Pitch Havenシリーズ紹介と考察 最終回 SCP-2792 – ユキウサギ・サラ&懐かしき氷

SCP紹介&内容整理

前回よりお送りしていますPitch Havenシリーズの紹介と考察です。今回はその最終回としてSCP-2792 – ユキウサギ・サラとTale、懐かしき氷を紹介&考察します。タイトルで嫌な予感がしますが、この作品でいよいよ事の真相が明らかになります。

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SCP-2792 – ユキウサギ・サラ

SCP-2792 – Sarah Snow Rabbit
原著者 Fantem
http://www.scp-wiki.net/scp-2792
http://ja.scp-wiki.net/scp-2792

SCP-2792はSCP-2792-1及びSCP-2792-2の総称。オブジェクトクラスはEuclid。

それぞれ以下のような特徴がある。

SCP-2792-1

SCP-2792-1は白いウサギの人形。赤い手足、目に相当する黒いボタン、頭、首、手首に巻き付けられたガーゼを持つ。

その姿は報告書冒頭の画像で確認可能です。

主な材料はポリエステル綿であり、中心部の温度は約-210°C。SCP-2792-2が憑依している状態のSCP-2792-1は、平均時速4kmで移動することが可能。

憑依とはどういうことでしょうか……。

SCP-2792周辺の気温は極度に低下し、平均して-45°Cに達するが、冷気はSCP-2792-1より発生する訳ではない。収容外に置かれた場合、72km半径内の気候は同様に変化し、しばしば吹雪や豪雪を発生させる。SCP-2792は意識的に周囲の気温を低下させることが可能だが、-21°C以上に増加させることは出来ない。意識的に異常効果の制御を行わない場合、気温は-45°C前後に戻る。 過去にSCP-2792は1時間23分に渡って気温-201°Cを維持した記録がある。

周囲を極寒にさせるという異常性があるようです。ちなみにバナナを凍らせて釘を打つ実験でお馴染みの液体窒素の温度は-195.8℃です。

SCP-2792-2

SCP-2792-2はかつてエージェント・サラ・クロウリーであった実体。SCP-2792-2の身長は197cm、SCP-1903(メタタイトル、ジャッキーの秘密)感染症のステージ1に罹患しており、半物質的実体(半物質的/semi-corporeal: 物質によって構成されておらず、固体を通過できるものの、物理的に(あるいは疑似的に)接触することが可能な物体や実体を指す財団内の呼称。)に変化している。

SCP-1903感染症とは、顔にマスクが形成され、水銀を含む出血が手・足・歯茎から止まらなくなるというSCP-1903の情報災害を指しているようです。さらにその肉体は半物質的実体に変化しています。

半物質的実体であるにも関わらず、SCP-2792-2はかつてのエージェント・クロウリーを越える物理的な力を有する。オブジェクト指定より以前に、エージェント・サラ・クロウリーはSCP-1619(メタタイトル、サイト-45-C:フロア24)の探索任務中に死亡している。

サラ・クロウリーは死亡したはずでしたが、一体彼女の身に何が起きたのでしょうか。

SCP-2792-2はSCP-2792-1に憑依し、自身の体として扱うことが可能。SCP-2792個体は互いに5m以上離れることが出来ない。SCP-2792-1から離された場合、SCP-2792-2は消失し、SCP-2792-1に憑依した状態で再出現する。

憑依とはこのことでした。

SCP-2792は、”Sari”として知られるBrutusクラスのデミウルゴス実体と関連していることが確認されている。同実体はSCP-2746に起源を持ち、SCP-2746(メタタイトル、████は死んだ)内で死亡したと考えられている。エージェント・サラ・クロウリー、SCP-2792、Sariはそれぞれ時間軸の異なる点における同一実体であると考えられる。SCP-2792が周辺気温に対して及ぼす効果は、SCP-2746内において猛吹雪と関連付けられていたSariとの関連を示唆している。

サラの秘密が明らかになりました。サラはSCP-2792の住民であった“Sari”と同一人物であったようです。Sariは、SCP-2746で最初に創造された13体、「製作者」のひとりでウサギの中では最大級の体長を誇るフレミッシュ・ジャイアント種というウサギの外見を持っていたと判明しています(過去記事参照)。

“Sari”はSCP-2746で起きたNachash事変と呼称される「████の激怒」による反乱時、造物主の側につき、Fredrick(フレデリック)、Agathos(アガトス)、Clovis(クローヴィス)率いる「████の激怒」と戦い、彼らを捕縛しました。

SCP-1913(メタタイトル、猛るモノ達では、サラは、Fredrick(フレデリック)、Agathos(アガトス)の収容で成果を上げましたが、Fredrickはサラに対しては攻撃せず、それどころか胸の内を明かしていました。彼らは”Sari”だと知っていてそのような行動をしたと考えられます(過去記事参照)。

サラに”Sari”の記憶はないようなので、”Sari”は「製作者」から人間に生まれ変わったと思われます。

デミウルゴス実体はPitch Havenハブで使用されていた言葉で、フレデリック、アガトスの項目にはかつてはデミウルゴス実体であったと記載されていることから、この言葉は「製作者」を指す財団用語であると考えられます。

デミウルゴスは本来は、グノーシス主義におけるこの世界の造物主である「偽の神」を指す言葉ですが、Pitch Havenの世界観では世界を作った造物主は、すなわち「製作者」であることから、この言葉が彼らに与えられたのではないかと思われます。

補遺2792-1: SCP-2792は20██/12/20、モハーヴェ砂漠にて大規模な地吹雪を発生させていた所を発見された。結果として吹雪はラスベガスにまで及んだ為に事象の隠蔽は不成功に終わりったが、SCP-2792及び財団との関連は秘匿された。現在の所、吹雪は「突発的な異常気象」として公的に認知されている。

モハーヴェ砂漠はアメリカ南西部のカリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州にまたがる砂漠でその砂漠に位置するのが、ラスベガス地区です。Pitch Havenハブによると、その地区にスチュアートとサラの勤めていたサイト-45、SCP-2746-1、プロメテウス・ラボ本部が存在します。

SCP-2792は、プロメテウス研究所によって作成された気密性容器の近くで発見された。これは、SCP-2792が脱出を試みた過程で破壊されたと見られている。

プロメテウス・ラボが関与していたようです。プロメテウス・ラボで彼女に何が起きたのかは、SCP-2792関連文書で明らかになりますが、その前に特別収容プロトコルを見てみます。

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特別収容プロトコル

特別収容プロトコルは以下のようになっている。SCP-2792はサイト-45-Cの安定収容セル(SHC 368)内に置かれる。SHC 368は最低-225°Cの気温に耐えられるように設計されている。SCP-2792との接触を想定した装備や支給品もまた、同様の気温に耐える必要がある。SHC 368には高容量熱気口が取り付けられ、非常時及び精神的不安定の状況で生じる極度の低温に対抗する為に用いられる。

SHC 368に立ち入る全職員はクラス-A断熱環境服の着用が義務付けられる。

これはSCP-1903感染症対策だと思われます。

SCP-2792がセルより外出する際は必ず、職員はサイト-45-Aもしくはサイト-45-Cに退避する必要がある。ヘイワード・プロトコルに基づき、SCP-2792は毎週月・水・金曜日のカウンセリングを許可されている。

SCP-2792はカウンセリングを必要としているようです。

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SCP-2792関連文書

以降の文書は、SCP-2792がプロメテウス研究所内に確保されていた期間における記録・インタビュー、内部から回収された資料の集積であり、SCP-2792と財団の過去の関わりから、他のSCP報告書への言及が含まれる。

これらの文書にはヘイワード・プロトコルが適用され、サイト-45心理スタッフ、特定2792クリアランスを所持する職員、サイト-45管理官、O5のみが閲覧可能。

インタビュー-2792-0

インタビュー対象: SCP-2792、サラと呼称される

インタビュー担当: クロツ博士

前書: 以下のインタビューは、SCP-2792の人格がエージェント・サラ・クロウリーと同定された後に行われた(収容より█日後)。かつて財団に在籍していた頃の親しい友人であったことから、クロツ博士がインタビュー担当として選出された。インタビューの全体に渡り、クロツ博士はSCP-2792を”サラ”と呼称する。

サラ・クロウリーの友人だったクロツ博士がSCP-2792のインタビューを行っています。

要約すると以下のようになる。

クロツ博士はSCP-2792にプロメテウス・ラボで起きたことを尋ねたが、SCP-2792はそれを躊躇っている様子で、残された医療記録による確認を求めた。しかしそれらは、アルヴァ博士の個人記録が大半であり、クロツ博士は聴取を希望した。

アルヴァ博士はプロメテウス・ラボの博士のようです。

SCP-2792は”ヘイワード・プロトコル”について説明を求めた。クロツ博士は話をすることを条件にそれを答え、態度の良い、知性のあるスキップの為の医者の守秘義務、カウンセリング、娯楽の提供等を含む保障制度であると説明。”ヘイワード・プロトコル”はサイト-45の管理官だった頃、スチュアートが通したという。

スチュアートは亡くなる前はサイト-45の管理官だったと判明。”ヘイワード・プロトコル”という保障制度を制定した模様です。SCP-1903も対象かもしれません。

SCP-2792はスチュアートとの面会を求めたが、一言伝えるとだけ答えた。いぶかしむSCP-2792。クロツ博士が改めてプロメテウスについて尋ねると、SCP-2792はアルヴァ博士がクソサド野郎だったと述べた。

SCP-2792は大量に薬を飲まされたらしい。クロツ博士が加害行為の有無について尋ねるとSCP-2792は明白に気分を害し、部屋の気温は低下し始めた。何らかの加害があったようで彼女はあまり話したくないと答えた。さらに尋ねようとすると激昂。クロツ博士は会話は切り上げた。

後書: クロツ博士がSHC 368を退出した後、気温の急低下が観測される。2分後、SCP-2792はベッドに移り、毛布を被って壁に向かう。

SCP-2792は薬を飲まされた他にも、アルヴァ博士から何かされていたようです。SCP-2792はサラと考えて良さそうなので以降はサラと呼称します。続いては、プロメテウス・ラボにあった資料と思われる初期評価2792-1です。

初期評価2792-1

初期評価2792-1

初期評価 – 製作者004

患者名: サラ、クロウリー(#4、Sari)
ID: 1000985634736634674
日付: 1960/03/27
時刻: 18:45


来歴: サラ・クロウリーは元製作者(#4、Sari)であり、元財団エージェントです。彼女は、パートナーであるスチュアート・ヘイワード(#3、Suiward)に先立って死亡し、人工的な身体を得ることになりました(身体はアガサ・ホワイト管理官によって製作された人形です)。サラは人間であった時に著しい筋力と体力を示しており、それら形質は二次存在にも引き継がれるものと推測されます。

サラが元製作者、Sariであったことが記載されています。ここで、スチュアートも元製作者、Suiwardであると判明しました。Sariと同じくSuiwardは製作者です。SariとSuiwardは先ほど述べた反乱後にSCP-2746に残り、ある文書を残して自殺したと見られます。

サラは、プロメテウス・ラボにより人工的な身体を与えられたようです。その体はアガサ・ホワイト管理官によって製作された人形であるようです。

アガサ・ホワイトという名称はPitch Havenハブ、プロメテウス・ラボの項目に出てきます。それによると、アガサ・ホワイトはプロメテウス・ラボの創始者のひとりで、何人かのSCP-2746の元住民と共にプロメテウス・ラボを創設しています。

容態: 人形に紐づけられた結果、患者は著しく衰弱しています。しかしながら、彼女の二次存在の能力は以前のそれを上回ると期待され、予定される治療の後は戦後製作者級に匹敵すると推測されます。治療は順調に進行しています。

プロメテウス・ラボにより蘇生したものの、著しく衰弱していたため治療が予定されていた模様。

患者周囲の気温は時間経過によって低下します。この効果は治癒に伴って強化され、元の形態により近づくと考えられています。これは、彼女の████における地位と役割を反映したものです。

SCP-2792の異常性は彼女の████における地位と役割を反映したものだったようです。Sariは元製作者であるため、████はエデンのことだと考えられます過去記事参照)。エデンにおいてはSariとSuiwardは”守護者”であり、反乱勢力や罪を犯したものと戦い、捕縛したものを処罰し多くは磔になりました。Sariは周囲に吹雪をもたらす能力があったようです。

ちなみにSuiwardは反乱を率いたFredrickとAgathosを歌によって麻痺させているため、歌に関する能力があったのではないかと思われます。

指示/推奨/計画: 患者が紐づけられた人形は、中核へ意図的に投与された物質に対する生理反応を再現するように設計されています。これは、日用のビタミン剤、栄養剤、処方薬の作用を補助する為です。患者の処遇の目標は、定期的な睡眠導入剤の投与によってここでの滞在を可能な限り短く、苦痛の無いものと捉えてもらうことであり、また二次存在の緩やかな回復を促すことにあります。治療後の自己修復が不要となるように、患者は高い耐久性を付与されています。患者の滞在は、彼女のパートナーであるスチュアート・ヘイワード(#3、Suiward)の現人間形態が死亡するまで継続されます。

プロメテウス研究所からは、スチュアートの到着を早める・遅らせる類の方策は取られません。それまでの間、患者はアルヴァ博士と彼の医療チームの看護の下にあります。

サラは、プロメテウス・ラボでは、アルヴァ博士と彼の医療チームの看護の下、定期的な睡眠導入剤の投与によって苦痛のないように眠らされていたようです。これはスチュアート・ヘイワードの現人間形態が死亡するまでは継続する予定とされています。

薬を飲まされたとはこのことのようですが、アルヴァ博士は他に何を行ったのでしょうか?続いては、アルヴァ博士のメモが記載された文書 2792-2です。

文書 2792-2

付記: 以下のメモは、アルヴァ博士のPCより回収されました。メモの大半は暗号化され、SCP-2792の処方記録と共に保存されていました。

内容を要約すると以下のようになる、メモの日付は1960/03/27~1960/04/8となっている。

アルヴァ博士はホワイト博士にSCP-2792の看護を命じられたが、誰かに押し付けたいと考えるほど乗り気ではないようで、部屋が寒くなることに愚痴をこぼしていた。大昔にもSCP-2792により寒くなったことを思い出し、それ故にアルヴァ博士はSCP-2746を殴打した。

少し気分の晴れたアルヴァ博士は、隠れてSCP-2792を殴ることを思いつく。しかし、SCP-2746は薬で意識がないためこの行為は自己満足でしかない。”ストレス発散”として気が向いたら殴ることにした。

翌日、テトロドトキシン(いくつかの海生生物が持つ神経毒の一種)を使用し、寝ているように見えるが、意識のある状態とすることをアルヴァ博士は思いつく。

アルヴァ博士はサラを知っているようです。アルヴァ博士はSCP-2746の元住民なのでしょうか?それにしても、意識がある状態にして殴るという行為を思いつくとは、アルヴァ博士はろくでもない奴のようですね……。サラ(Sari)に対して何か恨みがありそうです。続いては、インタビュー-2792-3です。

インタビュー-2792-3

 

インタビュー対象: SCP-2792、サラと呼称される。

インタビュー担当: クロツ博士

クロツ博士: こんにちは、サラ。話す準備は出来ているかな?少し質問がしたくてね。

SCP-2792: ええ…大丈夫。

クロツ博士: 始まりからいこうか。時間は気にしなくて構わない。プロメテウスの管理下に移されてから、どれだけの時間が過ぎたかは認識しているかな?

SCP-2792: ええ。1960年の3月28日に死んだのは知っている。大体38年前ね。

クロツ博士: よし、よし。調子は良いようだね。直接の管理はアルヴァ博士にまかされていたとのことだが、彼についてはどれだけ知っている?

SCP-2792: あいつは人間じゃない。本人が言うには…不死身の現実改変者みたいな物ね。不死身の部分は確認出来たけれど、それ以外は。一度、あのクズが自分の首を掻っ切ってみせたわ。ただ私への嫌がらせの為にね。

それ以外には、何も。一応医者らしい。少なくとも、プロメテウスが私にあてがうぐらいには信頼してたのでしょうね。

“人間じゃない”ということは、やはりアルヴァ博士はSCP-2746の元住民であるようです。SCP-2746によるとエデンの住民は殺されぬ限りは不死のようですが、アルヴァ博士の話を信じるなら一種の現実改変者のような力を持っていた可能性があります。

クロツ博士: アルヴァ以外では、君に危害を加える者はいたのか?彼らも不死者だと言ったか?他に同様の者は?

SCP-2792: いいえ、敵意があったのはアルヴァだけ。プロメテウスとしては、昏睡状態のままでいて欲しかったらしいけれど、それ以外は…。あと、どれだけの人間が[アルヴァ]と同類なのかは知らない。ホワイトが奴に何かするのは見たわ。こう、一瞬で消し去ったのよ。おそらく、彼女にも何かあるでしょうね。

アガサ・ホワイトはアルヴァ博士を消し去ったようです。そのような力があるのだとすれば、アガサ・ホワイトもSCP-2746の元住民であると考えられます。

クロツ博士: アルヴァの目的は尋問か?同じ処遇を受けていたのは君だけか?他に管理下に置かれていた人間は?

SCP-2792: いいえ。私の知る限りでは、残りも否ね。

クロツ博士: 彼らが、財団の機密情報を掴んでいた可能性は?

SCP-2792: ホワイトはそうかもね。アルヴァは、どうだか。

クロツ博士: 今の状態にされた心当たりは?

SCP-2792: 特に無いわ。心なしか私に似てはいるかもね。聖句箱のようなものに縛られて、それに入り込める…みたいな状態。正直に言うと、ずっと…居心地が良い?以前の体よりはね。うまく説明は出来ないけど。

言ってしまえば、蘇らせるのに一番簡単な方法だったんだと思うわ。

クロツ博士: 時に、プロメテウスの処置の理由に心当たりは?

SCP-2792: 無いわね。彼らにとっての常套じゃないでしょう、これは?管理官に聞く他無いんじゃないかしら。

クロツ博士: 辛い話題なのは分かっているが、アルヴァは具体的に何をしたんだ?…ゆっくりで構わないよ。

SCP-2792: あいつは…まず私に薬を試してきた。体は完全に麻痺して、でもされたことは全部覚えているわ。私が起きていることに気付いたと思えば、ぶん殴って、点滴を引き抜いて、部屋中を蹴りまわした。腕が引き千切られるみたいだったわ。

そうする度に直されはしたけど、悪化するばかりだった。何のためか見当も付かないけど、記録まで撮り始めて…。ある日、棍棒を持ってきて、その時点で見つかったのは幸いだけど。

アルヴァ博士は思い付きを実行し、サラを虐待していたようです。虐待は棍棒を用意するほどにエスカレートしていった模様です。

クロツ博士: なるほど、見た通りだ。アルヴァの目的は何だと思う?

SCP-2792: ちょうど同じことを考えていたわ。一時、全部復讐の為だ、とか言っていたわ。私が”Sari”という名前だったと言って。Sariに罰を受けたらしい。何の罰かは、知らない、とはいえ、あいつのすることを考えれば恐らく当然の報いだったでしょうね。

アルヴァ博士はSariに罰を受けた恨みがあるようです。

クロツ博士: これで以上かな。ありがとう、サラ、助かったよ。また何か必要があれば呼ぼう。

SCP-2792: どういたしまして。でも、スチュアートのことは忘れてないわ。どうして何も教えてくれないの?死んだの?知る権利があるわ。約束したでしょう?

クロツ博士: スチュアート…スチュアートは少し変化していてね。君みたいに死後の蘇生を受けている。オブジェクト指定もされた。

SCP-2792: え…ああ…何があったの?

クロツ博士: 彼はプロメテウス研究所で蘇生されたが、何者かが君に成り代わっていたらしい。

SCP-2792: ひどい…私の為に、口添えとかは出来ない?

クロツ博士: 出来るし、出来ることならしよう、ただ…手段を見定めている段階だ。その何者かは彼の精神的に痛い所を突いたようで、彼が君に対してどう反応するかは分からない。

SCP-2792: ただ…ただ教えてやって。私が話したことを聞かせて。ファイルでも何でも渡してよ。頼むから。

クロツ博士: そうだね…検討しておこう。

<記録終了>

SCP-2792はスチュアートのことを尋ね、彼を心配しています。SCP-2999-Bこと、スチュアートはSCP-2999の件で精神的に不安定になっているようです。次は監視記録-2792-4です。

監視記録-2792-4

前書: 98/01/05、20:07、プロメテウス管理官アガサ・ホワイトはSCP-2792の部屋に入室。以下は、携帯ビデオカメラで録画され、アルヴァ博士のPCに保存されていたものである。

<記録開始>

[ホワイト博士が入室、ドア脇に鞄を置き、SCP-2792-1に接近する。]

ホワイト博士: 久しぶり、Sari、調子はどう?…聞こえてないんでしょうね、聞こえてたとしても、多分私のことは忘れているかしら。ちょっと顔だけ見ておこうかと思ってね、しばらくしたらここを出ることになるから。もう、プロメテウスは終わりね。もうすぐSuiwardに会えるのよ。嬉しいでしょ、ね?

四十年のほとんどを碌に会えなくてごめんなさい…ひどいことをしたわ、分かってる。私も忙しかったのよ。特に最近はね:諸々の準備とか、損失の最小化とかね。それに、正直に言えば、私…こんな形で会いたくなかったのよ。だから全部Alvaにまかせきりにして、今まで会いにも来なかったの。

とにかく、また今度連絡するわ。元気でね。

[机に書類を置くも、休止]

ホワイト博士: 待って、何この処方箋?何でこの成分を?待って…これ…?

[ホワイト博士は俯き、机の下から棍棒を取り出す。続いて、部屋を探索し、記録やアルヴァのPCの履歴を確認する。表情は一層険しくなる。]

ホワイト博士: Alva…あのクズが…。

<記録終了>


アガサ・ホワイトはアルヴァ博士の悪行に気付いたようです。アルヴァ博士がこれを思い付いた日付は文書 2792-2によると1960/04/8のため、実に38年間という長期間にわたり虐待され続けていたことになります……。

前書: 以下の映像は、98/01/09のプロメテウス研究所崩壊以前における最後の記録です。記録は、SCP-2792が回収された容器内から発見された(補遺-2792-1参照)。記録はアルヴァ博士が休暇から戻る箇所から始まり、入室後に扉は施錠される。

<記録開始>

アルヴァ博士: やあやあ、お姫様!ただいま、ただいま。まずは、お薬を済ませましょうか…。

[アルヴァ博士は薬品棚に向かい、複数の瓶・注射針を取り出してSCP-2792-1の下へ運ぶ。ホワイト博士が部屋を開錠し、2名の警備員と共に入室。]

アルヴァ博士: おっと、管理官様、こんにちは。何の御用で?

ホワイト博士: 特には。あなたとSariの接触は以後禁止、と伝えに来たまで。用済みよ。

アルヴァ博士: あら?スチュが死んだと考えて良いのですかね?

ホワイト博士: 直にね。でもそれは理由じゃないわ。そうであれば、敢えてここに来てはいない。

アルヴァ博士: するとどうしてここに?

ホワイト博士: あなた自身が一番分かっているでしょうにね。患者に対する繰り返しの虐待、他に何をしでかしたのやら。████でしたことを思い出させないでくれるわね、奴隷商人?

アルヴァ博士: ああ…その件について知っているのですね?

ホワイト博士: それはもう。SariとSuiwardの二人以外は皆知らなかったのでしょう?

アルヴァ博士: 数人は知っていたがね。過去の話をするのは好きじゃない。あの頃は誰もが罪人だ、知っているだろう、偽善者め。████で起こったことについて、一人座って自分を憐れむつもりは無いよ。捕まえた、売った、食べた人間、他に何をしたとしても、私は後悔しちゃいない。

与えた痛みはよく分かっている。あの地獄で私は、生存に必要なことをしたまでだ。あんたのようにね。

どうぞ、ご自由に。クビにするがいい。

ホワイト博士: もう少し別の処分を予定しているわ。

<記録終了>

後書: 記録の最後に部屋は暗転し、人物らの行動は判別出来ない。アルヴァ博士が息を飲むのが確認されるが、他の音は検出されない。照明が戻った後、ホワイト博士と警備員のみが映る。ホワイト博士はネクタイを整え、アルヴァ博士のビデオカメラの録画を停止させる。研究所崩壊後、アルヴァ博士は発見されていない。

正直なところ遅すぎの感が強いですが、SCP-2792の証言通りアガサ・ホワイトによりアルヴァ博士は消されたようです。アルヴァ博士は昔は奴隷商人だったのでしょうか?食べた人間(原文:person)と書かれていますが、人間は追放されているはずなのでこれは元住民のことを指しているようです。

続いては解雇要約 2792-5と懲戒命令-2746-237です。

解雇要約 2792-5

解雇要約 – 製作者 004

患者名: サラ、クロウリー(FKA; Sari)
ID: 1000985634736634674
任命日: 1960/03/27
解雇日: 1998/01/8
時刻: 09:55


容態: 管理側の想定以上に、患者の容態は悪化している。物理的には健康な状態であるものの、アルヴァ博士から著しい痛みと精神的虐待を受けている。アルヴァ博士は管理官アガサ・ホワイトによって処分されており、████で与えられた刑罰の再執行が行われている。

アルヴァ博士の虐待で、予想されたことですがサラは弱っていました。この後に出てくる懲戒命令-2746-237が“████で与えられた刑罰”になるようです。████はエデンです。この文章のフォーマットはSCP-2746に書かれていた造物主による刑罰と同じフォーマットです。

指示/推奨/計画: プロメテウス研究所による今後の管理は困難である為、患者はSCP財団に身柄を移される。彼女とスチュアート・ヘイワードの両名は、反乱以前の生涯についての詳細な情報を与えられる予定である。共に、彼らは自身らの将来について決定し、反乱に対する立場を定めるだろう。

何が起きたかは不明ですが、プロメテウス・ラボはその活動を停止するようで、サラはSCP財団に移されることになったようです。サラとスチュアートには、SCP-2746で起きたことが伝えられる予定だそうです。

補遺2792-1にあるとおり、その後サラは気密性容器に入れられ、モハーヴェ砂漠に放置されたようです。サラは容器を破壊して脱出し大規模な地吹雪を発生させていた所を財団に発見され、財団に回収された――というのが発見の経緯であるようです。ずいぶんと雑な解放の仕方ですね……。

そして、財団はプロメテウス・ラボの施設を確保し、プロメテウス・ラボから今まで見てきた情報を得たのでしょう。次は懲戒命令-2746-237です。

懲戒命令-2746-237

遺憾の余地無く

我が民に対する非道の行いにより、Alvaへの刑罰を執行する。

Alvaは████の預言者として仕えた。彼の価値は微々たる物であった。その働きは佳き日において有意義であったと述べることが望ましくあるが、かくは非ず。今の形に至る以前、Alvaは自身より弱き者達を利用する者であった。

罰は当然の報いであり、惜しむ者は少ないだろう。

今の形に至る以前、彼は我が兄弟姉妹の捕獲と売買を主導し、食糧または奴隷として用いた。Alvaはまた、兄弟の一人をかつての”怒り”の者へ売り渡したことが露見した。



以下の令は、磔と下層への追放に代わるAlvaへの刑罰として執行された。

  1. Alvaの舌は除かれ、虚言を広めること、他を欺く目的で甘言を吐くことは叶わない。
  2. 彼は、他を殺した方法に従って解体される:切られ、刻まれ、四肢は除かれる。
  3. 炎にくべられず、食べられず、切り刻まれた破片は棘と鎖によって分けられる。これは、彼が他者に授けた連帯を彼自身に知らせるものである。

反乱時におけるエデンでのアルヴァ(Alva)は、住民達を捕らえ食糧または奴隷として売買を主導し、”怒り”(反乱勢力)に売り渡すという悪事を行っていたために処罰されたと書かれています。サラの証言では、サラにより罰を受けたとあるので、エデンの守護者であったSariにより罰が与えられたのだと考えられます。

磔や追放にはならなかったものの、舌を除かれ、体はバラバラにされ破片は棘と鎖で分けられたとあります。この刑罰がアガサ・ホワイトによりアルヴァ博士に再執行されたようです。

以上がSCP-2792の内容になります。続いてはTale、懐かしき氷です。

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Tale、懐かしき氷

今までスチュアートとサラの物語を時系列で見てきましたが、この作品でSCP記事は終わりになります。その後の二人はTale、懐かしき氷で描かれています。内容は見ていただくとして、少しだけその内容を考えてみます。

まず、馴染みがなく良くわかりにくい聖句箱についてですが、魂を閉じ込める箱以外にも、身に付けるお守りという意味があるそうなので、母親に作り方を教わったというセリフは、お守りのことを言っているように思われます(ちなみにこのセリフは未訳Tale、No Safe Havenと関連しています)。

次にアギー(Aggie)についてですが、サラはアギー(Aggie)により、周囲の温度を下げる異常性を持たされたと述べています。今まで見てきたようにサラはアガサ・ホワイト率いるプロメテウス・ラボにより蘇生されました。アガサ(Agatha)の愛称がアギー(Aggie)であることや、その会話の内容から推測すると、アガサ・ホワイトはエデンではサラやスチュアートの友人であったと考えられます。

最後にアガサの目的について考えてみます。

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アガサの目的

SCP-2999に関する過去記事でも触れましたが、プロメテウス・ラボはスチュアートをSCP-2999-Bに移すために何十年も前から計画していたと見られます。

今回の作品ではプロメテウス・ラボはサラをSCP-2792として蘇生させていますが、サラの蘇生もその計画に含まれていたと考えられます。サラに関しては初期評価2792-1に以下のように書かれています。

患者の滞在は、彼女のパートナーであるスチュアート・ヘイワード(#3、Suiward)の現人間形態が死亡するまで継続されます。

これは、スチュアートの精神を人工の肉体であるSCP-2999-Bに移す計画を見越して決定したことのように思われます。プロメテウス・ラボはスチュアートとサラを人間から別の肉体に移す計画を立てていたと考えてよさそうです。

もっとも本来は”現人間形態が死亡するまで継続”すると書かれていたことから、プロメテウス・ラボの計画はスチュアートか死ぬのを待っていたと思われます。したがって、前回の記事でも考察しましたが、SCP-2999-B作成はSCP-2999-Aが独断で行ったことのようです。

しかし計画を立てた理由は今回の作品でも明らかにはなりませんでした。アガサの”もうすぐSuiwardに会えるのよ。嬉しいでしょ、ね?”という言動や、アルヴァを処罰した行動から推測すると、悪意があるという訳ではないように感じられます。友達であったことから善意に近い理由なのかもしれません。しかし、本人達の意思を確認せずに行っている以上、その善意は独善的であるように見受けられます。

凄惨な戦いを経てエデンに残り自ら命を絶ったSuiwardとSariを哀れみ、本人達の意思を無視して良かれと思ってやっていることのように思われます。しかしそれは二人が望んだことではありません。SCP-2792で見つかった文章は以下の言葉で締めくくられていました。

今に至り、私たちはただ忘れ去られることだけを望みます。私たちは幸福な生涯を送る機会を欲します。あなたがこれを読む頃には、それを得ていますように。願わくば、全てをやり直せた時に、この「神性」をもっと単純な、人間の生命と交換し、████が再び私たちを見つけることがありませんように。それだけが、我々の望む全てです。

最後の願いすら叶いませんでしたが、運命に翻弄されながらも苦楽を共にし、財団職員として任務を果たしてきた二人は最後に再会することができました。二人の心の傷が癒やされることを願わずにはいられません……。

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おわりに

時間がかかってしまいましたが、これで連載記事、Pitch Havenシリーズ紹介と考察は終了です。未訳Tale、No Safe Havenについては記事ができたら、記事中に追記する予定です。

クローヴィス、アガサの行方や収容外にいる可能性のあるSCP-2999-Aなど、いくつか疑問点が残りましたが、それらは新たなSCPやTaleで今後明らかになるかも知れません。

サラやスチュアートは直接出てきませんが、Pitch Havenシリーズはまだほかにもあるので読んでみてはいかがでしょうか?(画像は閲覧注意ですが……。)

Pitch Havenシリーズは悲しい話でしたがわずかな希望が残されていました。最後までお読みいただきありがとうございました!

 

SCP-2746 – ████ is dead. 
原著者 Fantem
http://www.scp-wiki.net/scp-2746
http://ja.scp-wiki.net/scp-2746

ㄗitch 卄aven
原著者 Fantem
http://www.scp-wiki.net/pitch-haven-hub
http://ja.scp-wiki.net/pitch-haven-hub

SCP-2792、SCP-2746、ㄗitch 卄aven -墨染めの聖域-に基づく本記事の内容はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承3.0ライセンスに従います。

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