前回よりお送りしていますPitch Havenシリーズの紹介と考察です。今回はその第4回としてSCP-1619 – サイト-45-C:フロア24を紹介&考察します。スチュアートとサラは異空間に変わり果てたサイト-45-Cのフロア24を探索しますが、その途中で悲劇が起こります。
前回の記事はこちらです。
http://scpnote.com/archives/pitch-haven-scp-1903.html
SCP-1619 – サイト-45-C:フロア24
原著者 Fantem
http://www.scp-wiki.net/scp-1619
作成年:2013
翻訳者 gnmaee
http://ja.scp-wiki.net/scp-1619
SCP-1619は財団サイト-45の地下区画サイト-45-Cのフロア24に対して影響を及ぼしている現象。オブジェクトクラスはEuclid。
サイト-45-Cのフロア24は様々な廊下、部屋、展望室(原文はobservatoriesなので展望室としました)からなる空間に変化している。部屋にはドアはなく、何もない戸口(empty doorways)が残されており、内部には色々な芸術的な日用品や家具(主に現代のガラステーブルとオフィスチェア)が置かれている。
SCP-1619はサイト-45-Cエレベータを通じてのみアクセスが可能で、その他のフロア24へと繋がる手段は封鎖されており、壁に黒鉛で描かれたドアと入れ替わっている。SCP-1619の間取りの終わりはまだ見つかっていない。フランス語で書かれたスケッチと文書がSCP-1619内にあるデスクから回収されている。
SCP-1619は多数の部屋からなる面積不明の異常空間のようです。サイト-45-Cのワンフロアがこの異常空間に置き換わっています。
Pitch Havenハブページによると、サイト-45はラスベガス地区にある財団施設でサイト-45-A、 -B、-Cから構成されており、各施設は地下モノレールシステムとエレベーターを介して繋がっています。
サイト-45-Cは、サイト-45在籍職員へ住居、慰安、娯楽を提供しているサイト-45-Bの地下1.56kmの地点にある、大規模な地下研究施設で、様々な宗教や神話と関係のあるアノマリーの研究を専門としています。サイト-45-Cは大量の生物型・知性あるオブジェクトを抱えています。
フロア24は知性を有する自律性の彫刻の生息地となっており、それらの彫刻はSCP-1619-1、SCP-1619-2と指定されている。それらは主に以下のような特徴を持っている。
- SCP-1619-1と指定される、防水紙の厚い外装を持つ同一の女性の人型彫刻。SCP-1619の主要な脅威。
- SCP-1619-2と指定される、照明器具から作られた知性ある構成物の一群。SCP-1619-1を狩猟する。
また、SCP-1619の壁と床はSCP-1619-1-Aと指定されたキャンバスの外観と肌合いを持つ未確認の植物種が覆っている。
それではSCP-1619-1、SCP-1619-2の特徴を詳しく見てみます。
SCP-1619-1
SCP-1619-1実体は、防水紙の厚い外装を持つ同一の女性の人型彫刻で、心臓の鼓動が検知される呼吸をする対象者(翻訳は犠牲者になってますが、原文はsubjectなのでここは対象者としました)に対して敵意を示す。SCP-1619-1実体はSCP-1619-1-Aから発生し、各個体はpH8.2の黒いペンキで満たされている。
SCP-1619-1実体は、緩慢な動きで対象者を囲んで制止させると、心肺機能蘇生(CPR)と同じように人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す行動をとり、人工呼吸の際に、対象者の口の中にペンキを流し込む。
このペンキは約1分対象者の胃に残り、自己増殖を始め、pH値が14にまで上昇する3秒間に、その量を2倍に増量する。通常、SCP-1619-1はペンキが反応する前に対象者を開放し逃走を試みる。
対象者は胃、食道、口に重度の腐食性の炎症を感じて、その物質を吐き出し、影響を受けた箇所に更なる損傷を与え、呼吸は喉と食道の膨張により困難になり、腸の内部が腐食して広範囲の大量出血を引き起こす。
このペンキは対象者の内部で増殖を続け、破裂させる事で犠牲者を殺害し、最終的には身体の大部分を分解する。犠牲者が死亡すると、SCP-1619-1-Aはこのペンキと死体を吸収する。
かなりエグい異常性を有しています。
消化が完了すると、対象者が死亡した場所には対象者のカリカチュア(誇張や歪曲を施した人物画、戯画、漫画)が現れる。このカリカチュアは通常、対象者が楽しんだ活動に参加している様子を表す。このカリカチュアは特別収容プロトコルにより、文書-1619-8に記録され、その一部はSCP-1619報告書に記載されている。
その敵意と危険な性質にもかかわらず、SCP-1619-1は主に殆どのSCP-1619-2実体の餌食になると考えられている。SCP-1619-1の非効率的な狩猟方法、緩慢な動き、SCP-1619-2に対する関心の欠如はSCP-1619-1を、SCP-1619以外を起源とする生物だけに対する効率的な捕食者としている。
SCP-1619-1はSCP-1619に存在する敵対的存在のようです。
SCP-1619-2
SCP-1619-2は、照明器具から作られた知性ある構成物の一群で、SCP-1619の外で確認されるイヌ科、ネコ科、害虫、様々な神話が元と考えられる実体に類似、または類似した行動を取る。しかし、幾つかのSCP-1619-2は単に自律性のある産業フロアランプである事が確認されている。
各SCP-1619-2は主に黒色の鋼材とアルミニウムから作られており、1本のプラグの”尻尾”と個体の顔に当たる最低1個の紫外線電球を持ち、背中には”トーチ・ベアラー”と”A█████™”の文字が彫られている。殆どのSCP-1619-2は損害から保護する為に、電球に保護フェイスプレートを覆っている。この電球が破損または焼損した場合、その個体は動きを止め、目立った自律特性を失う。
トーチ・ベアラーはたいまつ持ちを意味します。
また、それ以外にもSCP-1619-2が長期間好ましい狩猟行動を妨害された場合、電球は暗くなり始め、最終的に機能を停止する。SCP-1619-1・SCP-1619-2の狩猟により電球の減光を十分に防止することができる。
地球上の肉食動物と同じように生命活動を維持するためには狩猟が必要なようです。
SCP-1619-2は職員に対して積極的な敵意は示さないが、その多くはとても縄張り意識が強く、接近した場合、職員に対して威嚇することがある。SCP-1619-2は、その特徴により大きくA、B、Cに分類される。
SCP-1619-2は、SCP-1619-1・SCP-1619-2を狩猟・捕食する動物的な存在のようで、大きくA、B、Cに分類されます。
SCP-1619-2-A
SCP-1619-2-Aは、SCP-1619-1とその他SCP-1619-2に対して攻撃する傾向を示すSCP-1619-2個体。実体はそれらの電球を収めているボウルの周りの縁をより鋭くする傾向にあり、一般的に高さ1.5mを超えることはなく、通常他のSCP-1619-2のフェイスプレートの周りに手を伸ばすのに使う手足を持つ。
SCP-1619-2-Aは手足が攻撃手段のようでSCP-1619-1と自分以外のSCP-1619-2を狩猟します。
SCP-1619-2-B
SCP-1619-2-Bは、SCP-1619-1のみを攻撃するSCP-1619-2個体。その構成物は中央に小さな穴が空いたフェイスプレートを持ち、そこから細い光芒を発する。これら実体は小火を起こす為に格納式のレンズでこの光を収束させる事ができる。
この小火は、SCP-1619-1に対して非常に効果的な一方、他のSCP-1619-2に対しては効果がなく、人間の対象者に対して軽度の火傷を負わせる。SCP-1619-Bは一般的に電球の縁の周りに鈍い端があり、他のSCP-1619-2からの身を守るのに十分大きく、また生存方法として十分な速さで逃走することができる。
SCP-1619-BはSCP-1619-1を狩猟しますが、他のSCP-1619-2に対しては草食動物のように逃げることを優先しているようです。
SCP-1619-2-C
SCP-1619-2-CはSCP-1619-2の特定の変異体に与えられた指定。SCP-1619-1への対抗手段として財団によって家畜化を目的として選別された。
SCP-1619-2-Cは殆どイエネコ(Felis catus)に類似し、共通の行動を示す。SCP-1619-1を除く人間または人間に類似した生物に遭遇するとより従順になる。SCP-1619-Cは恐怖と嫌悪刺激を含むトレーニング技術に対してより反応を示す。
SCP-1619-2-Cは、電球に更なる保護を与える、フェイスプレートに繋がる3本の金属支柱の有無により識別が可能。全てのSCP-1619-C個体は、他の全てのSCP-1619-2にある元の”A█████”の商標が、”これまで私がやってきた以上に、あらゆる暗闇に光を与えることができた、F█████に捧ぐ”という文に入れ替わっている。
A█████とF█████という人物が何か関係しているようです。
SCP-1619-2-Cは探査が実行されて以来、既知のフロア24の入場地点の近くに住み着き始め、既に2体以上のSCP-1619-2-C実体が同行してこない限り、職員の後を追う。SCP-1619-2はほとんどのその他のSCP-1619-2より弱く、時折大きなSCP-1619-2-Aの餌食になっていると考えられる。
SCP-1619-2-Cはネコに類似していますが、財団職員を補助する狩猟犬のような役割を担っています。
SCP-1619の起源
SCP-1619の起源はAnomalousアイテム#:00553が起源であると考えられている。
このアイテムは、 1959/11/██、フランス共和国パリで回収された、明かりを維持するのに十分な電気を生成するシリンダーフィラメント電球で、’A█████™’と読めるメーカースタンプが付いていた。その恒常的な電流にもかかわらず、タングステンフィラメントに消耗の兆候は見られない。
この異常性により代替エネルギー源の研究のため████博士の要請によりフロア24にあるサイト-45-Cの小型物体室に移送されていた。そして実験が就業時間後に行われ、████博士を含む少なくとも3人の職員の失踪を引き起こし、SCP-1619が発生した模様。
以上がSCP-1619の起源でした。次にSCP-1619で発見されたカリカチュアの記録を見ていきます。このカリカチュアはSCP-1619-1の犠牲になると現場に現れます。
文書1619-8: 一部記録-9
発見日: | #: | 人物: | 概要: |
---|---|---|---|
1960/01/16 | 02 | 2人の身元不明者 | 1人の男性の老人と1人の女性の老人が描かれています。男性は釣り人の格好をし、魚を抱えています。男性は女性にこの魚をプレゼントしており、女性は料理の為の服装をしています。 |
1960/01/16 | 15 | 1人の身元不明者 | 30から40歳の年齢の女性が描かれています。女性は1930年代または1940年代初頭に流行した大きめのドレスを着用し、メスフラスコを手にしています。 |
1960/01/17 | 16 | 1人の身元不明者 | 8から10歳の男性の子供が描かれています。この子供は口が縫い合わされており、オーバーオールと縞模様のシャツを着用しています。子供は座って、膝に乗っているSCP-1619-2-Cを愛撫しています。これはSCP-1619-2が描かれている2つの画像の内の1つです。 |
1960/03/28 | 46 | エージェント・クロウリー | 財団支給の白衣を身に纏った数人の人影に囲まれたエージェント・クロウリーが描かれており、1人の人影に向かって乾杯を上げて、アコースティックギターを演奏しています。この個体はヘイワード博士を表していると考えられます。 |
1960/04/06 | 56 | A█████ | 画像は発見された観測所全体を表しています。A█████はトーガを身にまとって、SCP-1619-2を描いており、その他のSCP-1619-2は彼に様々な種類の鉛筆、ペンキ、インク、紙を手渡して手助けしています。A█████の隣には1体のSCP-1619-1実体がおり、その腕はA█████の胴を掴んでいます。 |
それでは次に現場記録-1619-12を見てみます。
現場記録-1619-12
1960/03/26、フロア24の異次元空間3km圏内の製図とSCP-1619の起源に関するより詳細な情報を収集するために、フロア24の4人の探査班がサイト管理官Y██████によって組織された。
この班はエージェント・クロウリーを指揮とし、ヘイワード博士、エージェント・ベック、サンプソン博士、4体のSCP-1619-2-C個体、SCP-1619-2-C-11、-12、-23、-44が招集された。
エージェント・クロウリーの記録によると、1日目はSCP-1619-1をSCP-1619-2-Cが狩り、SCP-1619-2を避けて、順調に前進し四分の一を図示。さらに様々なSCP-1619-2達のスケッチ2枚とA█████とF█████が交わした手紙10枚を回収した。
手紙の内容によると、F█████は、F█████の夫と思われる人物が何か悲劇的な出来事でその生命を落とすまで、A█████と何かしらの不倫関係にあり、A█████はF█████が家に帰ってくるように努めていた模様(ここの原文はF█████ was having a some kind of affair with A█████となっていて、このaffair withの意味は文脈的には、不倫になると思われます)。
双方とも彼らの老年期と[編集済]のような以前の状態に対して言及しているが、彼らがどうやって同時に存在(ここの原文はcoexistとなっていて、訳は同時に存在するだと思われます)していたかはもとより、互いを知っていたかは不明で、彼らは自身の状態を’隠居’と表現し続けている。
探査は1日目は順調だったが2日目に危機が訪れた。探査メンバーがSCP-1619-1達が多数存在する大きな展望室の中を歩いた際に、探査メンバーの一人が息を吐きSCP-1619-1に気づかれた。探査メンバーはその場から逃走し、隠れられる場所を見つけ、バリケードを築いたがSCP-1619-1はバリケードの外で待ち伏せを始め、身動きがとれなくなってしまう。
エージェント・クロウリーは、2つある出口の片側でSCP-1619-1を殺害し、他のSCP-1619-1を出口の片側に集め、もう片方の出口から脱出する作戦を立案。作戦はSCP-1619-1が待ち伏せをやめない場合に実行することになった。ここでSCP-1619報告書のエージェント・クロウリーの記録は終了しており、続いてヘイワード博士の記録が表示される。
ヘイワード博士の記録
ヘイワード博士の記録は探査14日目の報告が始まる。ヘイワードによると、先ほどのクロウリーの案は実行に移された。
SCP-1619-1の殺害に成功し、何体かを片側に引きつけたものの、もう片方には何体か残り、最初に隠れ場所から飛び出したエージェント・ベックが襲われた。彼はペンキまみれになり死亡した。エージェント・ベックは製図担当であり、バッグには地図、全員に分けられる食料、録音機を持っていたが、バッグがペンキに汚染され、荷物を放棄せざるを得なくなった。
製図担当者と荷物の喪失により、任務中止が宣言され、2キロ半先の入口に戻ることになった。しかし帰還の準備を始めて、しばらくすると、クロウリーの叫び声が聞こえた。クロウリーの脚にはペンキが付着していたようでペンキが彼女の脚にまで達していたのだった。
ペンキは彼女の脚を溶かし、踵まで爛れていた。ヘイワードとサンプソンは彼女を椅子まで運び、水がなかったため、尿でペンキを落とした。そして彼女に包帯を巻き、なんとか出血を止め、ショック状態を予防した。しかし傷の消毒剤はごく僅かしか残されてなく、クロウリーは1週間しか持たないだろうと思われた。
このときヘイワードは、
僕は気分が悪くなりました。彼の話を聞くことさえできませんでした。認めます、僕とクロウリーの関係はただの仕事以上の物です。もう██年以上も付き合っています;僕達は同じ苦難を経験してきました。変化してしまった時も、僕達はお互いにクソッ-…僕達はお互いに人間的であると感じました。
と記録している。
この記録により二人が付き合っていたことが判明します。変化してしまった時というのは、SCP-1903の情報災害に曝露し、顔にマスクが形成されたことを言っていると思われます。顔にマスクが形成され水銀中毒による精神的影響という同じ苦難を乗り越えてきた、強い絆があるように感じられます。
クロウリーの傷は悪くなるばかりで、脚全体が数日後には腫れ始め壊疽が進行する。
サンプソンはクロウリーはもう助からないと言い、置いていくことを提案するがヘイワードは納得しなかった。その後サンプソンはヘイワードにSCP-1619-1の様子を見てきてほしいと言い、ヘイワードがいない隙にクロウリーを、おそらくは首を絞めて殺害してしまう。ヘイワードはショックを受けサンプソンを追い払い、クロウリーのカリカチュアが描かれるのを待った。
カリカチュアは娯楽室で祝杯を挙げるクロウリーと、小さな集まりでバカなことをする準備をするヘイワードの姿だった。
悲しい別れが待っていました……。このときのカリカチュアの説明は文書1619-8に記述されてました。発見日時は1960/03/28です。
財団支給の白衣を身に纏った数人の人影に囲まれたエージェント・クロウリーが描かれており、1人の人影に向かって乾杯を上げて、アコースティックギターを演奏しています。この個体はヘイワード博士を表していると考えられます。
想像すると泣けてきます……。ヘイワードは自暴自棄にはならず、財団への帰還を試みます。
A█████との遭遇
ヘイワードは帰還するために、空間をさまよい歩き、食料がつきた数日後、ある部屋でSCP-1619-1と共にいる人物と出会う。この人物こそが、いたる所にエッチングされていたA█████本人だった。
彼はヘイワードと話し、食べ物とサイトへと戻る地図を提供し、それまでの生存を保証した。そして彼はヘイワードにあることを頼んだ。それはA█████を殺すことだった。
その理由を尋ねられた彼は、██年前にF█████がパリの橋から身を投げ、溺死(原文はdrowned herselfのため溺死としました)したことを話した。A█████とF█████の始まりが異なるが故に彼らのルールも異なり、同じ方法では死ねないらしい。彼が死ぬことができる唯一の方法は、何かが内部から彼を腐食させる間に、別の何かが彼を殺すことで、彼はそれをヘイワードに頼んだ。
ヘイワードは同意し、何らかの赤い流体で塗られた(原文は、laced withなのでこの訳に変更しました)ナイフが渡された。A█████はヘイワードに、A█████がそばにいた-1を殺してそのペンキを飲んだ後に、A█████の心臓を刺すように頼んだ。ヘイワードが言われた通りにすると、A█████は皆と同じように死を迎えた。ヘイワードは彼の手にある地図を発見し、彼が沈みゆく前にその場から立ち去った。
このときのカリカチュアの説明も文書1619-8に記述されている。発見日時は1960/03/28。
画像は発見された展望室全体を表しています。A█████はトーガ(古代ローマの一枚布の上着)を身にまとって、SCP-1619-2を描いており、その他のSCP-1619-2は彼に様々な種類の鉛筆、ペンキ、インク、紙を手渡して手助けしています。A█████の隣には1体のSCP-1619-1実体がおり、その腕はA█████の胴を掴んでいます。
その後、ヘイワードは放棄したバックを見つけ、汚染されていない録音機を取り出し、この記録を吹き込んだ。この録音をしている際に、、ヘイワードは帰り道を発見しエレベーターを見つけ帰還した。
後書によると、ヘイワード博士は探査1619-12の終了後、公務休暇に置かれた。ヘイワード博士が死亡したとする班員は確認されたが、サンプソン博士の所在は不明。A█████とF█████の死との関係性の調査は進行中で、██年前辺りのパリでの自殺の可能性がある記録が評価中にある。
以上が探査記録でした。ヘイワードとクロウリーは██年以上付き合っていて同じ苦難を経験してきたことがわかりましたが、クロウリーは死亡し、ヘイワードは一人になってしまいました。
ここまで読んできて気になるのは、A█████とF█████の正体です。一体、この二人は誰なのでしょうか?
A█████とF█████の正体
A█████とF█████の正体は誰でしょうか?
A█████についてわかることは、
- A█████はSCP-1619の空間と空間内の知性体を作り出した存在
- F█████と不倫関係だったらしい
- A█████はF█████を家に帰したかったが、F█████はパリの橋から身を投げ、溺死した
- A█████はF█████と同じ方法では死ねず、何かが内部から彼を腐食させる間に、別の何かが彼を殺すことで死ぬことができる
- フランス語を使う
- 絵描き
- トーガという古代ローマの衣服を着用
ぐらいでしょうか。
F█████については情報が少なく、その夫と思われる人物が何か悲劇的な出来事でその生命を落としているということしかわかりません。溺死している点はSCP-1619-1が心肺蘇生を行うことと何か関係がありそうです。
ディスカッションのコメント
よくわからないのでディスカッションに何か考察がないか調べてみました。すると作者のFantemさんはF█████について
I might reference them in another skip, but I think I gave you all enough information to find out who F█████ is… At least partially.
私は他のskipの中でそれらに言及するかもしれませんが、誰がF█████なのか見つけ出すのに十分な情報はすべて出しました…少なくとも部分的には。
とコメントしていました。誰なのでしょうか……。ちなみにskipとはSCPオブジェクトのことです。また以下のようなコメントもありました。Binarystepさんのコメントへのリプライです。
Binarystep 28 Jun 2014, 06:12
F█████ is “Fantem”, isn’t it.
F█████ は “Fantem”ですね?Fantem 29 Jun 2014, 02:09
Not a bad thought, but the problem with that is that I’m male, and she’s not… Plus she’s basically a god, way older than I, and committed suicide from drowning in a river.
悪い考えではないですが、問題は私が男で彼女はそうではないことです…。さらに彼女は基本的には神で、私よりずっと年上であり、川で入水自殺しました。
F█████は神のようですね……。F█████はFから始まる6文字の名前を持つ女神ということになります。
F█████の正体
Fから始まる6文字の名前を持つ女神がいるかもしれないので調べてみましたが、見つけられなかったため、ツイッターでも聞いてみました。すると北欧神話の戦争・魔法・豊穣の女神であるフレイヤ – Wikipedia(Freyja)が該当すると教えていただきました。
フレイヤといえば前回のSCP-1903の記事では、A・Fが北欧神話のオーディンでA・Fの妻がフレイヤではないかという考察を紹介しました。ですが、この考察には疑問点があるため、ここではこの考察は横に置いておきます。Fから始まる6文字の名前を持つ女神はほかには見当たらないため、F█████=フレイヤとして考えてみたいと思います。
ちなみにA・Fがオーディンだとする考察ではオーディンは魔術を会得するため左目を失っており、A・Fも情報災害で左目を失っているためA・Fがオーディンであると考えていました。しかしながら、改めて確認したところ、A・Fが左目を失っていたという描写はSCP-1903にはなく、A・Fがオーディンだとは考えにくいと思われます。
話を戻します。F█████=フレイヤについてですが、フレイヤは女性の美徳と悪徳を全て兼ね備えている女神で性的に奔放とされているため、F█████がA█████と不倫関係だったとしてもおかしくはありません。またWikipediaによるとフレイヤは2匹の猫が牽く車を持っているそうで、SCP-1619-2-Cがイエネコに類似しているのは、フレイヤの好みに合わせた可能性があります。
フレイヤの夫はオーズ – Wikipediaで、Wikipediaによるとフレイヤは長旅に出て帰ってこないオーズを恋しがって世界中を探したそうで、夫の死で自らも後を追ったとしても不思議ではないです。フレイヤは結局オーズとは再び出会えなかったようです。
A█████の正体
それでは、A█████の正体について考えてみます。F█████が神ということはA█████も神の可能性が高いと考えられます。Aから始まる6文字の神がいないか調べたところ、ギリシャ神話のアポローン – Wikipedia(Apollōn)は、ギリシャ神話を基にした神話であるローマ神話や英語ではApollo(アポロ)と綴られることを発見しました。
このアポロという男神は、多様な性格があり、芸能・芸術、弓術、医療、予言、牧畜を司りまた光明の神であるとされています。SCP-1619の起源と考えられていたAnomalousアイテムおよびSCP-1619-2は電球でしたが、光明の神であるなら電球を自身の象徴にしたとしてもおかしくはありません。
芸術の神なら絵や彫刻が登場するのも理解できます。トーガという古代ローマの衣服を着用していたのはローマ神話の神ということを表しているのでしょう。
A█████とF█████は双方とも彼らの老年期と[編集済]のような以前の状態に対して言及しているという記述がありましたが、この[編集済]とは、神話の時代のことであると考えられます。彼ら自身の現在の状態が老年期であり’隠居’ということなのだと思われます。
そして二人が別の神話の神であるために”彼らがどうやって同時に存在していたか、互いを知っていたかは不明”と書かれていたのでしょう。
A█████はF█████が家に戻ってくるように努めていたという記述は、アポロがフレイヤを北欧神話のアース神族の居所、アースガルズに帰らせようとしていたということかもしれません。
それではSCP-1619とは何だったのかを考えてみます。
SCP-1619とは
SCP-1619とは本来はアポロが作り出し、暮らしていた異空間ではないかと思われます。A█████のカリカチュアは彼がこの異空間で1体のSCP-1619-1およびSCP-1619-2達と暮らしていたことを示しています。SCP-1619-2は動物を模しているようです。フランス語の文章が見つかっていることからその異空間はフランスにあったと思われます。
SCP-1619-1の犠牲者のカリカチュアは、実際にあった楽しんだ活動に参加している場面が再現されているようなので、文書1619-8に書かれていたA█████のカリカチュアはそこでの彼の暮らしでの表していると考えられます。A█████のカリカチュアは以下のような内容でした。
画像は発見された観測所全体を表しています。A█████はトーガを身にまとって、SCP-1619-2を描いており、その他のSCP-1619-2は彼に様々な種類の鉛筆、ペンキ、インク、紙を手渡して手助けしています。A█████の隣には1体のSCP-1619-1実体がおり、その腕はA█████の胴を掴んでいます。
このカリカチュアでは1体のSCP-1619-1がアポロの体に手を回していることから、このカリカチュアの中のSCP-1619-1は恐らくフレイヤだと思われます。なぜ彫刻の姿で人間でないのかは不明ですが、肉体がなく魂だけ、もしくはアポロが作ったフレイヤのコピー的な存在なのかもしれません。
いずれにしてもSCP-1619-1はフレイヤを模して作られた彫刻であると考えられます。スチュアートと会ったときにアポロのそばにいたSCP-1619-1は、フレイヤを失った後に作られた攻撃性のない個体なのではないかと思います。
フレイヤとアポロが知り合った経緯は推測するしかないのですが、フレイヤは夫であるオーズを探してアースガルズから人間の世界に来て、そこで隠居していたアポロと出会い恋に落ちたのかもしれません。
SCP-1619-C個体にあった”これまで私がやってきた以上に、あらゆる暗闇に光を与えることができた、F█████に捧ぐ”という文章は、フレイヤと出会いそれまで以上に闇を照らすSCP-1619-C個体を作り出せたことの喜びと感謝を示しているように思われます。
アポロは夫探しを手伝いフレイヤは夫を見つけますが、夫は死んでおりそれを知ったフレイヤは自殺。アポロもそれを追おうとしますが、死ぬことができず自身とその空間をシリンダーフィラメント電球に封印したと思われます。
SCP-1619-1はアポロの悲しみに影響され攻撃性を獲得したと思われます。SCP-1619-1は呼吸をする者に敵意を示し、心肺機能蘇生でインクを注ぎ攻撃してきますが、SCP-1619-1の行動は溺死を救えなかった自分自身への怒りや悔しさが表れているのではないでしょうか。
その後アポロとその空間を封じ込めた電球はAnomalousアイテムとして財団に収容されサイト-45-Cのフロア24に運ばれます。そして財団の博士による実験で封印が解かれ異空間と入れ替わった――これがSCP-1619の真相かもしれません。そしてアポロは探査任務で訪れたヘイワードと会いヘイワードの協力で死ぬことができました。
これで今回の考察のメインは終わります。以下は結論が出なかった内容になりますが、一応紹介します。文書1619-8: 一部記録-9にカリカチュアが記録された人物についてです。
カリカチュアの記録
カリカチュアの記録に書かれていた口が縫い合わされた子供は、北欧神話のロキ – Wikipediaかもしれません。ロキはトールの妻シヴの髪を切り、そのことでトールに脅され、髪の賠償として小人に宝具を作らせました。その際にロキは小人と賭けをして負け、自身の頭を渡す代わりに口を縫いつけることで小人の許しを得たそうです。
その後ロキは最終的にはオーディンの息子バルドルを殺害し、宴の席で神々への侮辱を行ったことで捕らえられ、神々によりラグナロクまで洞穴に幽閉されることになります。ロキもこの異空間にいた可能性があります。
同じくカリカチュアの記録に書かれていた男性の老人は釣り人の姿でしたが、ロキの捕縛 – Wikipediaによるとバルドルを殺害して逃げたロキは、鮭に変身して川へ飛び込み、自らが考案した漁網により捕えられています。ただ女性の老人が料理の服装なのは北欧神話との関連が見出せないので、ロキの捕縛と関連があるかはちょっとわかりません。
メスフラスコを手にしている女性は北欧神話とは関係なさそうですが、この女性が何かの研究者だとするとプロメテウスラボと関連があるのかもしれません。
補足情報
ディスカッションには他にも作者コメントがあったのでここで紹介します。
railbob 2013年10月29日、03:20
I feel like I’m missing the connection between the anomalous item and the resulting phenomenon and the connections between the different details (walking sculptures, living lamps, a plant that looks like paper, ink that kills you). Can someone explain it in simple terms?
私は、anomalousアイテムと結果として生じる現象との間の関係と、異なる細部(歩く彫刻、生きたランプ、紙のように見える植物、あなたを殺すインク)との間の関係を見逃している気がします。誰か簡単な言葉でそれを説明できますか?
Fantem 2013年10月29日、09:08
The bulb was a sort of sigil for SCP-1619. It was sapped, and broke when it got too dim, which created this. As for the rest… They aren’t so much connected to each other, as they are connected to the artist. I don’t want to say it, and I won’t admit it if I can help it, but I know people can find out.
If you mean how they relate to each other physically, it’s an artscape. They are all meant to follow the basic roles of flora and/or fauna, and interact as a real ecosystem.
電球はSCP-1619のある種の印です。それは暗くなりすぎた時に消耗して壊れ、これを作りました。そのほかについては…それらは芸術家と結び付いているほどには、お互いにそれほど関係していません。私は話したくないですし、もし手助けできるとしてもそれをよしとしないでしょうが、きっと見つけ出せると思います。
もしあなたの意味するものが、それらが物理的にどのように相互に関連しているのかということなら、それは芸術的景観です。それらはすべて、動植物の基本的な役割に従うこと、そして実際の生態系として相互作用することを意図されています。
隠し文章
SCP-1913には隠し文章があります。詳しくは以下の記事にまとめています。
http://scpnote.com/archives/hidden-message-of-pitch-haven.html
隠し文章はこちらです。
We apologize for your grief, Stuart. She will return. We promise.(君の深い悲しみに対してお詫びしよう、スチュアート。彼女は帰って来る。約束する。)
おわりに
Pitch Havenシリーズ紹介と考察 第4回、SCP-1619 – サイト-45-C:フロア24でした。悲しい話でしたね……。
ちなみにこの作品の年代は1960年で、Pitch Havenハブによるとスチュアートとサラは1888年生まれです。つまりこの作品の時点で二人は既に72歳です。72歳での探査任務は厳しいと思われますが、探査を行えているので、二人はSCP – 1903の情報災害により、老化が緩やかになっているのかもしれません。
なお二人の年齢は、SCP-1913の時点(191█)で22~31歳、情報災害に影響された時点(194█年)では52~61歳となります。
次回はPitch Havenシリーズ紹介と考察 第5回 SCP-2999 – クロネコとシロウサギです。
SCP-1619 – サイト-45-C:フロア24に基づく本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。
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