客に向かって呪いの言葉を吐くと舞台左手へと逃げ出すが、舞台左手から現れた残りの出演者はゴンサーロを引き倒し、舞台へと連れ戻す。SCP-701-1は、舞台中心のゴンサーロの玉座へと移動し、SCP-701-1は玉座に立つ。

絞首刑のための紐の輪が舞台の天井から降りてくる。ゴンサーロがイタリア語(一部ではラテン語?)で罵り始めると、出演者たちはゴンサーロの首を輪に通し、縄の輪はぴんと張られ、出演者たちによりゴンサーロは吊るされ、彼は窒息し始める。

アントニオは話し始め、「そして、これで”秘密の協力”は完済される」そう言うとSCP-701-2(短剣)でゴンサーロの腹を引き裂き、ステージの向こう側にゴンサーロの腸がばら撒かれる。

アリンダがアントニオから短剣を受け取り「そして、この愚者の血によって王は吊るされる」そう言うと彼女はアントニオの喉を切り裂く。

出演者の人数分の紐の輪が舞台の天井から降りてきて、出演者たちはその下へと集まる。アリンダはSCP-701-1の隣に立つ。

そして、私たちの血こそが”吊られた王達”となる」アリンダが言うと、出演者たちは首を吊る。SCP-701-1は、吊られた死体の間を縫って舞台中央へと進み出る。

以上が逸脱の内容です。内容的には“秘密の協力”に対するAlagaddaの大使からの請求書に見合う額が用意できなかったために、ゴンサーロが殺害されたというストーリーであるように思われます。ゴンサーロの殺害で、請求に見合う対価が与えられ、”秘密の協力”が完済されたようです。また、愚者の血によって王は吊るされるとあるので、王が吊されるには流血が必要であるようです。

以上がSCP-701でした。イベントでは本来の筋書きからの逸脱が起きていますが、それはまるで別の物語が進行しているかのようです。はたしてこの別の物語とはなんなのでしょうか?次はそれを描いたTaleを紹介します。

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蛇について

About the Serpent

Tale、『蛇について』はSunnyClockwork氏の作品です。このTaleではサーキック・カルト関連の夏王朝の生き残りが語った内容が書かれており、夏王朝やサーキック・カルトの神格ヤルダバオート、壊れた神の教会が崇拝するメカーネのことなどが書かれています。

そして『王について』の段落では阿伽(Ajia)の王の話が書かれています。この阿伽の王という文字はSCP-701へのリンクとなっており、その内容から阿伽の王が吊られた王なのではないかと思われます。

その話は以下のような内容です。

阿伽の王はかつて大いなる深淵を尋ね、三人の死の君主を呼び出し、不死を願った。 死の君主は賭けを持ちかけ王は王家の血統、彼の治める民と動物たちを賭け金として、それに応じた。しかし王は敗北し、死の君主は王家の魂、人民、家畜を獲得した。

大いなる深淵とは、SunnyClockwork氏のTale、作り手と獣にも出てくる言葉で、作り手と獣によれば、そこは様々な偉大なる獣や神格が生まれた”定命の者の眼には見えない現実の裂け目”であり、その描写からヤルダバオートや壊れた神の教会が崇めるメカーネも同じ場所に存在していたと推測されます。おそらくは同じ場所を指していると考えられます。
三人の死の君主はSCP-1440 – どこでもない地からの老人へのリンクとなっています。SCP-1440は、男性老人に見える民族・年齢不明の人型オブジェクトで、人間の集団や人工物に接触し、数日以上過ごすと破滅的な出来事が起こるという異常性があります。

SCP-1440のTale、三度によれば、SCP-1440は戦争で命を失った際に3人の死神とトランプで賭けをして勝ち、再び生を得たものの、彼はそれに満足せず、さらに賭けを続けて勝利。三つの賞品を得ます。しかし、このことが死神の怒りを買い、彼は死を与えられずに上記の異常性に苦しみ続けていると書かれています。

この結果、王の国では災害・疫病・戦火により多くの人々が死に十分の一より少ない人々しか生き残らなかった。生き残った人々は反乱し、王家と役人を殺し、王を彼の宮廷に捕らえた。

恐れた王は大いなる深淵を再度尋ねた。無貌の神は「お前はまずは死なねばならない。そうすれば三日のうちに帰ってくるだろう。すべての血を消費することにより、お前は生きる」と答え、王は自らを宮廷に吊り、王国全土が歓喜した。彼らは彼の遺体を野に晒し、烏に食べさせた。

三日後、街に命はなかった。民はすべて血のない死体となっていた。神は使者を送り、翡翠の杯で街の人々の血を集め、王に捧げたのだ。しかし彼の体は烏に引き裂かれ崩れていたので、彼はそれを取り落としてしまった。血は流れ川となった。神は嘆息して言った。「お前は生きることはできず、死ぬこともないかもしれない」

王は恐慌し、もう一度血を乞うた。しかし機会は失われた。三人の死の君主は笑い、烏へと姿を変え、飛び去った。

Taleによると阿伽の王は不死をかけて3人の死神と賭けをして敗北。その結果、国は荒廃し、王は自身の宮廷に捕らえられます。死を恐れた王は大いなる深淵の無貌の神の言葉に従い、復活するために首を吊り、最終的に民を犠牲にします。しかし最後は生きることも死ぬこともできなくなったと語られています。

『蛇について』の『王について』で書かれていたことは以上です。このTaleによれば吊られた王の正体は阿伽の王ということになります。

しかし、阿伽の王の話がどのようにSCP-701に繋がってくるのかは結局のところ分かりませんでした。実はSCP-701のイベントが発生する理由については別のTaleで語られていました。

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そしてそれ故烏ら笑ひけり

And so the Crows Laughed

こちらもSunnyClockwork氏の作品です。こちらは内容的に王が宮廷に吊られた際の様子が描かれた作品であると思われます。内容については差異があるものの、『王について』で書かれていた内容がより詳細に描かれています。

『そしてそれ故烏ら笑ひけり』では、王は民衆の暴動により首を吊られて土に埋められます。『王について』では王は宮廷で自ら首を吊っていましたが、『そしてそれ故烏ら笑ひけり』では、王は民衆の手により「大きく高い木が偶然あった打ち捨てられた場所」で首を吊られました(差異がある理由については『王について』が夏王朝の生き残りによる話であることから考えると、伝承されるうちに内容が変化したというふうに捉えられます)。

民衆は2日目に病で血を流して死に、生き残った者も3日目に自殺・自傷で死に絶えます。王は、3日目に命がなく死んでもいない、何か別のものとして墓穴から這い上がり、宮廷に戻っています。

ここまでは『王について』で書かれていた内容と大体同じですが、本作品では、その続きが描かれており、王の帰還に続き、街が悪夢のような狂気の世界へと変貌していきます。

新たな街の誕生

王はかつての民の血を踏みながら「鋭く、錆びた棘で覆われた玉座が設置された地下」に向かい、棘に体を貫かれながら玉座に座ります。王はそこに永遠に座り続ける定めにあるようです。すると宮殿の廃墟は震え始め、街は変容します。その様子は以下のように書かれています。

しかしその時宮殿の廃墟は震え始めた。再び火の手が上がったが、それは過去の幻影ではなく、そして川の中の血は沸騰した。獅子の骨は立ち上がり、そして吠えた。

玉座の置かれた王の地下牢は、これらすべての中心であり、今や穴、王国全てを歪曲し内包する穴となった。全ては捻れ人ならざるものとなり、内と外は逆となった。空間は曲がり、時間は乱れ、街はそこではない別の場所にあり、しかし未だにその全てがあった場所にあった。

街は玉座の置かれた王の地下牢を中心とする、歪曲した時空間へと変化したようです。

王が玉座に座ると、壊れた仮面を身につけた死した道化師が現れます。道化師は血で満たされた銀の杯を差し出し、”彼は彼のものではない、耳慣れない音で”、「この我らが血は、吊られた王のもの。」と言います。王は杯を取りますが、折れ傷ついた手であったため杯を落とし、血は彼の新たな宮廷へこぼれ落ちます。

この血は吊られた王が復活するのに必要なものであったのかもしれません。『王について』では神が送った使者が、翡翠の杯で街の人々から血を集め、王に捧げていますが、王の体は烏に引き裂かれ崩れていたので、彼はそれを取り落としてしまい、王は生きても死んでもいない状態になります。

『そしてそれ故烏ら笑ひけり』では王は生きても死んでもいない状態になった後で、死した道化師により血で満たされた銀の杯を受け取り、血を落としています。

Tale間に差異はあるものの、使者(『そしてそれ故烏ら笑ひけり』では死した道化師)が集めた血を王は必要とするも、それを失うという点が共通しています。

血が新たな宮廷へこぼれ落ちると、死者がふたたび立ち上がり、その壊れた体を人に似た形に曲げ、新たな捻れた通りを歩き出します。彼らは、血を流すその顔を隠すために仮面をかぶり、彼らが生きて宮殿を奪った日にしたように、歓呼を上げ始めます。

本来、王が得るはずであったこぼれ落ちた血により死者が蘇ったのでしょうか?

彼らは一連の悲劇が全て大掛かりな仮面舞踏会であったかのように、新たな街を行進し、祭りを始めます。彼らは王が泣き、叫び始め、しかし彼の喉はただ一つの音も立てられなかったのでただ涙を流す中、笑い続けます。

そしてその街は、仮面をつけた死者たちが、その体が腐り落ちるまで祝福し行進する中、吊られた王に永遠に支配された。

そして、ここからがSCP-701に繋がってくる部分となります。

『烏ら笑ひけり』では王が吊られる前に、街から逃げた者たちがいたと書かれています。彼らは街を逃げたものの、捻れた街からの囁きに取り憑かれ、腐った魂の仮面舞踏会の夢を見ます。彼らは恐怖に震え、呪われた街についての戯曲、詩を書き、永久に地獄に落ちた王の歌を作り絵を描きました。それらはいくつかは失われ忘れ去られたものの、長い歴史を生き残ったものは、その鑑賞者を吊られた王の手の届くところへと送ることとなったそうです。

これはつまり、吊られた王の呪われた街の影響で作られた戯曲のひとつが、SCP-701、吊られた王の悲劇であったということが示されていると考えられます。

『そしてそれ故烏ら笑ひけり』には、SCP-701との共通点があります。Taleに描かれた王の姿は、鎖を手足に巻きつけており、SCP-701-1の画像も鎖が巻かれた姿になっています。

またTaleでは、王が血を受け取る際に道化師が「この我らが血は、吊られた王のもの。」と言いますが、こちらの言葉は、SCP-701を上演した際に発生するイベントに出てくる台詞「そして、私たちの血こそが”吊られた王達”となる」と対応していると見られます。

『蛇について』と『そしてそれ故烏ら笑ひけり』の2つのTaleでは、阿伽の王が引き起こした惨事により呪われた街が生じ、その街の影響で、SCP-701が生まれたということになっていました。

SCP-701の起源についてはこの2つのTaleで描かれていましたが、『そしてそれ故烏ら笑ひけり』に出てきた呪われた街とは一体何なのでしょうか?

おそらくこの街はサーキック・カルトに関連する作品、「SCP-2264 – アラガッダの宮廷で」に登場する異次元の都市、アラガッダ(Alagadda)のことを指しているのではないかと思われます。

次は「SCP-2264 – アラガッダの宮廷で」描かれたアラガッダを見てみます。

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SCP-2264 – アラガッダの宮廷で

SCP-2264 – In the Court of Alagadda

SCP-2264は錬金術に関連する手順により開く、異次元の都市(SCP-2264-B)へと通じる鉄扉(SCP-2264-A)です。財団のカリスト・ナルバエス博士による探索の結果、異次元の都市(SCP-2264-B)の正式名称はアラガッダ(Alagadda)であることが判明しています。

これはこの都市への来訪者である“クル=マナスの堂守(Wandsman of Kul-Manas)”から得られた情報であると書かれています。

アラガッダの異常性

このアラガッダは、通常の世界とは大きく異なる環境下にあり、様々な異常が観察されます。大きな特徴としては、内部では限られた色のみが生じます。具体的には黒・白・黄・赤のみで、空は黄色です。空には不明確な数の黒い星が存在しています。この星々は如何なる既知あるいは仮説上の星座にも対応していません。

アラガッダの建築様式は非ユークリッド的と書かれており、様々な曲面で構成されているようです。また、アラガッダでは通常の重力の法則は適用されないようです。上下逆さの階段を上っている住民たちが観察されています。

アラガッダは“微かにカビが生えたドライフラワー”または“古い本のそれとさほど違わない”香りがすると報告されています。都市の実際の規模は測定が困難ですが、組成不明な水より粘性がある黒い液体の海に囲まれた島に位置しているようです。

探索者への影響

アラガッダに入場した人物にも、異常が発生します。入場時に全ての私物が除去され、その服装は仮装舞踏会で着用される、特にヴェネツィアのカーニバルのような衣装に似たものに変化し、顔は仮面に覆われます。衣服は脱ぐことが可能なものの、仮面を外すことはできません。SCP-2264-Bの住民の大半も同じような姿をしています。

潜入したエージェントは彼らの衣装に多少の、しばしば“キチン質”と描写される有機質が存在することを報告しています。SCP-2264-Bの最も一般的な住民は大雑把なヒト型であり、SCP-2264-1に分類されています。潜入したエージェントによると、手足が多い者や少ない者、蛇のような人間がいたと述べられています。

潜入したエージェントへの異常はこれだけではなく、精神的な影響も受けます。アラガッダの探索者は、眠気のような倦怠感と、時間・空間を推定することの困難さを報告します。

アラガッダの探索を行ったカリスト・ナルバエス博士によれば、アラガッダにはほぼ白昼夢に近い性質があり、現実を夢または幻覚であると知覚させ、その裏にあるものを完全な形で認識することができないようです。彼はこれは罠ではないかとも考えています。

アラガッダは有形の場所であり、夢であるとは考えられていませんが、明晰夢を見た経験のある人物は、そうでない人物よりも遥かに強い自制能力を示します。

アラガッダには心理的な依存の危険性があるため、工作員は毎月交替して再配置を行います。最初の探査試行では8名の工作員がAWOL(無断離隊)扱いとなり、帰還した者たちも、観察したものについて筋の通った/詳細な説明をすることが困難でした。

アラガッダの探索者は夢の中にいるような感覚に陥り、結果として時間・空間を推定することが困難になるようです。また、住民たちは特に宮廷ではしばしば熱狂的な乱交に耽っており、探索者もそれに参加して我を失い、帰還できなくなるようです。

その外、住民の言語は探索者に理解できる言葉に翻訳され、書かれた文章は限度はあるものの、翻訳されたものが出現します。

アラガッダの権力構造

アラガッダにはある種の権力構造があり、そこに関わる実体は財団が認知しているどんな現実改変者よりも危険であるようです。

後述するクル=マナスの堂守(どうもり)によれば、アラガッダの王と4人の仮面を被った君主、そしてアラガッダの大使が存在するようです。中でも“アラガッダの王”と“アラガッダの大使”は危険な存在であるようで、クル=マナスの堂守は言及を避けようとしています。“アラガッダの大使”および“アラガッダの王”は、それぞれSCP-2264-4、SCP-2263-5に分類されています。

アラガッダを直接支配しているのは4人の仮面を被った君主であるようです。財団はSCP-2264-3と指定しています。

  • 苦悩の面被りし黒の君主。
  • 勤勉の面被りし白の君主。
  • 嫌悪の面被りし黄の君主。
  • 陽気の面被りし赤の君主。

彼らはアラガッダ国王の最高顧問だと言われており、堂守は、彼らの名に騙されてはならない、どの君主も負けず劣らずおぞましい存在だと繰り返し警告しています。4人の仮面のうち、黒の君主は過去に起こった政治闘争の犠牲者であり、恐るべき次元の澱みに叩き込まれたそうですが、戻ってくるのは時間の問題だとされています。

ちなみにSunnyClockwork氏のTale、ミッドナイト・パレードではおそらく黒の君主のが描かれており、とあるSCPとの関連が明らかになります。

カリスト・ナルバエス博士はこの都市国家の狡猾な魅力は、堂守が言葉で表現できないような恐ろしい真実を覆い隠していると述べており、堂守はここに来る余所者の多くはアラガッダの王に恩恵を求めていると述べています。

クル=マナスの堂守

ここでクル=マナスの堂守を説明します。クル=マナスの堂守はアラガッダにやって来た学者です。カリスト・ナルバエス博士はこの人物からアラガッダの情報を得ました。財団はクル=マナスの堂守をSCP-2264-2と指定しています。

堂守は性別はその有無を含め不明で嘴付きの仮面をつけ曲がった背中は美しいローブで覆われ、手には爬虫類よりも鳥類に似た鱗が生えており黒い鉤爪を有しています。

クル=マナスの堂守は、学者であり、ある種の旅行者または探索者であるようです。

「私はクル=マナスの堂守。貴方もご存じのように、一介の学者です。私は星々の平原を歩く者、天海の船乗り、平面を掘り進む者なのです。」

カリスト・ナルバエス博士による第2回探査では、クル=マナスの堂守は

「アラガッダの大使が戻って来たのを感じます。私は此処を離れますので、貴方がたもそうしてください。逃げるのです ― 腐敗を逃れるのです。いずれ貴方の領域を訪ねに行きましょう。」

と警告し、アラガッダの宮廷を後にしました。

アディトゥムはサーキシズム-ハブによれば、過去に存在したとされるサーキックの首都と見なされている場所です。クル=マナスの堂守はそこは恐怖の都で、都そのものと等しく悪しき民が満ちている、アディトゥムの魔術師王は、アラガッダの吊られたる王に匹敵するほど恐るべき太古の存在に仕えていると述べています。

アディトゥムの魔術師王はカルキスト・イオンのことです。この言葉からアラガッダの大使とサーキックとの間には何らかの関係があるようです。

機動部隊による探索

財団はこの探査の後に、アラガッダの王とアラガッダの大使の発見及びその脅威度判定するために、機動部隊プサイ-9(“深淵を見つめる者”)のエージェント、12名を派遣しましたが、生還したのは1名のみでした。

生還したエージェントによると、アラガッダに侵入した12人は発見対象を探してまるで迷宮のような宮殿を彷徨い、ひたすら下へと深く階段を降りていったそうです。しかし底に着いたと思った瞬間に外に逆戻りします。気が付けば彼らはアラガッダに侵入した地点、宮廷が見える最初の場所にいました。

しかし、そこは何かが違いました。空からは色が失われ、暗くなり、曇った灰色の夕暮れだけがありました。街の通りは空で、建物は荒れ果てているように見え、都市全体がはるか昔に放棄されたような有様を呈します。彼らの足音以外には何の音もしません。

彼らは再び宮廷へと戻りますが、そこで彼らは殺し合いを始めます。生還したエージェント、パパドプロスは、彼らはアラガッダの大使に見つかり、その娯楽のために殺し合いをしたと述べています。また、そんな事はしたくなかったが、選択の余地は無かったとも話し、彼らは強制的にそれを行わされたようです。

パパドプロスによればアラガッダの大使には顔、口、鼻や目がなく、体にぴったり張り付くような服とハイヒールのようなものを着ていました。その肉は黒く背が高く、しなやかで、両性具有的で、忌々しいほど誇らしげに立っていたと語っています。

その言葉は理解できなかったものの、音節ごとに自己陶酔的な毒が滴っていることをパパドプロスは感じます。アラガッダの大使は口が本来あるべき場所に手を当て、笑い続けていました。

パパドプロスは自身が生かされたのは目撃者を残すためではないかと語っています。

アラガッダの大使はパパドプロスを部屋から部屋へと引きずっていき、やがて立ち止まると、パパドプロスを持ち上げ、王座の前に掲げます。

そこで彼は王を見ます。それはその場に固定され、死体のような手と首の周りに神聖なる拘束があり、顔は、ベールの裏に隠れていました。

さらに、小悪魔のような生き物がその上を這い回り、ある一匹はまるで癒そうとでもするかのように痙攣する王の身体を撫でさすり、別の一匹は戒めを引っ張ってますますきつく締めあげていました。王は震え、身をよじり、青白い触手がそいつのボロボロのローブの中に外に蠢めきます。

パパドプロスの目の前でベールは捲られました。そこで見たのは神の形をした穴でした。

エージェント パパドプロス: [感情を込めずに] 神の形をした穴です。堕落し失敗した創造物の不毛な荒廃です。貴方が見ているのは遥か昔に死んだ星の光なのです。貴方の存在は死に逝く神が上げた悲鳴の残響に過ぎないのです。

目に見えない収束があります。貴方を取り囲んでいます。

そしてそれは絞首縄のように引き絞られるのです。

探索の内容は以上ですが、これがSCP-701とどう関連しているのでしょうか?

吊られた王との関連性

インタビューの最後には絞首縄という言葉がでてきました。これは明らかに吊られた王と関連する言葉です。また、他にも玉座に固定された王は『そしてそれ故烏ら笑ひけり』での吊られた王と類似しています。

機動部隊がひたすら階段を降りた先で到達した街の様子も、『そしてそれ故烏ら笑ひけり』での民が死に絶えた荒廃した街の様子と重なります。顔、口、鼻や目がなく、体にぴったり張り付くような服とハイヒールのようなものを着ていたアラガッダの大使の姿は、SCP-701のイベント時に出現するSCP-701-1の姿と似ています。

ここまでの描写から、アラガッダの王が吊られた王であり、アラガッダの大使がSCP-701-1である可能性が浮かび上がります

また、堂守、吊られた王の宮廷でというTaleでは、クル=マナスの堂守の手記という形で、アラガッダの宮廷が描かれています。Taleではクル=マナスの堂守もアラガッダの深部でアラガッダの大使と吊られた王を目撃しています。このTaleの吊られた王は茨の輪縄で窒息させられ、手枷、鈎、槍で繋ぎとめられて玉座の上で苦悶しており、そのベールの下には「神の形をした穴」がありました。

Taleのメタタイトルもアラガッダの宮廷が吊られた王の宮廷であることを示しているようです。

SCP-701との繋がり

SCP-2264の最後では改めてSCP-701との繋がりが示されます。

アラガッダに繋がるロンドン塔のマーティン・タワーに存在する鉄扉は、英国の貴族で錬金術師でもある、ロンドン塔に長期間にわたって収監されていた第9代ノーサンバーランド伯ヘンリー・パーシー(1564年4月27日-1632年11月5日)によって作成されたと考えられています。

作成者であると推定されるパーシー伯の文書の中から、著名な詩人であり劇作家でもあるクリストファー・マーロウに当てた未送付の手紙が見つかっています。

そこには、「余(ヘンリー・パーシー)は、其方(クリストファー・マーロウ)がその呪わしき戯曲を燃やし、灰に帰せしめることを望んでいる。其方の後援者が望んでいるのは堕落と冒涜だ。」と書かれていました。財団のンキル・ディアワラ博士は「ここで言及されている戯曲はSCP-701の可能性が高いと思われます。アラガッダに関する情報をより多く得るために脚本を調査する必要があります」 とコメントしています。

これは『そしてそれ故烏ら笑ひけり』に書かれていた、吊られた王の呪われた街の影響で戯曲が作られたという記述と重なります。クリストファー・マーロウがSCP-701を書いた可能性があります。また「支援者」の存在も明らかになります。

手紙には「余には其方を苛む邪悪が見えていなかった。余は其方に他の平凡な物ばかりを見せて回り、其方の美しき心の燃えがらを邪悪が包み込むに任せてしまったのだ。」と書かれており、劇作家であるクリストファー・マーロウが呪われた街の影響を受けていたことが示唆されます。

また「大使は我等を扱った時と同様、其方の事も手玉に取ろうとしている。」とあり、この二人は大使を知っており、またパーシー伯はアラガッダやアラガッダの大使を警戒しているようです。

知恵ある者であれば、余には見えなかった物を見定め、内に居る悍ましき王を弑することも叶うであろう。あの血の大都市を、あの恐るべき領域を、古の数え切れぬほどの罪を、呪うのだ。戯曲に火を放ち、下劣な後援者を拒否し、この狂気から立ち去ってくれ。

この手紙は送付されることはなく手紙の日付、1593年5月30日にクリストファー・マーロウは不審死を遂げました。

支援者がマーロウにSCP-701を書かせ、始末したのでしょうか……。

SCP-2264で示されたことをまとめると、アラガッダの王が吊られた王であり、アラガッダの大使がSCP-701-1であるように思われます。また、SCP-701を書いたのはアラガッダに影響されたマーロウなのかもしれません。

さて、SCP-701の起源についてはある程度形が見えてきましたが、そもそもアラガッダの大使の正体は何者でしょうか?また、なぜ吊られた王は玉座に固定されているのでしょうか?

次はその答えとなるかもしれないSCP、SCP-2732– 《缢王本纪》を紹介します。作者は『蛇について』・『そしてそれ故烏ら笑ひけり』と同じSunnyClockwork氏です。

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SCP-2732 – 《缢王本纪》

SCP-2732は、前世紀中に作成された木製の京劇舞台で、この舞台の半径60m以内に立っている人間が全七章からなる明王朝時代の(SCP-2732-1)のうち一章を全て読み上げると、京劇の衣装と顔化粧を施された木製のマネキン人形が、読み上げられた章に対応すると思われる演目を開始します。

この小冊子の内容は同一の出来事にそれぞれ別な物語を付けて綴ったものであり、描かれている同一の出来事は『蛇について』、『そしてそれ故烏ら笑ひけり』に書かれていた、吊られた王の物語と類似しています。

本作のメタタイトルは缢王本纪となっており、缢は中国語で「縊死(首をくくって死ぬ)する」という意味で、本紀とは帝王一代の事跡を記したものです。このことからSCP-2732-1は縊死した王、つまり吊られた王について書かれたものであることが示されます。

ではその内容を見てみます。ここでは翻訳文のみを引用します。

第一章

阿伽(Ajia)の王は、首を吊って死んだ。

さっそく阿伽(Ajia)の王が首を吊ったと書かれています。阿伽の王は『蛇について』に出てきた人物です。

章を朗読すると始まる演目では、中国皇帝の衣装を身に纏った顔化粧のないSCP-2732-2-Aと指定された人形が天井から白絹で首を吊った状態で姿を現し、15分間、痙攣し続けます。

やはりこのSCPは吊られた王に関連するオブジェクトであるようですね。

呪われた街、つまりアラガッダの影響で何者かが作った作品なのかもしれません。

第二章

嘗て、阿伽の国を治める王は首を吊ったが、死ぬことが無かった。その国の民は皆、仮面を被っていた。

第二章では第一章の文章とは異なり、首を吊っても死なず、国民が皆仮面を被っていたということが新たに加わっています。これは『そしてそれ故烏ら笑ひけり』で描かれていたことと一致しています。

演目では、二胡の楽曲が流れ、SCP-2732-2-A(皇帝の衣装を着た人形)が右手から中央へと進み出し、白絹で首を吊り、痙攣し始めます。そして、顔の前に白い木製の仮面を掲げている15体のSCP-2732-2個体群が舞台上に姿を現し、個体群はSCP-2732-2-A(皇帝の衣装を着た人形)を取り巻く輪を形作ります。演目は銅鑼を打ち鳴らす音で終わります。

第二章でも、SCP-2732-2-A(皇帝の衣装を着た人形)が登場します。記述内容と衣装から考えるとこの人形が阿伽(Ajia)の王であるようです。また15体のSCP-2732-2個体群は、顔の前に白い木製の仮面を掲げているため、阿伽の国の民を表しているようです。

第三章

阿伽の国で、王は首を吊ったが、死ぬことが無かった。蛇人たちは彼を恐れ、都を焼き払った。彼らは王を埋葬する前に、彼に仮面を被せた。

第三章では、今までの作品には見られなかった内容が加わっています。蛇人たちが王を恐れ、都を焼き払い、王を埋葬する前に、彼に仮面を被せたとあります。

蛇人たちとは何者でしょうか?蛇人たちはSCP-2481 – 大羿射日等に登場する、伝説的な中国の王朝、夏王朝の人々である可能性があります。彼らは蛇の特徴を有する外見を持っていたようです。

SCP財団における夏王朝はサーキック・カルトの神格、ヤルダバオートと壊れた神の教会が崇拝するメカーネの両者を信仰していたようで、SCP-2481 や『蛇について』・作り手と獣での描写からヤルダバオートを龍や女媧(じょか)、メカーネを蛇や伏義(ふっき)と呼んでいたようです。

SCP-2481の文書-2481には、夏王朝の人々は母たる龍と父たる蛇に似た姿になるために、12歳で変身の儀式を受け、農夫は鱗を、職人は蛇の頭を、学者や官吏は蛇の体を、支配者は龍の姿となると書かれています。SCP-2481に登場する、夏王朝の人物と見られる人型実体もアマガサヘビの外見に似た頭部を持っていました。

『蛇について』も夏王朝の生き残りが語った話をまとめたものでした。

阿伽の国は夏王朝の存在した時代にあったのでしょうか?

演目では二胡の楽曲が流れる中、SCP-2732-2-A(皇帝の衣装を着た人形)が右手から中央へと進み出し、白絹で首を吊り、痙攣し始めます。そして3体のSCP-2732-2個体が右手から姿を現します。そのうち1体は白い木製の仮面を掲げ、個体群の足は木製の蛇の尾に置換されており、動くことは可能なものの胴体を支え切れていません。

個体群は中央へと這い進み、床に倒れ込みます。すると銅鑼を打ち鳴らす音が響き、二胡の演奏が激しさを増し、SCP-2732-2-Aを含む全ての個体が炎上します。この時SCP-2732自体はこの炎による延焼被害を受けません。

約10分後、炎は鎮火し、個体群の残骸が消失します。

ここでのSCP-2732-2個体は蛇人を表しているようです。

第四章

阿伽の国には、宮廷の中庭で首を吊った王がいた。国を挙げてこれが祝福され、王の亡骸は野に打ち捨てられた。翌日、王の使者がやって来た。その者には顔が無く、しかし脅すように笑った。民は大いに怖れ、これは神か怪物の類に違いないと考えた。彼らはその者へと血の犠牲を捧げた。

第四章でも、今までの作品には見られなかった内容が加わっています。王の使者と呼称される人物が出てきます。この王の使者には顔がなく、脅すように笑うと書かれています。民はこの人物を怖れ、その者へと血の犠牲を捧げたとあります。

顔がないというのは、『アラガッダの宮廷で』の作中でのアラガッダの大使(顔、口、鼻や目がない)の描写と一致します。また血の犠牲は『蛇について』で、民が皆、血のない死体となり、神が送った使者が翡翠の杯で街の人々の血を集め、王に捧げたことを彷彿とさせます。

大使に民が血の犠牲を捧げたということでしょうか……。

演目では、衣装を纏わず、全身が黒く塗装されたSCP-2732-2-Bが新たに出現します。

二胡の楽曲が流れる中、他の章と同様にSCP-2732-2-A(皇帝の衣装)が右手から中央へと進み出し、白絹で首を吊り、痙攣し始めます。すると楽しげな合唱が始まり、15体のSCP-2732-2個体が右手から姿を現します。

SCP-2732-2個体群は中央へと進み出し、SCP-2732-2-Aを痛め付け始め、やがてSCP-2732-2-Aが床に落下します。その後、個体群はSCP-2732-2-Aを無視して左手を向きます。この時、合唱は止み、引っ掻くような物音が聞こえ、SCP-2732-2-Bが左手から入場します。

すると個体群がSCP-2732-2-Bに向かって歩み寄り、5分間にわたり跪くと演目は終了します。

演目の内容からは『そしてそれ故烏ら笑ひけり』で描かれていた、吊られた王が民衆によりリンチ・殺害されたシーンが思い浮かびます。SCP-2732-2-Bはアラガッダの大使なんでしょうか……。

第五章

その日、阿伽の国は、王を宮廷に幽閉した。王は従僕に何か策は無いかと尋ね、従僕は答えた、“死ぬまで戦い抜くより他ありませぬ”。斯くして白絹が用意された。王は言った、“余は彼の者どもの魂を手に入れる”。王は宮廷の庭で首を吊り、従僕もまた死を遂げた。国を挙げてこれが祝福された。

翌日、王の使者がやって来た。その者には顔が無く、それを見た民は、人間ではないに違いないと見做した。問われてその者は脅すように笑い、答えた、“汝ら血の犠牲を捧げるべし”。群臣たちはこれを悟り、言った、“我らは王に犠牲を捧げる”。民は皆言った、“全ての血は王のものである”。

第五章の前半の記述は『蛇について』の記述と類似したものとなっています。従僕が“死ぬまで戦い抜くより他ありませぬ”と述べ、白絹が用意されます。白絹は報告書の脚注によると、中国での首吊り自殺に伝統的に用いられていたそうです。王は宮廷の庭で首を吊り、従僕もまた死を遂げ、国を挙げてこれが祝福されました。

『蛇について』では王は反乱で宮廷に幽閉された王は、大いなる深淵を尋ね、無貌の神の「お前はまずは死なねばならない。そうすれば三日のうちに帰ってくるだろう。すべての血を消費することにより、お前は生きる」という答えを聞き、王は自らを宮廷に吊り、王国全土が歓喜しました。

後半の記述も『蛇について』の記述と類似したものとなっています。『蛇について』では神は使者を送り、翡翠の杯で街の人々の血を集め、王に捧げたと書かれていました。

演目では、京劇の“丑”(男性の道化師に相当する配役)に対応する衣装と顔化粧を持つSCP-2732-2-Cが新たに出現します。

SCP-2732-2-A(皇帝の衣装)と-C(道化師)が右手から入場し、二胡の演奏が他の章よりも遥かに高いピッチで流れた後、SCP-2732-2-C(道化師)は一枚の白絹をSCP-2732-2-A(皇帝の衣装)に手渡します。SCP-2732-2-Aは白絹を受け取り、ここでもまた首を吊り、痙攣し始めます。SCP-2732-2-Aが首を吊るのと、同時にSCP-2732-2-Cは床に倒れ込み、演奏が止み、引っ掻くような物音が聞こえます。

SCP-2732-2-Bが左手から、15体のSCP-2732-2個体が右手からそれぞれ入場し、15体の個体群がSCP-2732-2-Bに向かって歩み寄り、5分間にわたり跪き終了します。

演目では道化師が白絹を皇帝に渡しています。

第六章

その日、阿伽の国は、王を荒野へと追放した。王は従僕に何か策は無いかと尋ね、従僕は答えた、“神々に祈るより他ありませぬ”。一瞬の後、龍が現れた。その龍は母なる女神であった。龍は言った、“彼が帰還するにはまず誰かが死なねばならぬ”。龍に仕える六匹の獣は言った、“汝全ての血潮を贄とすべし”。王はまず従僕を犠牲に捧げた。竜はこれを見て“善し”とした。その後、王は白絹で首を吊った。国を挙げてこれが祝福された。

翌日、王の使者がやって来た。それは六獣のうちの一匹であり、身体は丸く、顔は無く、背には六枚の翼が生えていた。問われてその者は脅すように笑い、答えた、“汝ら血の犠牲を捧げるべし”。群臣たちはこれを悟り、言った、“我らは王に、獣たちに、龍に犠牲を捧げる”。民は皆言った、“全ての血は王のものである”。

第六章の前半の記述は今まで見てきた作品にはなかった事柄が書かれていました。王が荒野へと追放され、龍が王の前に現れます。その龍は母なる女神であったと書かれています。龍は“彼が帰還するにはまず誰かが死なねばならぬ”。と言い、龍に仕える六匹の獣は“汝全ての血潮を贄とすべし”と言います。

これは『蛇について』の記述に出てきた無貌の神が言った「お前はまずは死なねばならない。そうすれば三日のうちに帰ってくるだろう。すべての血を消費することにより、お前は生きる」ことと類似しています。

後半では王の使者が六獣のうちの一匹であり、身体は丸く、顔は無く、背には六枚の翼が生えていたと書かれていす。そして五章とほぼ同じ内容が記述されますが、“我らは王に犠牲を捧げる”と言っていた民がここでは“我らは王に、獣たちに、龍に犠牲を捧げる”と言っています。

これは民が死に絶えることで為された血の犠牲は王のためだけではなく、むしろ獣・龍に対するものだったことを表していると思われます。したがってこの龍こそが阿伽の王、つまり吊られた王を生み出した元凶であったのだと思われます。

この龍は何者でしょうか?

龍と聞いてピンとくるかも知れませんが、この龍は第三章で述べた夏王朝の人々が信仰していた母なる龍と同一であると思われます。つまりサーキック・カルトの神格、ヤルダバオートです。”龍は母なる女神”、”龍に仕える六匹の獣”がその根拠です。

第三章で紹介したSCP-2481の文書-2481の龍についてでは、龍に仕える混沌(Hundun、クヮンドヮン、こんとん)、窮奇(Qiongqi、チュンチー、きゅうき)、梼杌(Taowu、チャオウ―、とうこつ)、饕餮(Taotie、タオティエ、とうてつ)、共工(Gonggong、コンコン、きょうこう)、祝融(Zhurong、チューロン、しゅくゆう)の6つの獣がいたと書かれています。

また、第六章ではこの六匹の獣の一匹が王の使者であると書かれていました。六匹の獣はサーキック・カルトにおいてヤルダバオートに付き添う形で描かれる他世界存在、アルコーンではないかと考えられます。

SCP-2510(記録用:Our Broken Salvation / 我らの壊れたる救済)によればヤルダバオートは6体のアルコーンを創造していたと書かれており、アルコーンは六匹の獣と同じ数存在しているようです。

今までの推測をまとめると

  • 阿伽の王=吊られた王=アラガッダの王
  • 王の使者=アラガッダの大使=六匹の獣の中の一匹=アルコーンのうちの一体
  • 龍=ヤルダバオート

という図式になります。

それでは六章の途中でしたので演目の内容に移ります。

演目では、全体を通して宗教的な合唱が流れてる中、SCP-2732-2-A(皇帝の衣装)と-C(道化師)が右手から入場し、中央へと進み出し、左手に向かって跪きます。

すると7体のSCP-2732-2個体が一列に並んで左手から入場します。各個体は先端に動物の肉塊を差し込んだ棒を掲げており、この肉塊は牛肉と豚肉を混ぜ合わせたものであり、それぞれ紐で蛇のような形状へと雑に繋げられ、最前方には2つの穴が穿たれています。個体群は、伝統的な中国の龍舞に似た舞踏を始め、SCP-2732-2-Aと-Cの下へ辿り着くと、個体群は肉塊を床に投げ落とします。

個体群は龍を表しているように思われます。

すると大きな、銅鑼を打ち鳴らす音が聞こえ、正面のSCP-2732-2個体がSCP-2732-2-Aに白絹を手渡し、残りの6体はSCP-2732-2-Cを痛め付け始めます。SCP-2732-2-Aは白絹を受け取り、首を吊り、痙攣し始め、7体のSCP-2732-2個体は左手へと退場し、消失します。

その後、直径2mの黒く塗装された木製の玉が左手から転がり出し、15体のSCP-2732-2個体が右手から入場します。個体群がSCP-2732-2-Bに向かって走り寄り、5分間しがみ付くと、大きな、銅鑼を打ち鳴らす音が聞こえ終了します。

第七章

その日、阿伽の国は、王を幽閉した。王は首を吊り、死んだ。国を挙げてこれが祝福され、王の亡骸は野に打ち捨てられた。

三日後、王の使者[不明瞭]

この章は注記によると墨がこぼれており、段落の続きは判読不可能であるようです。しかし、判読できる部分だけの朗読でも演目が始まるようです。

演目では四肢を持たない雑なヒト型であり、黒い絹に包まれたSCP-2732-2-Dのみが姿を現します。SCP-2732-2-Dは他の個体と違って、姿を消すことはありません。

演目には背景音はなく、SCP-2732-2-Dが舞台の中央に出現し、概ね静止状態を維持しますが、常に演目を開始した人間の方を向くように頭部を回転させます。

演目の内容は以上です。注記によると検査の結果、黒絹の下に存在するSCP-2732-2-Dの本体は、第六章の演目に登場するものと同じ動物の肉で構成されていることが判明しています。SCP-2732-2-Dの顔面には、人間の眼球が2個埋め込まれており、現在までに回収された全5対の眼球は同一の漢民族男性のDNAを共有しているそうです。

SCP-2732-2-Dは何を表しているのでしょうか?四肢を持たない雑なヒト型で黒い絹に包まれているという特徴から、『SCP-2264 -アラガッダの宮廷で』に書かれていた「神の形をした穴」を表現しているのかもしれません。SCP-2264では、アラガッダの大使は王のベールをめくり、エージェントにその顔を見せ、エージェントはそれを神の形をした穴だったと述べていました。

眼球はやはり阿伽の王でしょうか……。

SCP-2732は以上です。ちなみに本家のディスカッションによると作者のSunnyClockwork氏はネタバレとして、このSCPの各章は吊られた王の起源を探ろうとした人物の試行であり、最終的にその人物は真相に十分近づいたと述べていました。

ところで第七章では墨がこぼれていましたが、TwitterではこれはSCP-2747 – 下の如く、上も然りが関係しているのでは?という説もありました。SCP-2747についてはSCP-2747 – アニヲタWiki(仮)をご覧下さい。第七章が完成していたらSCP-2732は消えていたかもしれません。
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ヤルダバオート・アルコーンとの関わり

これまでの推測をまとめると、阿伽の王こと吊られた王の誕生の裏ではヤルダバオートとアルコーンが手を引いていたようです。アラガッダの大使の正体はアルコーンなのかもしれません。

しかし、今までのTaleを振り返るとヤルダバオートが黒幕だったとは思えない記述が『蛇について』には書かれていました。

途中でご紹介した『蛇について』では死の君主との賭けに負け、国が乱れ民に囚われた阿伽の王は大いなる深淵を尋ね、無貌の神に「お前はまずは死なねばならない。そうすれば三日のうちに帰ってくるだろう。すべての血を消費することにより、お前は生きる」と言わていました。

この大いなる深淵とは、ヤルダバオートとメカーネを描いたと思われるSunnyClockwork氏のTale、作り手と獣によれば、ヤルダバオートやメカーネなどの神格が存在していた場所です。

大いなる深淵の無貌の神とはヤルダバオートのことでしょうか?無貌とは顔がないという意味です。しかしサーキシズム-ハブにはヤルダバオートが無貌であるとは書かれていないようです。

ただし、サーキシズム-ハブではある存在が”顔の無い者”に近い表現で形容されてました。

それはヤルダバオートに付き添う他世界存在、アルコーンです。同ハブによればアルコーンは「根源的混沌の貌無き顕現」であると書かれています。

ここから考えられる結論、それは阿伽の王に血の犠牲を払わせたのはヤルダバオートではなくアルコーンだったということです。

『SCP-2264 – アラガッダの宮廷で』では、アラガッダの大使は顔がないと書かれていました。アラガッダの大使がアルコーンだとすると無貌であるという特徴も一致します。

そもそもサーキシズム-ハブによればヤルダバオートは”盲目”かつ本能によってのみ突き動かされる存在であるとされ、阿伽の王に語りかけるような知的な存在ではないように思われます。

また『SCP-2510(記録用:Our Broken Salvation / 我らの壊れたる救済』や『作り手と獣』によれば、ヤルダバオートはメカーネがその身を捨てて封印しているため、阿伽の王に直接的に関わることができないように思われます。

宇宙の調和を巡る戦争があった。時間と空間を超えた最後の戦いは、君たちの世界によって縁取られた。MEKHANEは破壊されたが、最後に、君たちを確実に救済するため、己の身体を牢獄へと変えた ― ヤルダバオートを砕け散った殻の内に捕えたのだ。その欠片は、君たちの世界の全ての世界線へと散らばった。

SCP-2510(記録用:Our Broken Salvation / 我らの壊れたる救済

作り手は創造物を守らねばならなかった。生命は新しく無限の可能性を持ち、彼の目的と意味になっていた。作り手は獣にすまないと述べ、機械の作り手は最後の偉大なる機械を創造した。己の存在から1つの檻を築き上げ、神喰らいを収容し生命から彼女を追放した。

作り手と獣

阿伽の王に血の犠牲を払わせたのがアルコーンだったとすると阿伽の王に近づいたその目的も推測できます。『SCP-2510(記録用:Our Broken Salvation / 我らの壊れたる救済』によれば、アルコーンの目的はヤルダバオートの解放です。従ってアルコーンはヤルダバオート解放のために阿伽の王に近づき、血の犠牲を払わせたのだと思われます。

しかしもしそうだったとするとSCP-2732 – 《缢王本纪》の記述は何だったのかと思う方もいるでしょう。ですがディスカッションの作者のコメントによれば、これはあくまでも真実に近い話であるようなので、SCP-2732では龍が“彼が帰還するにはまず誰かが死なねばならぬ”と言ったとありますが、実際にはそうではない可能性があります。

SunnyClockwork氏のTale、CotBGアーカイブ20██/██/██-███: 龍と蛇に関してにはヤルダバオートのために血の犠牲を払わせたことを示す記述がありました。このTaleではGOI-004(”壊れた神の教会”)の分派から回収された詩を読むことができます(CotBGはChurch of the Broken Godの略)。

このTaleの中の『龍の形の中に』と題された、およそ紀元1900年、████████で書かれた不明な作者による詩には以下のような記述があります。

すべての血は吊られし王のもの、
されど彼はさらに偉大なる者へのトンネルに過ぎず。
血と肉は偉大なる真鍮の檻へと流れる、
そこは龍がじっと待ち続ける牢獄。

吊られた王は”さらに偉大なる者”へのトンネルに過ぎず、血と肉は”龍”がじっと待ち続ける真鍮の檻へと流れるとあります。”龍”は今まで見てきたようにヤルダバオートを表し、”偉大なる真鍮の檻”はヤルダバオートを封印したメカーネを表していると見られます。

血の犠牲はメカーネに囚われた”さらに偉大なる者”、ヤルダバオートに注がれていたということでしょう。ヤルダバオートはやがて解放されるのでしょうか……。

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おわりに

SCP-701の謎に迫る関連SCP・Tale紹介でした。長くなりましたが、振り返るとほぼSunnyClockwork氏のヘッドカノン・Tale紹介になってしまいました……。

ここまでまとめてきましたが、今回の記事もひとつのヘッドカノンとしてお考え頂けたらと思います。SCP財団にカノンはないので、このヘッドカノンを採用するかしないかは個人の自由です。

アラガッダに関する作品はまだ他にもあり、Gabriel Jade氏の連作Tale、吊られた王の喜劇ではクル=マナスの堂守がSCP-049 – ペスト医師なのではと思われる記述があり、SCP-035 – 取り憑くマスクが出てくるなど、また違った世界観になっています。

最後までお読み頂きありがとうございました!

 

SCP-2481 – Kill the Suns
Document-2481
The Maker and the Beast
CotBG Archive ██/██/20██-███: Of Dragons and Serpents
Sarkicism Hub

紹介した各作品に基づく本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。

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