前回よりお送りしているPitch Havenシリーズ紹介と考察です。今回は第2回としてインタビューPH-SC-TAN-45-1903とSCP-1913 – 猛るモノ達を紹介&考察します。
前回の記事はこちらです。
http://scpnote.com/archives/pitch-haven-scp-2746.html
インタビューPH-SC-TAN-45-1903
Interview PH-SC-TAN-45-1903
著者:Fantem
http://scp-wiki.net/tooth-and-nail
作成年:2017
翻訳者不明
http://ja.scp-wiki.net/tooth-and-nail
作成年:2017
こちらのTaleはエージェント、サラ・クロウリーに対するインタビューです。サラ・クロウリーは財団に雇用される以前の経歴について質問され、それに答えています。インタビューは1903/██/██に行なわれました。
インタビューによるとサラ・クロウリーは、赤子の時にE████とT█████・クロウリー兄弟に引き取られたそうです。しかしこの引き取りは、善意によるものではなかったようで、彼女は”連れ去られた、何とでも呼べば良い”とも話しています。その実態は人身売買に近いものだったのではないかと思われます。
彼女の幼少期は劣悪な環境だったらしく”普通の子供というより、狂犬みたいな扱いだった”とサラ・クロウリーは述べています。実際彼女は檻に入れられていました。クロウリー兄弟はおそらくは違法な格闘場の運営をしており、彼女に戦いを教え込んでいたそうです。
戦いに備えさせるため、彼らは毎日のように、蝋燭の上に彼女の指をかざして、爪が岩のように硬くなるまで炙り、歯をやすり掛けすることで爪と歯を研ぎました。そして七歳の時から彼女は格闘場のリングで、見世物として大の男と戦わされました。
全く勝ち目のない戦いに見えますが、彼女は死にもの狂いで戦い勝ち続けていきます。彼女の戦い方は尖らした爪で相手の目を引っ掻き、やすりがけした歯で相手の肉を噛み捨てる、獣じみたものでした。そんな常軌を逸した環境の中では、戦いの間だけが彼女が人と”交流”できる唯一の時間であり、戦いに全力を尽くすことだけが彼女の日常でした。
彼女はある試合の後、兄弟たちを襲い逃亡。自由の身となりました。
これがサラ・クロウリーの過去になります。想像を絶する過酷な幼少期でした……。次の作品からスチュアート・ヘイワード博士と財団エージェント、サラ・クロウリーが登場します。
SCP-1913 – 猛るモノ達
翻訳者 gnmaee
作成年:2016
二人が登場する最初のSCP作品がSCP-1913 – 猛るモノ達です。画像は初見は怖いですね……。
SCP-1913は3体の実体の総称。オブジェクトクラスはEuclid (元Keter)。以下の3体からなる。
- SCP-1913-1:ネコの姿を象った陶製の像。’アガサ’の名前がエッチングされている。知性を持ち、若い女性の声で話すことができる。
- SCP-1913-2:頭蓋と指が大きなイヌ科のように見える、黒い髪と灰に覆われた女性の人型骨格。知性は見られず、ほぼ完全にSCP-1913-1かSCP-1913-3からの命令に従って行動する。
- SCP-1913-3:口、鼻、目のない若い(日本支部の訳は未熟となってますが、意味的には若いが適当のようなので変更しています。)オスの黒毛のラブラドールレトリバーの姿をした実体。その顔は笑顔に見せかけた複数の凸凹の穴から成り、薄暗い白色光が見える。知性を持ち、自身を’フレディ’と称する。
各個体は不死とみられ、死の徴候を示さず、致命的な傷を時間毎に修復するか、’死亡’した場所の近くに破壊された1時間以内に再出現する。全てのSCP-1913個体は硫黄に対して嫌悪を示す。
SCP-1913-1は高さ20.5cm、重さ8.3kgで、白い光沢ペンキが鼻、耳、額に塗られ、黒い湿ったインクのような物質が目、口、足の周りに塗られている。意思疎通が可能で、その内部から女性の声が発せられる。財団職員に対して軽蔑を示すが、その容器を振ることで恐怖を与えると協力的になる。
SCP-1913-1の目、口、足を覆うインクは50.9%の水、48%の灰、0.9%の塩、0.2%の銀で構成され、生きている人間の表皮へと接触すると、この物質は犠牲者の孔から吸収され、インクの量に応じて、影響を受けた箇所は素早く溶解し始めて、最終的に消失する。全身が分解されるまで、犠牲者は死亡しない。
わりと凶悪です。
SCP-1913-2は骨格のみで運動に必要な組織が欠如しているにもかかわらず、時速65kmの速度で動くことが可能。SCP-1913-2は基本的にはおとなしいが興奮すると人間を引掻いて攻撃する。その攻撃は対象に主要な器官の損傷や失血をもたらすものの、SCP-1913-2は犠牲者を殺すことができない。
犠牲者から器官や四肢が切り離された場合、それらの器官はその犠牲者から独立して生き続ける。SCP-1913-2によってその身体から切り離された器官が死んでも、犠牲者は死亡しない。(※最後の文は翻訳が一部間違っているようなので修正しています)。
SCP-1913-2による攻撃は犠牲者が一般的にショックで動きを止める、または別の存在がSCP-1913-2を刺激させるまで続く。SCP-1913-2は生存に食事を必要としないが、犠牲者の肉を食べる傾向を示し、食料が供給されなかった場合、興奮し始める。SCP-1913-3はSCP-1913-2を’テリー’と呼ぶ。
事象-1913-3の前にSCP-1913-3はSCP-1913-2に白衣、または輸送隊オメガ-8(以前”揺り籠の猫達”として知られていた)の一般的な標準防具を着用した人物を誰でも攻撃するよう指示したと考えられている。
SCP-1913-3はその顔の穴から灰色の最高1200℃(~2192°F)にまで達する炎を発することができ、これらの炎との接触で付いた火は、犠牲者の皮膚を完全に燃やすか、火が消されるまで燃え続ける。犠牲者はSCP-1913-3との曝露により重度の火傷を負い、通常は視覚、聴覚、触覚を完全に失う。
SCP-1913-3の犠牲者を処分する試みは、犠牲者がSCP-1913-1のインクによって分解された時のみ成功した。非常に大量の硫黄で’妨げ’ない限り、SCP-1913-3は他のSCP-1913個体の大まかな位置を特定することができる。SCP-1913-3は定期的に気分を変動させ、中立的から攻撃的にまで変わり、時折収容職員を罵る。
発見と収容
SCP-1913-1は、191█/03/24、地方の難破調査の際にV███████港から発見された。
SCP-1913-1はニューヨーク市への移送を行っていたと考えられる███████の残骸(原文はwreckageで難破船を意味している模様)の中からエージェント・クロウリーにより発見された。残骸の中からは2体の死体が発見され、2█人の乗員は行方不明。
191█/04/02にSCP-1913がサイト-██に到着した際、SCP-1913-2とSCP-1913-3がそのサイトを攻撃し、緊急避難規約が発令された。SCP-1913-2は繰り返しSCP-1913-3を、SCP-1913-1を載せた脱出車両へと投げ付け、脱走までに車両に大きな損害を与えた。
最高1200℃にまで達する燃え尽きるまで消火不能な炎を発する実体を、時速65㎞で移動する実体が投げつけてきたら、逃げられただけでも十分です。
191█/04/04、財団は特別収容プロトコル、改訂-7を作成し輸送隊オメガ-8(通称”揺り籠の猫達”)を設立した。これはSCP-1913-2とSCP-1913-3による攻撃を回避し、2体の実体を掃討し無力化するためのもので、輸送隊オメガ-8はSCP-1913-1を収容しつつ人口密度が低い地域を移送し、SCP-1913-2とSCP-1913-3との交戦に備えた。
移動しながら収容するという無茶な特別収容プロトコルですが、他に方法はなさそうです。
しかしながら2体の有する異常性から、2体の実体を無力化し収容する試みは失敗し続けた。輸送隊がサイト-45-Aで供給品を受けている間にSCP-1913-2とSCP-1913-3による、襲撃を受けサイト-45への侵入を許した。
輸送隊オメガ-8は予備隊を要請したが、到着前に無力化され、ヘイワード博士とエージェント・クロウリーは研究ラボ1██へと追い込まれた(特に書かれてはいませんがヘイワード博士とエージェント・クロウリーは輸送隊オメガ-8と行動していたようです)。
SCP-1913-3はエージェント・クロウリーを追い込んだが、何も攻撃せず、ただそばに座った。クロウリーか’どうして?’と言うと、SCP-1913-3はこれが勤めであり、この炎は贖い(あがない)で、見ることも、聞くことも、感じることも悪も、何もかも見えす、ただ自身だけが残されていると語った。
ヘイワードはマイクをSCP-1913-3にぶつけたが、やり返され火傷を負った。SCP-1913-3はSCP-1913-2にヘイワードの殺害を命じSCP-1913-2が心臓を引き裂くも、偶然そこにあった硫黄の瓶が割れて攻撃が停止した。それを見たクロウリーは硫黄の瓶をSCP-1913-2とSCP-1913-3に投げつけた。するとSCP-1913-2とSCP-1913-3は逃走し、ヘイワード博士の命を救った。
サラ・クロウリーの活躍で解決しましたが、ヘイワード博士それは無謀では……。
この際の詳細な情報はインタビュー1913-Aに書かれており、サラのスチュアートへの好意も述べられている。
ヘイワード博士はこのインタビューの1ヶ月後(one month after this interview)、集中治療から解放され、腕と胴体の3度の火傷と胸に空いた焼灼の穴を回復した。SCP-1913-2またはSCP-1913-3がSCP-1913-1に到達した(reaches)場合に、SCP-1913-1の身体的変化に加え、4体目の実体が解放または生成される可能性への言及は、ヘイワード博士により考察が行われ、SCP-1913-1によって確認されたが、SCP-1913-3は否定した。
※この段落は翻訳が一部間違っているようなので修正しています。
SCP-1913-1~3の正体
SCP-1913-1~3の正体は、それらの実体が有する特徴から1がAgathos、2がClovis、3がFredrickであると考えられます。Pitch Havenのハブページの記述でもそう書かれています。
SCP-1913-1
それぞれの実体の特徴をまとめてみると、まずSCP-1913-1については以下のようになっていました。
- 鼻、耳、額に塗られた白い光沢ペンキ
- 目、口、足の周りに塗られた黒い湿ったインク状物質
- ネコの姿を象った陶製の像
これらの特徴はSCP-2746 – ████は死んだに書かれていた以下のAgathosへの刑罰と一致しています。
- Agathosの殻は、白い粘土によって覆われ、彼女の姿を象って彫像される。
- Agathosの両目は、彼女の殻から取り除かれる。
- 流出した分のAgathosの血は、聖なる煤に晒された水へと置き換えられる。
SCP-1913-3
SCP-1913-2
そしてこの他にも、SCP-1913-2には犠牲者を殺すことができず、犠牲者から切り離された器官や四肢が独立して生き続けるという異常性がありました。これは、Clovisはかつては熟達した癒やしの奉仕を行っていたという記述と一致しているように思われます。Clovisには切り離された器官や四肢を生かした状態にするという癒やしの力があった可能性があります。
SCP-1913-2は何なのか?
要注意団体プロメテウス・ラボ
FredrickとAgathosの復活を望む組織が何か。それはハブページに書かれているある要注意団体、プロメテウス・ラボのことではないかと思われます。
Pitch Havenハブページによるとプロメテウス・ラボは1892年に、アガサ・ホワイト主導のもと何人かのSCP-2746の元住民によって創設された、「生命を改善し、超常現象に対処すべく人間性を備える」という目標を掲げる科学研究開発会社で、PLの創設に携わった、または参加したメンバーの多くは、それが贖罪や善意からの行動であると主張していると書かれています。
プロメテウス・ラボにSCP-2746の元住民が加わっていることから、プロメテウス・ラボがFredrickとAgathosの復活を望んでいたとしてもおかしくはなさそうですし、魂をほかの肉体に移すこともできそうです。
アガサ・ホワイトという人物が気になりますが、後にほかの作品に出てきます。その時までお待ちください。
まとめ
それではプロメテウス・ラボが関わっていると仮定して、これまでの内容をまとめてみます。
プロメテウス・ラボはFredrickとAgathosを復活させるため、SCP-2746から永久の磔刑と生き埋め状態のFredrickとAgathosを手に入れようとします。
隠し文章
SCP-1913には隠し文章があります。詳しくは以下の記事にまとめています。
http://scpnote.com/archives/hidden-message-of-pitch-haven.html
隠し文章はこちらです。
You put them right where they need to be.(君は彼らをいるべき場所に正した)
おわりに
Pitch Havenシリーズ紹介と考察 第2回 インタビューPH-SC-TAN-45-1903とSCP-1913 – 猛るモノ達でした。次回はPitch Havenシリーズ紹介と考察 第3回 SCP-1903 – ジャッキーの秘密です。
アイキャッチ画像を除く本記事の内容はインタビューPH-SC-TAN-45-1903とSCP-1913に基づき、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。
アイキャッチ画像
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