SCP財団にはシャイガイやビルダーベアといった危険で恐ろしい人型や知性体のSCPが数多く登場しますが、それとは逆に全く恐怖を感じない、笑ってしまうような実体も存在します。
今回は、そんな残念な人型や知性体のSCPを集めてみました。
残念過ぎる人型・知性体SCP
SCP-471-JP – 噂が呼んだ怪人
まず最初はSCP-JPの作品です。SCP-471-JPは人型実体に関する一定条件を満たした情報で、これを知った人物のもとには黒色のシルクハットとマントを身に着けたタキシード姿の男性(SCP-471-JP-1)が現れます。一定条件を満たした情報とは、SCP-471-JP-1に関するもので、以下の要素を持っています。
- 異次元からやってきた。
- 黒いマントとシルクハットをかぶったタキシード姿の男。
- 人間を捕まえて異次元に攫う。
- この噂を聞いた4日後の午後4時44分にこの男が現れる。
- 助かる方法は44分間逃げ切る。
いわゆる「怖い話」にありそうな内容ですが、その内容通り、この話を聞いた人物は、現れたSCP-471-JP-1から44分間逃げ続けないと異次元に攫われてしまいます。
これだけ聞くと危険そうなオブジェクトに見えますが、実はSCP-471-JP-1にはある致命的な欠点があったのでした……。
実験記録が特に面白く、追記の文章でとどめを刺されます。
SCP-1370 – 困らせルボット
こちらは本家のSCPです。SCP-1370は自律行動が可能な様々な電子装置や道具で構成された人工物です。このオブジェクトは敵対的な自我を持ち、知恵を持つと判断した物体や生物に対して、襲いかかってきます。しかしSCP-1370 にはある致命的な欠点があったのでした……。
補遺の内容が平和で微笑ましいです。
SCP-1004-JP – アザラシじゃらし
SCP-1004-JP – アザラシじゃらし
著者 yuC
http://ja.scp-wiki.net/scp-1004-jp
作成年:2016
SCP-1004-JPはアゴヒゲアザラシのように見える実体です。オブジェクトクラスはKeter。困らせルボットのように、人類に対し強い敵対心を持っています。遊泳する人間を発見すると対面した人物に「攻撃的・絶望的な言葉」を投げかけ、積極的に攻撃を仕掛け、溺死させようとします。
“緩慢な動作による体当たり”という恐るべき攻撃手段で。
実験記録ではDクラス職員にいいようにあしらわれています。
こちらは過去記事で詳しく紹介しています。
http://scpnote.com/archives/4721000.html
SCP-2662 – くとぅるふ ふっざけんな!
http://ja.scp-wiki.net/scp-2662
続いては本家のSCPです。SCP-2662は、ヒト型、頭足類の足と同様の構造を持つ約20本の触手状筋組織を背中に備えた実体で、クトゥルフ神話に登場しそうな姿をしていますが、その内容は宇宙的恐怖など微塵も感じない笑える話です。こちらは今まで紹介した実体とは異なり、財団に協力的で自発的に収容されています。
自発的に収容されてはいますが、当然ながら他のオブジェクト同様、異常性を有しており、認識により異常な影響を与える異常性質、認識災害をこの実体は持っています。
認識災害による影響はSCP-2662の望みを叶えたくなるというものですが、本当に厄介なのは二次的な異常効果の方です。少なくともおよそ1ヶ月に一度の割合で、SCP-2662を崇める宗教的な信者が自発的に発生します。
この信者達は、収容ユニットへ侵入し暴力および/または性的要素を含む様々な儀式を執り行います。こう書くと邪悪な存在に感じられますが、これはSCP-2662が意図的に発生させているわげではなく、本人はそれを非常に迷惑がっています。
SCP-2662に関連する事件のログにはその様子が描かれていますが、SCP-2662の人間らしい反応が面白いです。
SCP-1541 – 呑んだくれの神様
タイトルの時点でダメそうなこのオブジェクト。この実体は”神様”というタイトル通り、神格存在、すなわち神であると考えられています。
神と聞くとすごい力があるのではと思えますが、この神がやることは約100年前のかつての信奉者の子孫に、[編集済]ブランドの携帯電話(SCP-1541-2と指定)を用いて連絡し、儀式をするように頼むという、神のイメージからまったくかけ離れたひどく日常的な行動です。
しかもSCP-1541-1はその力を失いつつあるようで、その影響なのか電話の口調やその内容はアルコール依存症と躁鬱病の傾向を示しています。
その電話の内容は、文書SCP-1541-T1に書かれていますが、そのふざけた下品な言い方でしつこく食い下がる様は、ダメすぎて笑えてきます。
SCP-2014 – ズァー・マゴス
先ほどのSCP-2662は神と崇められていましたが、こちらのSCP-2014は本物の邪神のようで、複数のカルト教団設立と、殺人・窃盗・公然猥褻などの幾つかの犯罪に関与した事が疑われています。今度は本当に危険そうですが、この存在は訳あってロサンゼルスのスケート選手に召喚され、現在は体長8.5cmのヤモリに宿っています。
SCP-2014には知性があり、遠距離からオブジェクトを操作するための念動能力を有しています。SCP-2014は24m以内にある任意のオブジェクトを、見えているか否かに関わらず操ることが可能です。SCP-2014は自身を、”ズァー・マゴス”という名の異次元実体であると主張しています。
インタビューログで詳細が判明しますが、スケート選手を助けた理由には妙に親近感が湧きます。
SCP-3740 – 神はアホである
http://ja.scp-wiki.net/scp-3740
タイトルからして、残念な気配が漂いますが、実際にタイトルがすべてを表しています。こちらも神格存在ですが、この実体は実際に信仰されていたアッシリアの主神、アッシュール神であると考えられています。
神というだけあってこの実体は現実改変が可能です。現実改変は文字通り現実を望むように改変できるという危険な能力で、あらゆることが可能であり、財団からは非常に危険視されています。しかも、このSCP-3740の現実改変能力のレベルはクラスVIIIと書かれており、その能力は非常に強力なものと予想されます。
そのため当然ながら、この実体のオブジェクトクラスはKeterに指定されており、通常なら財団が全力で対処しなくてはなりません。しかし、今回のケースではその心配はないと収容研究チームの博士は述べています。
それは何故でしょうか?まあ、タイトルの時点でもう分かりますね、そう、名実ともに強大な力を持つ神、SCP-3740は実は滅茶苦茶アホだったのです!
具体的にどうアホなのかというと、SCP-3740は呆れ返るほど騙されやすいのです。財団はその騙されやすさを大いに利用してこの実体を収容しています。
SCP-3740は研究チームによる誘導で、アッシリア神格の頂点に君臨していた古代まで時間を遡って帰還したと信じ込んでいます。詳しくは記事に書かれていますが、その騙されやすさには笑わずにはいられません。
SCP-1481 – ヤク中魔神
原著者 UglyFlower
http://ja.scp-wiki.net/scp-1481
次に紹介する実体もタイトル通りの存在です。SCP-1481はプラスチック製のコーヒーカップで、カップを擦ると、いわゆるランプの魔神のように、実体(SCP-1481-1)が顕現し願いを叶えると申し出ます。もしそんなものがあれば是非とも欲しいところですが、SCP-1481-1にはある致命的な欠点があったのでした……。
このSCP-1481-1、実はヤク中だったのです!
もうお分かりだと思いますが、SCP-1481-1に願ったところで、ろくな結果にはなりません。説明によると”SCP-1481-1は願いに応じない傾向が強く、多くの場合は無視するか、既に願いは叶ったという間違った主張をするか、あるいは要求された物に少ししか似ていない結果を生成”すると書かれています。
その実験結果はこちらです。
要求されたアイテム: サンドイッチ1つ
結果: SCP-1481-1はサンドイッチを出現させ、迅速に食した。要求されたアイテム: 宝くじの当選券1枚
結果: SCP-1481-1は外れくじ1枚を出現させた。要求されたアイテム: 100カラットのダイヤモンド
結果: 100gの石炭。SCP-1481-1は石炭が純粋なダイヤモンドであると職員に保証した。要求されたアイテム: “生命の意味”
結果: SCP-1481-1は3分14秒間ヒステリックに笑った後、何を要求されたか忘れたと主張。このアイテムを続けて要求する行為は同じ結果を引き起こした。要求されたアイテム: 尽きる事のないエネルギーを達成するための手段
結果: SCP-1481-1はデビルドエッグを出現させ、迅速に食した。
ダメすぎる……。
SCP-1481-1がヤク中になった理由は報告書の中で明かされますが、その理由にも笑ってしまいます。しかしながら、読み終わる頃にはSCP-1481-1に同情してしまいます……。
SCP-4338 – ヴァルカン、破滅なるもの
さて、今まで紹介してきた神格存在は大きな被害を与えませんが、こちらは定期的に人命を奪います。SCP-4338はモアハ島直下のマグマ溜まりに生息する、知性と空中浮遊能力を帯びた2.3kmの火山岩の球体です。
この実体は古来よりこの地域の口頭伝承において、“炎上する海の神”等の名で言及され、初期オセアニア文化の創世神話 — そして絶滅事象の中心的存在として扱われており、神として考えられてきた存在であるようです。
この神は、供物を要求してくるようで、特別収容プロトコルでは、約ひと月に1度、太陰暦の始まりごとに、様々な種類の40-50kg程の食物をこの島の噴火口に投入することになっています。
しかし、SCP-4338は時々人間に襲いかかります。それはモアハ火山の大規模な噴火と共に始まり。噴火から間もなく、火道からSCP-4338が出現し、最も近隣に位置するヒトの社会的集団の指導者に向かって移動し始めます。
移動中、SCP-4338の外殻は崩れて、溶融した岩石と金属鉱石から成る長大な触手を露出させます。これらの付属器官は専ら、SCP-4338が指導者の追跡中に遭遇した障害物を破壊するために使用され、3-5人の生きた健康な人間が火口に投下されるか、 “指導者”が死亡するまで停止しません。
指導者を人のいないところへ隔離して指導者をSCP-4338に殺させるか、他の人間を捧げなければ甚大な被害が生じます。SCP-4338のオブジェクトクラスは、あまりにも危険で収容困難なため、Keterに指定されています。
そんなSCP-4338ですが、ある研究員の犯したミスで要求される食物の量が激増します。ここから予想も付かない笑える展開が始まります。
おわりに
残念な人型や知性体のSCPでした。神格存在が多くなりましたが、いずれも人間味溢れる振る舞いが笑いにつながっていたように思います。最後までお読み頂きありがとうございました!
紹介した各作品に基づく本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。
コメント
内容がとても面白かったです。
失礼ですが誤字を発見しました。
SCP-2662 「くとぅるふ ふっざけんな!」の部分で「発生させているわけではなく」が
「発生させているわげではなく」となっていました。私の間違いならすみません。
ありがとうございます。修正しました。