ストーリー性のある哀しいSCP、SCP-321 – 我々の子供を紹介します。
SCP-321とは
SCP-321は、次席研究員アダム █████とその妻である医療アシスタント、エヴリン █████の間に死産状態で誕生した。
█████次席研究員は、娘を蘇らせる効果を持つ[編集済]を含む、いくつかのSCPを使用することを企てた。処置は効果があったが、娘は調査のために財団の管理下に置かれた。調査の結果、彼女は通常のおよそ5倍の速度で負傷を治癒する回復能力を持つとすぐに判明。対象はこの時点でSCP-321として財団の記録に登録された。
それ以来SCP-321の身体は、およそ通常の人類の半分の早さで年齢を重ねている。老化は遅いが、成長は続いており、いまや記録に残るどの人類より背が高いにも関わらず、成長が止まる兆しはない。現時点では、SCP-321の回復能力は、豊富な幹細胞産生に由来し、死と[編集済]の相互作用の結果であると信じられている。
SCP-321の知性は非常に低く、日常の活動はSCP-321にとって面倒な仕事であり、SCP-321に食事用具の使い方などを教えることに数ヶ月、あるいは数年がかかる。声帯は完全に発達しているが、会話を学習することは不可能なようで、その代わり生後6ヶ月の乳児が発するような意味のない声を出したり泣き叫んだりする。
特別収容プロトコル
特別収容プロトコルは以下のようになっています。SCP-321は、規定の格納室で保管します。脆弱な骨格及び筋肉量を補うために、広範な補強材が供給されています。人工心臓は月に一度、損傷の有無を検査すべきです。SCP-321には毎日三回給餌を行ってください。固形の食品は、規定の食事から除外します。現在のところ、3名の職員が臨時にSCP-321へ割り当てられています。実験のために個室へ収容している間を除いた時間の内で、一日3時間、体操及び運動療法を行わせてください。SCP-321は何かを要求することができませんが、いくつかのぬいぐるみが許可されています。
ここまでがSCP-321の説明内容になります。次席研究員アダムが死産した娘を助けるため、SCPを用いて娘を蘇らせた。しかしSCPを用いたことで、娘は驚異的な回復能力と止まらない身体の成長という異常な特性を持ってしまい、SCPとして収容された――。大切な娘を救うための行動が、結果として娘の収容につながってしまったという、アダムにとって非常に辛い話となっています。
報告書の続き
しかし、報告書はここで終わらずさらに次のように続きます。
要請を認めない。これが最後だ、アダム。彼女は今も、今までも君の娘ではない。もしもう一度試みれば、理事会を招集し、君を解任する。 -O5-1
そう。アダムはあきらめていなかったのです。アダムは娘を取り戻すためにより高い財団内の地位に着き、そのたびに何度もSCP指定を解こうとします。最終的に彼は、財団最高位の管理者で構成される委員会、O5評議会の一員、O5-12まで上り詰め、SCP指定を解く命令を出します。
しかしO5-1はこれを認めません。人類を守るため、オブジェクトの確保・収容・保護を行うことが存在理由である財団にとっては、彼女はアダムの娘ではなく、収容すべきSCP、SCP-321でしかないのです。
ここでSCP-321のタイトルの意味が判明します。
SCPに指定された彼女は、”アダムの子供”ではなくなり、財団が収容すべき”我々の子供”になってしまったのです。
終わりに
いかがでしたでしょうか?救いのない哀しい話でしたが、短い報告書の中にストーリーを織り込み、財団の非情な面を描いた完成度の高い作品だと思いました。
TheDuckman
http://www.scp-wiki.net/scp-321
作成年:2010
http://ja.scp-wiki.net/scp-321
翻訳者・作成年不明
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