SCPシリーズは基本的にホラーが多く、危険なものばかりですが、中には間の抜けた脱力系のSCPも存在します。今回はそんなSCPのひとつであるSCP-1004-JPを紹介します。
SCP-1004-JP – アザラシじゃらし
オブジェクトクラス: Keter
実験
SCP-1004-JPの人間に対する行動を観察するべく、財団はいつものように、Dクラス職員を用いて実験(記録SCP-1004-JP-2)を行います。財団の実験は、場合によっては死の危険が伴う程危険なものですが、この実験ではアザラシがDクラス職員に対して罵倒しながら体当たりするというシュールな状況となり、実験に参加したDクラス職員も当惑しています。
SCP-1004-JPの発言はこちら(抜粋)。
愚かな猿よ、我の前で自ら水に入ろうとはイカにも劣る愚行。後悔することになるであろう。死を以ってその罪を贖い、懺悔せよ。
矮小なる猿よ。貴様の貧弱なる様、臆病なる様は失笑物だな。恐怖に相対した運命を呪え。水の冷たさを呪え。
卑小な猿よ、貴様のせいだ、貴様の愚かな行いのせいでこれから貴様の同族が犠牲になるのだ。愚か、実に愚か。いや、間抜け。滑稽。
30分ほど体当たりと罵倒を繰り返しますが、浅いプールでライフジャケットを着用したDクラス職員にとっては脅威ではなく、最後には攻撃をあきらめどこかに転移します。しかし人がいなかったようで15分後には戻ってきます。この転移能力があるため、完全な収容ができず、Keterというオブジェクトクラスになっているのだと思われます。
しかし、2003/█/██以降、SCP-1004-JPのサイトへの出現率は急速に減少。SCP-1004-JPは事実上の未収容状態となった。その後、小型船舶及び乗員・海水浴客が行方不明になるなど、確認できるだけで█件のSCP-1004-JPの関与が疑われる事故が██日以内に発生し、早急なプロトコル改定が要求されます。
海水浴中に、罵倒しながら体当たりしてくるアザラシが突然現れたら、驚いてパニックになり、溺れてしまうかもしれません。また攻撃して破裂させてしまう可能性もありますね。
インタビュー
そんななか、SCP-1004-JPに対するエージェントによるインタビューが行われます(記録SCP-1004-JP-4)。以下抜粋します。
エージェント███: やあやあSCP-1004-JP、きみはどうしてそんなに人を沈めたがるのかな?
SCP-1004-JP: 愚かな猿め、貴様等には海に浮く藻屑ほどの価値も無い。
エージェント███: どうかな?仲良くなってみたら… 案外人間もいい奴かも知れないですよ?
SCP-1004-JP: 白痴の貴様がその咎を忘れようと、我が忘れることは無い。
エージェント███: その咎とはなんでしょうか?
SCP-1004-JP: 我が同胞の怨み、我が孤独、無念。
エージェント███: なるほど、それはどうすれば清算することができますかね?
SCP-1004-JP: 愚かなる猿よ、罪の清算は貴様等全ての死という等価を以ってのみ成されるのだ。溺れろ。沈め。浮かべ。浮かべ。浮かべ。
人類の全滅を望んでいるようですが、手段が釣り合ってません。エージェントの発言も緊張感は感じられません。
被害を減らすためにも新たな収容方法の確立は必要であり、そのために新たな職員を用いて安全装備未着用の状態でのSCP-1004-JP誘引任務を行うことが提言されます。
誘引任務
SCP-1004-JPは明らかに個人を識別しており、例として担当任務に割り当てられていたD-100405が誘引役を行っていた時間帯には特に顕著な出現率の低下が確認されていたことから、個人認識あるいは収容環境の安全性を理解した結果出現率が低下したという仮説が立てられ、誘引任務確立のための実験が行われました。実験記録(記録SCP-1004-JP-5)を引用します。
対象: D-100411(水泳に自信を持つ人員の募集に志願)
目的: 収容プロトコル改定のため、SCP-1004-JPの誘引に有効な状況を模索する。
実施方法: 遊泳用着衣のみを着用させ、水深2mのプールに入水させる。
結果: 音声記録を参照。
<記録開始, 2003/█/██>
████博士: 目の前にSCP-1004-JPが浮いているプールがあるでしょう。まずはそれに入ってください。
SCP-1004-JP: 愚かな猿よ、我が前にその無力な体躯を晒そうとは、死を以って後悔する結果となるであろう。
D-100411: おーよしよし!(SCP-1004-JPに抱き着く)
████博士: D-100411、SCP-1004-JPへの攻撃は認められていません。直ちに止めないとSCP-1004-JPの異常性により終了という結果になるでしょう。
D-100411: 大丈夫だろ?攻撃じゃないんだから?
SCP-1004-JP: 愚かな猿め、愚かな振舞いを止めるがいい、愚かな猿め。(回転しD-100411を振り払う)
SCP-1004-JP: (D-100411に平時より勢いよく衝突する)
D-100411: これは最高だな!こんな素敵な任務があったなんて!
SCP-1004-JP: 愚かな猿め、その愚行、死を以って後悔するだろう、愚かな猿め、沈め、愚かな猿め。
D-100411: 俺は簡単には沈まんよ!
[D-100411はそのまま30分ほどSCP-1004-JPからの逃亡、及び格闘を繰り返した]
████博士: それ以上は危険でしょう、一旦上がって休憩を取ることを許可します。
D-100411: まだまだ大丈夫だって、危なくなったらこっちから言うからまだやらせてくれよ!
SCP-1004-JP: 沈め、水の底に沈め。無残に、屍を浮かべろ、愚かな、愚かな猿よ。愚かな猿め、沈め、溺れろ。愚かな猿よ、沈め、暗い水に沈め。愚かな猿め。愚かな猿め。沈め、溺れろ、愚かな猿め。愚かな猿め、貴様の行いは無意味だ、愚かな猿め。沈め。溺れろ、沈め。愚かな猿め。
D-100411: よしよし、かわいいやつめ。そんなので本当に人を沈める気があるのか?そりゃよ、溺れかけた人間なら罵ればパニックにはなるだろうがよ。 何か別の方法を考えたらどうだ?
[SCP-1004-JPとD-100411は更に20分の間、収容プール内で格闘を続けた]
SCP-1004-JP: 愚かな猿め。
████博士: もう十分でしょう、他の職員と交代しましょう。
考察: SCP-1004-JPは最後まで収容室から離れる兆候を見せずにD-100411を襲い続けた。要因については更なる調査が必要だと思われるが、収容室への興味が薄れていたと見えるSCP-1004-JPにある種の執着を感じさせることができたのは、大きな収穫であると言えるだろう。
D-100411は心から楽しんでますね……。SCP-1004-JPの意図に反する行動を取り続けると、執着を持たせられるようです。
最終的に財団は実践結果から、改定プロトコル『ルアー』を決定します。以下引用します。
2003/█/██現在、適性があると判断されたDクラス職員数名を中心にローテーションをもってSCP-1004-JP誘引の同プロトコルを実行しています。担当の候補となる職員はSCP-1004-JPの興味を引くことへの適性を調査されなければいけません。補助器具を用いた職員の配置は出現時間の減少に繋がるため、担当の職員には水泳の心得があることが求められます。また、適性があると判断された人間は「SCP-1004-JPの発言に負の感情を抱かない」あるいは「SCP-1004-JPの話を聴かない」傾向にあることが判明しています。
おわりに
なんとも間の抜けた脱力系のSCPでした。たまにはこういう話を読むのもいいですね。
by yuC
ja.scp-wiki.net/scp-1004-jp
作成年:2016
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