SCP-2090 – 潜在的XK ティム・ダンカン ―神格化を阻止せよ―

SCP紹介&内容整理
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意外なオチが面白かったSCP-2090 – 潜在的XK ティム・ダンカンを紹介します。

※2021/08/06、新たに改稿された部分を反映しました。

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SCP-2090とは

SCP-2090はティム・ダンカンの名で活動しているクラスⅠヒト型実体。現在はプロバスケットボールチームであるサンアントニオ・スパーズに所属している。ポジションはパワーフォワード/センター。

SCP-2090の異常性は目には映らず、局所的現実への干渉を識別するために用いられるカント現実計数機の使用を通してのみ検出が可能となっている。SCP-2090は非常に高いヒューム値を有するが、この効果はその肉体に限られており、周辺世界には影響を与えていない。

高いヒューム値を有するというのは財団が危険視する現実改変者と同じ性質です。ヒューム値については当サイトの記事をご覧ください。

SCP-2090は当初、カリフォルニア州サクラメントの要注意領域CA-74”スリープ・トレイン・アリーナ”の定期検査が、サンアントニオ・スパーズ対サクラメント・キングスの試合中に行われた際に発見された。

最初のうち機器の故障と思われていた出来事は、後になって、SCP-2090が引き起こした大規模干渉によるものと判明。

SCP-2090が高い知名度を得ていたため、一般社会から対象を除去して更なる監視のため収容下に置くことは実行不可能と判断された。これにより、機動部隊ロー-5(“スパーズ&サドルズ”)が結成され、SCP-2090を常に監視しつつプロトコルŌllamaliztli-5の適切な適用を確実なものとすることになった。

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プロトコルŌllamaliztli-5

プロトコルŌllamaliztli-5は、財団データベース内に暗号化されたファイルから推測・実装されたプロトコル。

SCP-2090の初期の監視中、財団IT職員は財団データベース内に暗号化されたファイルを数多く発見し始めた。それを受け、財団内部諜報チームはこれらファイルへのアクセスを取得し、その起源を発見する試みを開始。SCP-2090研究チームとMTF R-5の助けを借りて、コード破りの努力は成功を収めた。

特筆すべき点として、全てのファイルは発見日以降2年以内の様々な日付を有している。にも拘らず、追加情報はこれらが長期間にわたって財団データベース内に存在していたことを示唆している。ファイルの多くは不完全またはデータ欠落状態でしたが、プロトコルŌllamaliztli-5を正しくするのに十分な量のデータは回収された。

プロトコルŌllamaliztli-5は、財団データベース内から見つかったとありますが、何故なのでしょうか?
その理由は回収されたファイルを見るとわかります。

回収されたファイル2090/1

私たちはこれを[データ破損]に送る、[データ破損]恐怖、だが人類への希望を込めて、もし神格がいなければ
緊急! 緊急! 緊急! [データ破損]に遅れてはならない 神格は絶えず動いている
以下の情報に留意せよ。

神格、またの名を[データ破損]、かつてセント・クロイ島の住人ティム・ダンカンだった存在
破壊者はカリフォ[データ破損]自ら足を踏み入れ[データ破損]水は血に染まった
2016
[データ破損]
[データ破損] 忘れるな
奴は昇天する

このファイルは財団からの緊急通信のようです。ティム・ダンカンだった存在が神格となり、カリフォルニアに侵入。大惨事を引き起こしたことが伺えます。文面から推察するとティム・ダンカンは2016年に昇天(神格化)したということでしょうか。

回収されたファイル2090/4財団

ファイル31[データ破損]maliztli-5

プロジェクト主任: ドレイク・ヴァン・ドーン

プロジェクトの目的: N/A
情報: 神格はサイト-45とサイト-56を通り抜けていった。完全な収容違反が発生しており、西部沿岸地域は今では崩壊している可能性が高い。
残念ながらシミュレーションの最終ラウンド完了に十分長く電力を持たせることはできないが、[データ破損]プログラムを送信することは出来るかもしれない。以前の財団データベースならこいつを完了させられる。
コンピュータがいつ発明されたのかはどうしても思い出せないが。クソッ、とにかく今はこれを完了させなければ。選択の余地は無い。
きっと私たちが見逃してしまった何かがある。君たちの誰かがそれに気付いてくれることを願おう。すまない。
[データ破損]

神格はサイト-45とサイト-56を破壊し、収容違反が発生したようです。西部沿岸地域は崩壊している模様。財団は電力不足で完了できなかったなんらかのシミュレーションに関するプログラムを送信したようです。「以前の財団データベースならこいつを完了させられる。」とあるのでプログラムは過去に送信されたようです。

回収されたファイル2090/17

宛先: hbaker@s17.scp
差出人: O5.7@s01.scp
全く以て非公式な形式で申し訳ない。我々がこれを終えられるかどうか分からないので、私はすぐ移動して別の場所にリソースを割り当てようとしている。リチャードソンは正しかったよ、ファイルは常にメインフレーム上にあった。日付は、しかし、極めて興味深いものだ。全て現時点でリストアップされているというのに、記録上ではこれらのファイルが[データ破損]なことはどうでもいいんだ。本題に入ろう。
[データ破損] は、早期防止システムの一種を作成するためにデザインされている。全ての世界線はこれを転流だと言うが、そのどれもがシミュレーションを終えていない。彼らはこの出来事に対する自分たちの結果のバックアップを取って、次の連中がシミュレーションを終えることを願いながら送信し続けている。我々は遂にや[データ破損]が、時すでに遅すぎた。
我々は皆、掩蔽壕に移動している。つまりそういう事だ。ファイルはまだ全てメインフレーム上に残っている。それをどうすべきか君なら分かるはずだ。ああ、神よ。オーケイ。
[データ破損]ーメン。

このファイルを残した財団のデータベース内にも暗号化されたファイルがあったようです。これは神格化が起こった世界の財団が、おそらくは過去に向けて送ったもので、完了させられなかったなんらかのシミュレーションを過去の財団に託しています。しかし託された財団側でもシミュレーションを終えられなかったようで、再び過去に向けて送信を行い、そのサイクルが何度も繰り返し行われているようです。

このシミュレーションが何なのかというと、早期防止システムの一種を作成するためにデザインされたものようです。このファイルを残した財団で初めてシミュレーションが終わったものの、手遅れだったようで再び過去に向けて、おそらくは次のファイル2090/43を送っています。

回収されたファイル2090/43

FOUNDATION GENERAL ALERT
アラートレベル5
以下はサイト- N/Aから-N/Aまでの全財団職員に向けた通知です
良し、このシステムはまだ動いているな。フォーマットが君たちの居る所と同じであることを願う。
全ては揃ったから、君たちは自分なりにこれを理解しようと努めているだろうと思う。私には細部まで説明する時間は無いが、シミュレーションの実行は終了した。我々はこいつを止める事が出来るかもしれない。今ではないが、たぶんどこか別の世界線の我々が。
結果によると、これは相当な準備を必要とする極めて精巧なセットアップだ。全てのタイムラインにおいてプロトコルの基礎は出来ていたが、完全にサポートされたことは一度も無く、すぐに途絶えてしまう。本質[データ破損]きることは何もない。
FOUNDATION GENERAL ALERT
アラートレベル5
クソッ、オーケイ。これから送信する。こんなに簡素だなんて私には信じられないが、シミュレーションのチェックは出来ているから、これで良いのだろう。奴が成熟するのを阻止する一連の儀式だ。デザインは全てそこにある。私が詳述した通りにするには一手間かける必要があるだろう。儀式が妨害されないことを確実にするんだ、そのためなら何だって実行しろ。
私が最後に加えたのは、儀式場のデザインだ。説明通りに構築して、その後、奴自身が儀式に参加するように手配するんだ。奴にハリケーンをぶつける必要があるのなら、構う事は無い、やってやれ1。
そういう事だ。幸運を祈る。

シミュレーションによって神格化を阻止するための一連の儀式が完成したようです。一体どんな儀式なのでしょうか?

回収されたファイル2090/44

財団プロトコルŌllamaliztli-5
コードネーム: バスケットボール

basketball

 

関連情報: 19世紀初頭からの、アメリカ合衆国および世界各地におけるバスケットボールの促進・奨励は、SCP-N/Aが[データ破損]し神格へ昇天することを必然的に阻止することになります。ルールや規則などの追加情報と、どのようにして時間を掛け発展させていくかについての情報はこのファイルに含まれています。

[データ破損]
上手くいくことを、願っています。

もうお分かりかと思いますが、なんとバスケットボールはティム・ダンカンの神格化を阻止するための一連の儀式だったのです!現在のバスケットボールのルールやコートは財団が作ったもので、その促進・奨励も財団によるものだったのです。

以下は2018年8月21日に追記された内容です。

補遺2090.2: 異常なヒューム活動の停止

2016年7月11日、SCP-2090はサンアントニオ・スパーズで19シーズンを送った後に、ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(NBA)からの引退を表明しました。予測される収容違反に備えて収容担当職員が対象の引退発表に出席しましたが、そのような異常活動は発生しませんでした。この直後行われた対象のヒューム読み取り数値は、ティム・ダンカンとして知られる個人が既に異常なヒューム値を有しておらず、従って最早異常とは見做されないことを示しました。顕著な活動のみられない持続的観察期間の後、SCP-2090はNeutralizedに再分類されました。

財団の努力によりティム・ダンカンは異常性を喪失してNeutralizedに再分類されました。

しかしながら、ティム・ダンカンの引退とその後の再分類以降、複数のプロバスケットボール選手に、かつてのSCP-2090が示していたものと類似する不自然なカント計数機の読み取り数値が見られるようになりました。より多くの情報が収集されるまで、以下の個人は要注意人物と見做されます。

  • POI #57284 – カール=アンソニー・タウンズ – 懸念度: 低
  • POI #57285 – ジョエル・エンビード – 懸念度: 低
  • POI #57286 – ヤニス・アデトクンポ – 懸念度: 中
  • POI #57287 – アンソニー・デイビス – 懸念度: 高
  • POI #57288 – ビクター・オラディポ – 懸念度: 極高

更なる調査が進行中です。

まだ危機は去っていないようですね……。

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おわりに

潜在的XK ティム・ダンカンでした。

補足になりますが、ファイルの送信先は過去ではなく、並行世界という解釈もできますが、「全ての世界線はこれを転流だと言うが」の原文は、

All iterations call it a diversion,

で iteration は、繰り返し、反復という意味で、
diversion は迂回路、転換、移転、転用という意味なので、直訳すると

「すべての反復はこれを迂回路と言うが」になります。この反復は過去への送信の繰り返しのことで、迂回路は過去への送信によって、本来の時間軸から変化した時間軸ということになると思われます。

つまり、過去への送信の繰り返しのすべては、本来の時間軸から変化したものだが、そのどれもがシミュレーションを終えていないという意味になると思われます。ということでファイルの送信先は過去というふうに解釈しました。

ちなみにŌllamaliztliというのはメソアメリカの球戯のようです。

SCP-2090 – Potentially XK Tim Duncan
by djkaktus
http://www.scp-wiki.net/scp-2090
作成年:2014
翻訳者 gnmaee
http://ja.scp-wiki.net/scp-2090
作成年:2016

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